アラウンドビュー・ドローン

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先日のドローンを用いた水稲モニタリングのセミナーでは、多くの方々に受講していただき、ありがとうございました。

2019年度から農林水産省の「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」および「スマート農業加速化実証プロジェクト」が動き出します。国が推進するスマート農業の普及が本格的に進むこともあってか、セミナーは盛況でした。また、セミナー以外でも今年は「ドローンを用いた生育モニタリング」についての相談もいくつかあり、今までにないほど注目されているなぁと実感しました。

セミナーは4時間あるので、前半はドローンの仕組みやモニタリングを運用する際のソフトウェアなどを話し、後半では主に5年間のモニタリング成果などを講義しました。セミナーには研究者や企業など幅広い方々が参加していることもあったので、私が作って欲しいドローンを紹介しました。数年前からこんなドローンがあったらいいなぁと思い、セミナーなどで紹介しているのですが、まだ実現されておりません。

私が作って欲しいのは「アラウンドビュー・ドローン」です。既に、日産自動車が2007年に実用化に成功した技術です。車以外にも遠隔操作無人探査機(ROV)の海中試験にも成功しています(JAMSTEC

アラウンドビューモニター(画像:日産自動車)

特許などの権利関係で製作するのは難しいかもしれませんが・・・ドローンで利活用できる分野は多いのではないかと思っています。例えば、GNSS測位できないような環境下(自律飛行ができない環境)でも、安心して操縦できると思うので、橋脚・トンネルなどのインフラ系の検査で使えるかもしれません。

農業分野でも「アラウンドビュー・ドローン」は活かせると思います。農業用ドローンで最も利用例が多い農薬・肥料散布は、これまで自動操縦による目視外飛行が禁止されていました。これが規制緩和によって、自動操縦による飛行が可能となります。また、従来は操縦者のほかに補助者を配置する義務がありましたが、これも規制緩和によって補助者の配置がいらなくなります。ようやく、ドローンのメリットが活かせるようになります。

画像:農林水産省の資料

自律飛行のコースは事前にPCなどで設定することになると思います。その際、散布範囲の設定に使う地図によって、PC上で示す位置と現地の位置がずれることがあります。国の測量行政機関である国土地理院の地理院地図を真値とすると、Google MapsやBing Mapsなどでは数mの位置ずれが生じることもあります。そのため、「アラウンドビューシステム」があれば、位置ずれによる障害物衝突の危険性を画面を確認しながら回避できるのではないかと思います。

【イメージ図】アラウンドビューシステム
(プロポの上部は埋め込み画像.クリックすると拡大表示されます)

このようなドローンが登場するのを期待しています。ファミコン世代の私にとって「アラウンドビューシステム」は、 上空からの視点で操縦するリアル「スターソルジャー」みたいなイメージですね。


大分講演

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先日、大分県で講演する機会がありました。

大分県はドローン産業を推進している自治体です。講演を行った大分県産業科学技術センターには、ドローンを自由に飛ばせるテストフィールド(全方位にネットを設置)や磁気シールドルーム、電波暗室などが整備されており、ドローンの開発拠点でもあります。

講演はドローンを扱っている民間会社や県の職員(ドローン担当、水稲・麦・茶の担当)の方々など合わせて約20人の前で行いました。

講演後は質疑応答がありましたが、この時が私にとって大変有意義な時間です。
どのようにドローンを導入すればいいのか、また現在困っていることなど現場の声を聞くことは、実は多くの地域でも同じような悩みを抱えているのではないかと思います。また、自分には思いつかないアイデアをいただける機会もあるので楽しいです。

大分銘菓:ざびえる

大分県で有名な「ざびえる」は、 旅行者のお土産のみならず、地元住民からも慕われているお菓子で、日本の歴史で有名なフランシスコ・ザビエルにちなんで付けられたそうです。

確かに美味しいお菓子です!!

