倒伏

倒伏警報発令

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今年は8月5日に出穂期を迎えました。既に収量予測を紹介しましたので、次は倒伏しやすいコシヒカリの倒伏リスク診断結果(2020年)を記事にします。おおよそ出穂14日前のモニタリングデータを利用して倒伏リスク診断を行うのですが、今回は空撮スケージュールが合わず、18日前のデータから約4.8万株についてリスク診断を行いました。倒伏リスク診断の計算方法はこちらに掲載しています。

倒伏リスク診断マップ(2020年)

 

倒伏リスク診断の結果、橙~赤色は倒伏する確率が高い株で、寒色系は倒伏する確率が低い株になります。圃場の南西部と南中部の一部で倒伏リスクが高くなっています。南西部は、2019年の台風19号によって倉庫に保管してあった肥料などが浸水してまい、それらを廃棄した場所になります。この影響が生育にも表れていると考えられます。また、南中部は今年から始めたある土づくりの方法によって草丈が高くなったかもしれません。※ある土づくりの方法については後日紹介予定です。

 

高い確率で倒伏すると予想できたので、何らかの対応をしなければいけません。特に、稲穂が地表面の水に着いてしまう状態だけは避けなければなりません。

登熟後期に入ってから、だんだんとイネが傾き始めてきました。この時期に豪雨や強風に襲われると一気に倒れてしまいます。幸い、梅雨明けから天気のいい日が続いていますが(気温は最寄りのアメダス地点:鳩山では40℃越えの日も・・・)、いつ豪雨や強風が来てもいいように対策を施しました。

イネ4株を麻糸でまとめて倒伏対策

 

狭い範囲のイネに対して施しましたが、意外と作業時間はかかりました。草丈の生育ムラがなければやらなくてもいい作業なのですが・・・均一に栽培する難しさを今年も実感しました。

上空から撮影した倒伏対策をしたイネ

 

稲刈りまであと少し・・・倒伏しないことを祈る日々です。

 

倒伏の定量化

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以前にも紹介したように、コシヒカリは稲穂が垂れやすく、倒伏しやすい品種になります。
今年の「どろーん米」は、8月19日の降雨(約67mm)をきっかけに、出穂2週間前に診断した高リスク箇所から徐々に倒伏が進んでいきました。

今回はモニタリングデータから倒伏の定量化について、少しまとめてみました。

まず、イネが倒伏してしまうと、農機具による収穫が難しくなります。
我が家ではコンバインを所有しているので今まで気にしていませんでしたが、農作業を外部に委託した場合、倒伏した圃場では標準料金とは別に10%~30%程度加算されてしまいます(料金は各自治体によって異なります)。たとえば、島根県邑南町が公開している農作業標準賃金(平成29年度)では、倒伏面積割合で割増料金が以下のように決まっています。

倒伏面積割合0%~30%30%~50%50%~80%80%以上
割増規定料金20%増30%増50%増

※標準価格:コンバインによる刈取り 10aあたり20,800円

現場では倒伏面積割合をいちいち算出するのは時間がかかるので、担当者の目分量で判断していることがほとんどだと思います。

 

そこで、刈取り前の空撮データから倒伏面積割合を算出できるか試してみました。

【使用するデータ】

・ドローンによる空撮(可視光:Richo GR)データ(2017年9月8日撮影:刈取り前日)

狭い範囲なら目視で倒伏範囲を特定しても時間はかかりませんが、広範囲に及ぶと目視での範囲特定は手間と時間がかかってしまいます。
リモートセンシングの分野では、古くから画像データを利用した画像分類は得意とするところです。たとえば、JAXAがALOS/ALOS-2の人工衛星から画像分類して作成した高解像度(解像度約10m)の土地被覆図などがあります。

画像分類には「教師なし分類」・「教師付き分類」がありますが、今回はトレーニングデータを必要とせず、画像の特徴量をもとに自動分類を行う「教師なし分類」を選択しました。

ドローンによる空撮画像から作成したオルソ画像を用いて、教師なし分類を行った結果が下図になります。

画像分類結果(2017年9月8日撮影データを使用)

 

誤分類も多々ありますが、大きく倒伏した範囲の抽出ができているので、倒伏の抽出には教師なし分類も使えることがわかりました。なお、試験サイトの倒伏面積は 517.1㎡ で圃場面積の 15.9% となりました。

 

画像分類による倒伏範囲の特定は倒伏しているかどうかを抽出する方法で、イネがどの程度の傾きで倒伏しているかはわかりません。

イネの倒伏程度の判断基準は、一般的に倒伏したイネの傾きの大きさを「0(無)」~「5(甚)」の6段階で表すことが多いそうです。

倒伏程度の判断基準

 

今度は、モニタリング解析で作成するDSMデータを用いて倒伏程度を求めてみます。
使用するデータは、倒伏する直前(出穂期から14日後)と刈取り前日(出穂期から40日後)の2時期のDSMデータです。