日経 xTECH(クロステック)

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この時期はブログにする記事内容があまり無いので、更新頻度が落ちてしまいます...。

先日、日経 xTECH(2月12日付)に水稲モニタリングの記事が紹介されました。

※全文読むためには、会員登録が必要となります。

内容は、電子情報通信学会誌(Vol.101 No.12 pp.1181-1185)に掲載された「精密農業実現に向けたドローンの活用」の抜粋です。

 

日射量

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千葉大の濱氏は、ドローンを用いたモニタリングデータと日射量を組み合わせて収量を推定する研究を論文として報告しています。論文はこちらから閲覧できます。

2018年の収量は、日射量を組み合わせた濱モデルが精度良く推定することができました。詳しくはこちら

その研究の一環として、2017年から自宅の屋上に全天日射計を設置し、観測を始めました。具体的には、全天日射計からは電圧の情報が出力され、その情報をデータロガーで記録する仕組みです。データ回収後に、電圧を全天日射量(MJ/㎡)に変換します。データロガーは乾電池で動作するので、コンセントがない場所でも設置できるので便利です。

影の影響を受けない屋上の南側に設置

 

日平均の日射量(2017~2018年)

オレンジ色:日単位に集計した埼玉県坂戸市の全天日射量(2017~2018年)
紺色:東京の全天日射量(平年値)

 

2017年の6月は空梅雨だったので、日射量が高い値を示しています。一方、8月は冷夏の影響で日射量が極端に少ないことがわかります。
次に、2018年は早すぎる梅雨明けで7~8月は猛暑が続きました。梅雨の期間は日射量が少なくなるのですが、2018年は日射量が多い結果を示しています。

時間解像度は2017年の観測は1時間単位で行ってきましたが、電池・記憶媒体の余裕もあることから2018年からは10分単位で実施しています。

 

謹賀新年

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本年もよろしくお願いいたします。

今年も3月にドローンを用いた水稲モニタリングのセミナーを実施することになりました。

今までと同様に質疑+休憩を含めて4時間のセミナーとなります。2014年から5年間の成果、モニタリングの運用方法やドローン・カメラの自作・改造など幅広い内容で講義を行う予定です。

【日時】:2019年3月12日(火) 12:30-16:30
【場所】:東京・大田区産業プラザ(PiO)6階D会議室
【題目】:ドローンの農業活用とセンシング・モニタリング技術

詳細は以下から(情報機構HP)
https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC190371.php

※講師紹介割引があるので、ご興味がある方はこちらから私宛てにご連絡ください(2月16日追記)。

 

また、ネット販売分に用意した「2018年産どろーん米」は販売数量に達しましたので、販売を終了させていただきます。

 

ゴジラ

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帰宅する途中、いつもの風景とは異なり、違和感を覚えました。暗い状況のなかで、巨大な物体が視野に入ってきて、一瞬何事かと思いましたが・・・よ~く見ると・・・自宅近くの鉄塔がメンテナンスのために覆われていただけでした。

夜に撮影した画像と昼に撮影した画像

 

この鉄塔は、埼玉県鶴ヶ島市の新所沢変電所~茨城県境町の新古河変電所を結ぶ新古河線と呼ばれる送電線の一部になります。鉄塔マニアのサイトを調べていくと、名前は「新古河線 19号」という鉄塔であることがわかりました。高さは80mです。

高さ80mの鉄塔の大きさの比較をゴジラで行ってみました。コジラもシリーズを重ねるたびに、身長が高くなっているそうです。

二代目ゴジラ(80m)と新古河線 19号がほぼ同じ大きさ

 

よ~く見ると、カバーに覆われた鉄塔もゴジラのように見えてきます。こんな巨大生物が襲ってきたら、一溜まりもないですね。ちなみに、シン・ゴジラでは身長が118.5mとさらに巨大化しています。

 

平均収量の解釈

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農林水産省は水稲の平均収量を毎年公表しています。公表される情報には、市町村別の10a当たりの収量も含まれるので、自分のところの収量と比較することができます。ただし、集計されている収量は「水稲」でまとめられているため、品種別の収量はわかりません。データはe-Stat(政府統計の総合窓口)から閲覧できます。

埼玉県の水稲栽培は「コシヒカリ」がメインですが、近年は地域ブランド米である「彩のきずな」の比率が高まっています。2017年には県東産の「彩のきずな」が特Aランクを獲得したので、今後はコシヒカリを抜いていくことが予想されます。