【使用するデータ】

・ドローンによる空撮データから作成したDSM
倒伏直前のDSM :2017年8月13日撮影
刈取り前日のDSM:2017年9月8日撮影

 

倒伏直前のDSMと刈取り前日のDSMの三角関数から角度を求め、倒伏程度に変換した分布図が下図になります。

倒伏前後のDSMから計算した倒伏程度(ラスタデータ)

 

地点1 倒伏のない状態(ベテラン農家さん)

 

地点2 倒伏程度の大きい地点(試験サイト)

 

試験サイトでは倒伏程度の大きい箇所(地点2)が多く見られますが、隣のベテラン農家さんの圃場ではほとんど倒伏(地点1)がありません。
移植日は同じなので、同じ気象条件であるにもかかわらず、結果的に倒伏の差が生じます。これがベテランと新米の違いなのかもしれません...。

 

2016年から水稲株単位でも解析を行っています。倒伏程度も株単位(2017年:圃場全体で約4.7万株)で計算すると次のようになりました。

水稲株単位の倒伏程度(ポイントデータ)

 

水稲株単位で求めた倒伏程度別占有率

 

コンバインによる収穫作業が難しくなるのを「倒伏程度4」と仮定した場合、倒伏割合(倒伏程度4+倒伏程度5)は31.4%(約1.4万株)となりました。
最初で紹介した画像分類による倒伏範囲の抽出より高い結果となります。精度検証として、画像分類によって抽出した倒伏範囲と水稲株単位の倒伏程度で重ね合わせ分析を行った結果、倒伏範囲に含まれる水稲株の約82%が倒伏程度4.5~5となりました。このことから、画像分類による倒伏範囲の抽出は、上空からでも判読しやすい倒伏程度が大きい「4.5~5」を捉えているのではないかと考えられます。

 

来年こそ、倒伏しないような水稲栽培ができるように頑張ります!!

 

空撮時の注意(登熟期)

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2014年からモニタリングを実施して、様々な失敗や試行錯誤を経て、現在の運用体制にいたっています。今回はその中でもついやってしまいがちな失敗例を紹介します。

【失敗例】

・近接撮影によるイネの倒伏(2015年8月31日撮影)

出穂日前はイネの葉を空撮することがメインになりますが、出穂期以降(特に登熟期後半)はイネの穂には実がつき、空撮の被写体としても絵になります。そうなると、ついつい低空撮からイネの穂を撮影してみたくなってしまいます(その誘惑が失敗の原因です)。冷静に考えれば理解できるはずですが、その場で操縦しているときは撮影のことばかりが・・・。

登熟期後半のコシヒカリは、ちょっとした外部からの力(雨や風など)で倒伏しやすい状態です。その中で、対地高度約5m以下の低空撮を行えば、ドローンからのダウンウォッシュ(下降気流)でイネが倒伏してしまいます。

下図は、私が誘惑に負けて、イネを倒伏させてしまった部分になります。一度、倒伏させてしまうと、元の状態には戻りません。この経験から登熟期の低空撮には慎重な操縦を心掛けないといけないと学びました。空撮を行っている方も注意してください。

ダウンウォッシュによる倒伏(2015年8月31日撮影)

 

倒伏させてしまった時の近接画像(対地高度約3m)

 

 

倒伏リスク診断(2017年)

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今年は7月30日に出穂期を迎えましたので、出穂14日前の7月16日のモニタリングデータを利用して、倒伏しやすいコシヒカリの倒伏リスク診断を行ってみました。

倒伏リスク診断の計算方法はこちらに掲載しています。

 

倒伏リスク診断マップ(2017年)

「7月16日(出穂14日前)のDSM-5月18日(代掻き直後)のDSM」から計算した倒伏リスク診断マップです。橙~赤色は倒伏リスクの高い株で、青色はリスクが低い株になります。今年は圃場の西側(特に南西側)で倒伏リスクが高い結果となっています。昨年は圃場の北側で倒伏リスクが高い結果となり、実際に倒伏してしまいました。草丈のむらが出ないように、圃場の均平化など努力しているのですが、均一に栽培する難しさを実感します。

 

2017年7月16日空撮のオルソ画像

倒伏進行中・・・

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前回の記事から「どろーん米(コシヒカリ)」の倒伏が進んでしまいました。

倒伏リスク診断でリスクありの箇所が中心です。診断が当たったのはよかったのですが...ちょっと複雑な心境です。

週末(10・11日)の稲刈りまであと僅かの時間ですが、台風13号(MALOU)の接近が心配です。

 

9月3日に実施したモニタリング結果を紹介します。

20160903

2016年9月3日撮影 オルソ画像(紫線は倒伏エリア(軽度~重度を含む))

倒伏(160903)

倒伏リスク診断マップに倒伏エリア(160903時点)の重ね合わせ

倒伏リスクが高い赤色を中心に、重度の倒伏傾向が見られます。

ハート型に倒伏

上空50mからの撮影画像:ハート型倒伏

(クリックすると大きい画像が開きます)

倒伏リスク診断

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コシヒカリは稲穂が垂れやすく、倒伏しやすい品種になります。そもそも、倒伏は稲穂が地表面に着くほど倒れる状態を指します。倒伏して、稲穂が地表面の水に着いてしまうと,収量の低下や機械による収穫困難、食味の低下などの問題が生じ,生産者にとっていいことはありません。

そのため、倒伏のリスクがある箇所については,事前に倒伏軽減剤の散布や倒伏前に刈取りを行うなどの対応が必要となってきます。

コシヒカリは、草丈が幼穂形成期で70cmを越える場合,または出穂13~14日前で84cm以上であると,倒伏のリスクが高まるとされています(水稲栽培管理情報:JA金沢市版)。ただし、この数値については、埼玉県でも用いることができるかは検討の余地はあります。

下の倒伏リスク診断マップは、「出穂14日前のDSM-代掻き直後のDSM」から計算した図です。今年は、水稲株位置を求めたので株ごとに倒伏リスク診断を行いました(全部で約5.1万株)。赤色は倒伏リスクの高い株で、青色はリスクが低い株になります。

 

2016倒伏リスク診断

倒伏リスク診断マップ

20160829

冠水後に撮影したオルソ画像

(稲の色が若干変化しているところが倒伏している箇所)

スライドバーを動すと、倒伏リスクが高い場所と実際に倒伏してしまった場所の対応が確認できます。

今年の稲刈りは9月10~11日を予定しております。まだ、1週間ちょっとの時間があります。それまでの間に、さらに倒伏が進まないことを祈るばかりです。

氾濫後(台風9号)の様子

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台風9号による内水氾濫によって、試験サイトは完全に冠水してしまいました。

農林水産省の資料によると、冠水時間が2日以上になると被害が大きくなります。その点、試験サイトは翌日には水が引いたので、安心しました。

ただし、強風・豪雨・冠水によって、一部の箇所では倒伏してしまいました。それ以外の目立った被害はキラキラ(防鳥)テープの切断、圃場内のゴミなどでした。

倒伏した箇所は草丈が高いところになります。この箇所は出穂2週間前のモニタリングで、草丈が一定の値より高く、倒伏リスクの高い場所でした(算出方法は後日説明します)。

 

 

試験サイト倒伏

試験サイトにおける倒伏の様子

倒伏し、地面(水)に接してしまった稲は品質が低下するため、収穫の際には別に分けて刈り取ります。

試験サイトと別の圃場でも倒伏が生じました。

西圃場倒伏

西圃場(試験サイトとは別)における倒伏の様子

氾濫というイベントが発生しても隣のベテラン生産者の圃場では、倒伏が生じていません。まだまだ自分の勉強不足および未熟さを実感してしまいます。

台風9号による被害

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千葉県に上陸した台風9号は、埼玉県にも大量の雨がもたらされました。

昨年に引き続き、今年も圃場近くの河川が氾濫し、試験サイトの水稲は完全に冠水してしまいました。

2年連続の氾濫は、さすがにショックです。近くにある水門は、流域内の洪水被害を軽減するために着工されたのですが、機能を果たしておりません。国土交通省または県の担当部署のみなさん、何とか対処してください(切実な願いです)。

 

今年は、収穫までに約3週間の時間があります。昨年は収穫直前だったので、品質に問題はありませんでしたが、今年は影響が大きくなると予想されます。また、強い風雨によって、一部水稲が倒伏してしまいました。残念です。

 

2016内水氾濫1

内水氾濫による試験サイト周辺の冠水状況(2016年8月22日撮影)

2016内水氾濫2

1枚目撮影後から約10分後の様子(自宅屋上から撮影:2016年8月22日撮影)

2016内水氾濫3

最高水位の状態(2016年8月22日撮影)

完全に冠水してしまいました。昨年より今年の方が水位は高くなりました。水が引いた後がどのようになっているかが心配です。

今年の稲刈りも昨年同様に土埃が大量に発生しそうです。

 

台風7号による被害なし

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先日、関東地方に接近した台風7号(CHANTHU)による被害はありませんでした。

昨年は、稲刈り直前に関東・東北地方を襲った豪雨災害(平成27年9月関東・東北豪雨)によって、圃場全体が冠水してしまいました。

当時、雨は小康状態になって安心したのですが・・・自宅近くにある水門ゲートの開閉によって、わずかな時間(数十分)で氾濫状態に陥ってしまいました。

新米兼業農家ながら、精魂こめて作った農作物が被害を受けてしまうと...さすがに落ち込みました...

 

2015年内水氾濫

昨年の氾濫状況(2015年9月9日撮影)

翌日には水は引きましたが、ペットボトルなどといったゴミが圃場内に残ってしまいました。また、水の流れが速かったところは倒伏してしまいました。

水もすぐに引いたので、米の品質には大きな影響はありませんでした(ただ、稲穂に付いた大量の泥が稲刈りの時には土埃となってしまい、大変でした。)

 

2015年内水氾濫翌日

他の所で刈った後の藁が大量に流れ込んだ結果、倒伏してしまった(2015年9月10日撮影)