その「彩のきずな」は多収な品種で、一般的にコシヒカリの20%増と言われています。前述のように農林水産省の情報では様々な品種の合計となっている数値なので、品種別の収量内訳はわかりません。関係機関に問い合わせればわかるかもしれませんが、今回は公表されている情報を使って品種別の内訳を推定し、コシヒカリの平均収量を求めてみました。

地域で栽培されている品種の割合を示す情報は、JAいるま野が公表しているカントリーエレベータ(CE)直接買入れ実績を使いました。情報元:JAいるま野広報誌

 

JAいるま野は埼玉県南西部の10市3町が管轄になります。管内の農業産出額は、ほうれんそうや大根などの野菜類が56.1%とメインで、米は11.4%となっています。下図は農林水産省が公表した2017年の市町村別10a当たりの収量を可視化したものになります。この図から埼玉県の10a当たりの収量は県東部で高く、県西部で低い、東高西低の分布傾向になります。また、赤枠で示すJAいるま野の管内の西部は秩父山系に位置し、中部・南部は洪積台地となっているため、水稲栽培は東部が中心となります。試験サイトがある坂戸市は、川越市に次いで水稲収量が多い地域になります(坂戸市は埼玉県全体で見ると16位)。

埼玉県の10a当たりの収量(2017年)

 

JAいるま野が公表しているCEデータは管区全体(10市3町)となっているため、農林水産省の市町村別収量情報を再集計しました。

品種別直接買入れ実績

 

コシヒカリがCEの直接買入れの半数を占めていますが、年々減少しています。一方、彩のきずなの栽培は増加傾向です。彩のきずなは、JAいるま野の独自ブランド戦略により、生産拡大と集荷拡大となる数量目標および品質目標を策定し、生産者と一体となった産地づくりを進めていることが影響しています。来年か再来年にはシェアが逆転すると思われます。

 

次に、品種による収量の違いを求めます。コシヒカリの収量を1としたとき、他の品種(彩のきずな・彩のかがやき・彩のみのりなど)の収量の比率を文献などから求めました。

その結果、2014年の管区の水稲の平均収量が489kgとなっていますが、内訳はコシヒカリ468kg、彩のきずな548kg、彩のかがやき492kg となりました。この年の試験サイトの10a当たりの収量は388kgなので、管内のコシヒカリ収量より少ない結果となります。2015年は、管内のコシヒカリ収量が451kg、試験サイトは431kgだったので、2014年よりは平均的な収量に近づきました。2016年からは推定値を上回る結果となっています。

 

JAいるま野における10a当たりの収量と品種別推定収量

管内収量コシヒカリ彩のきずな彩のかがやき彩のみのりキヌヒカリ
2014489468548492520465
2015480451528474501
2016492461540484512
2017488457535480
単位:kg

 

試験サイトのコシヒカリ収量と管区内のコシヒカリの推定収量の比較

 

ちなみに、JAいるま野の栽培目標は以下の通りです。
10aあたりの目標収量
・ コシヒカリ  ・・・ 480kg(8俵)
・ 彩のきずな ・・・ 600kg(10俵)
・ 彩のかがやき ・・・ 540kg(9俵)

 

水稲としてまとめられた平均収量の数値も、別資料を組み合わせることで品種別の収量を推定することできました。求めた数値は、自分の栽培技術がどのあたりに位置しているのかを把握することに使えそうです。

 

クローズアップ現代+

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10月31日に、NHK のクローズアップ現代+で「AIがうまい米を作った!~“農業革命”最前線~」が放送されました。放送内容は、NHKのHPから閲覧できます。(クローズアップ現代+:2018年10月31日

全体的にスマート農業など先端技術を用いた農業に詳しくない人でもわかりやすく、今後の日本の農業の可能性を解説した番組だったと思います。

前半は人工衛星やドローンによるモニタリングでイネの生育を管理し、肥料のピンポイント散布や収穫適期の解析で美味しい米を栽培するという内容で、後半はトラクターや田植え機などの無人ロボット化の紹介が中心でした。

 

ただ、私としては収穫適期を紹介するVTRに疑問が生じました。

放送では、下図のように衛星画像の解析で圃場のタンパク質含有率のマップが紹介され、以下のような説明がありました。

・9月下旬の田んぼは全体的に赤っぽく、タンパク質が多くなっていました。この段階で刈り取ると粘りのない米になるため、時間を置いて待つことにしました。

その時の画面には「タンパク質低下待つ」の文言が表示されています。

放送された画面のキャプチャ

 

収穫間近の状態で、時間を置くことでタンパク質が低下するという部分が疑問です。出穂後、子実に蓄積された同化産物が減少していくのは考えづらいことです。

この文言がタンパク質ではなく、NDVIの低下を待つといった説明であれば納得しました。NDVIは出穂期から成熟期に進むにつれ、値は小さくなっていきます。モニタリングを実施している試験サイトでは、出穂期と登熟期のNDVIから収穫適期を求めて、収穫を実施しています。

また、籾水分が高いため、時間を置くことで水分の低下を待つという流れでも問題なかったと思います。ただし、現在の衛星画像から籾水分を求めるのは難しいと思いますが・・・現場では、収穫適期を出穂後の積算温度や籾の黄化率、籾水分で判断しているので、農家さんには理解されやすい指標ではないかと思います。

 

HPで紹介されている画面をキャプチャ

 

 

どろーん米(2018)販売開始

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10月17日から平成30年産「どろーん米」の販売を開始します。価格は昨年と同じです。味は去年より美味しくなっております。

 

食味値:84点獲得

平成30年コシヒカリ新米100% 「どろーん米」 5kg 精米

平成30年コシヒカリ新米100% 「どろーん米」 10kg(5kg×2袋) 精米

 

価格は、5kg 2,400円(税込)、10kg 4,500円(税込)となっております。※送料別

詳細は「どろーん米購入」をご覧ください。

 

どろーん米

 

【参考記事】

NIKKEI STYLE(2014年10月22日):コシヒカリはなぜおいしい 科学で味わう「うまい米」

 

平成最後の収穫

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2018年の栽培期における天候は、一言で言うと「猛暑が続いた年」でした。8月末から9月上旬になると、台風20号(Cimaron)の接近・ゲリラ豪雨によって、この地域は瞬間的に強風・大雨が襲いました。その影響で、圃場内の一部のイネが倒伏程度3(出穂期2週間前の倒伏リスク診断でリスクがあった箇所)になりましたが、この程度であればコンバインによる作業には全く問題はありません。

 

下図は、2014~2018年の移植日から収穫日までの積算日照時間になります。図からわかるように今年の天候は例年と比べて日照時間が大きく外れています。本当に暑かったです。

(アメダス:鳩山地点を用いて作成)

2014~2018年の移植日から収穫日まで積算日照時間

 

収穫時における2018年の積算日照時間は例年の約1.3倍となりました。ちなみに、2017年も出穂期までは2018年と同様な空梅雨・猛暑でしたが、8月に入ると途端に冷夏となり日照不足となっています。

 

さて、4年間の水稲モニタリングで得たNDVIによる収量予測の結果では、今年の収量予測は2017年(471kg/10a)と比べると減収になりました。収量予測は出穂期のNDVIと前年までに得た地上サンプルとの相関式で求めます。4年間分のパラメータがあるのですが、今年はどのパラメータを用いても減収予測でした。その理由は、2018年の出穂期のNDVIが前年比85%と低かったためです。

 

NDVIのみ
収量予測:462kg/10a

 

共同研究者でもある濱ほか(2018)の論文では、NDVIと日射量(コシヒカリの場合は出穂期から20日間)を用いて収量を予測するモデルを示しています。そのモデルによる収量予測は増収となります。

 

濱モデル
収量予測:488kg/10a

 

今年の収穫結果は・・・ 498kg/10a で増収となりました。農家としては嬉しい結果ですが、研究者の立場からだと外れてしまった・・・という感じです。また、今年の収量は世代交代してから初の反収あたり8俵を超えることができました。この地域のコシヒカリの目標は8俵(JAいるま野広報誌2018年3月号 pp.5)なので、満足な結果です。

ドローン導入からのコシヒカリ収量(10a当たりの精玄米重量)およびタンパク質含有率の結果

 

ドローン導入から5年目で30%の増収になりました。籾摺り → 袋詰め → 冷蔵管理までの一連の作業は終わりましたので、まもなく2018年度産「どろーん米」をネットショッピングで販売開始いたします。