均平化

結果:均平精度(2020年)

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今年の代かきはトラクターナビを搭載することで、より的確に高い土を低い方へ土寄せを実施することができました。2019年に失敗してしまった圃場の乾きすぎ状態にならないように、天気予報と相談しながら水の状態を管理しました。その結果、ほぼ問題ない状態で田植えを迎えることができました。

 

田植えの直前(30分前)にドローンによる空撮を実施し、そのデータを用いて今年の均平精度の検証を行いました。2014年から比べると試験サイトの均平度の精度は良くなっていますが、そろそろ頭打ちになってきた感じです。実際にトラクターを動かし、圃場の均平化を実施してきましたが、満足いく状態になるまでは5年はかかるなぁと実感しました。また、均平化のアドバイスをくれたベテラン農家さんの言う通りでした

ⅰ) 代かき後の凹凸マップ(2020年)

 

ⅱ) 代かき後のオルソ画像(2020年5月22日撮影)

 

2014~2020年における均平精度の変遷

 

2020年は均平精度:1.1cm・最大高低差:4.0cmとなりました。今年も均平精度は問題ない結果となり、水管理もムラなくできるはずです。あとは、昨年みたいな梅雨の長雨にならないことを祈るだけです。

 

ビニールハウスでドローン

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令和元年東日本台風(台風19号)による被災で多くの農機具が使用不能になってしまいましたが、国・県・市による補助金のおかげで今年の水稲栽培もできるようになりました。感謝です。ありがとうございます。

4月に入り、この地域の多くの農家さんが動き始めました。

私のところでは、まずは育苗用のビニールハウスの準備からです。昨年の台風による洪水によって,ハウス内の地面には、いたる所で凹凸が生じてしまいました。

昨年の反省から今年は、事前にビニールハウス内の凹凸マップを作成してみました。ポールカメラとドローンの両方で凹凸マップを作成しましたが、今回はドローンの方法を紹介します。大型ドローンではハウス内の飛行は危険ですが、今回は昨年発売された200g未満機ドローン「Mavic Mini(DJI)」を使いました。東京で積雪があった日でもMavic Miniによるハウス内の撮影は問題ありません。プロペラガードも付いているので、安心して飛ばせます。

Mavic Miniでハウス内をインターバル2秒で空撮

 

撮影した画像はSfM-MVS技術を用いて3Dモデルにします。さらに、このデータからビニールハウス内の高低差をcm単位で可視化できるので、この凹凸マップをベースに均平化を行います。ハウス内に重機を入れることは難しいので、トンボ・シャベルによる手作業で整地にします。マップがあるだけで均平作業も効率的に実施できます。

ドローンによるビニールハウス内の均平化

 

凹凸マップ(DSMの色は1cmごとに設定)

 

育苗用のビニールハウスの整地後は、種籾の塩水選・消毒(24時間薬液漬)です。濃度20%(約比重1.13)の塩水を種籾を投入し、実がつまった種子だけを選別します。選別した種籾を浸種し、約1週間後に種蒔きです。さらに1カ月後には田植えになりますが、それまでにコロナ禍が収束することを祈ります。

塩水で浮いている種子(この種子は移植には使いません)

 

【塩水選】

・種籾(16kg)、バケツ(40L)、塩(5kg)、ザル

 

【使用農薬】

・テクリードCフロアブル(1成分):殺菌剤 (種籾20kgに対して、水40l・薬剤200ml)

・スミチオン乳剤(1成分):殺虫剤 (種籾20kgに対して、水40l・薬剤40ml)

 

 

結果:均平精度(2019年)

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いろいろとが業務に縛られ、更新が怠ってしまいました。先月の内容になりますが・・・

今年も代かきが終わりました。事前にトラクターのエンジンオイルも取り替え、快調な作業でした。浅水代かきを実施した結果、代かき後の水位は低く、泥も予想以上に早く沈着しました。圃場内の水は1日おいたら透明です。

そこからは、例年行なっている均平度のチェックです。2014年から比べると均平度の精度は毎年良くなっています。2019年の結果は以下のようになりました。

代かき後のオルソ画像(2019年5月17日撮影)

 

代かき後の凹凸マップ(2019年)

 

2014~2019年における均平精度の変遷

 

ただし、今年は問題が発生しました。代かき後の天気が良すぎた結果、いつも以上に圃場を乾きすぎてしまい、一部の土が固くなってしまいました。今までは固くなる前に田植えを行なっていたので、問題ありませんでした…。それにしても今回の件は不覚でした。来年以降への教訓です。

水入れ

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圃場を均平にするための重要な作業「代かき」の時期がやってきました。圃場の凹凸を目で見てはっきりわかるのは「水を入れた時」です。周囲より土が高ければなかなか水が入りません。一方、低いところでは水がどんどん溜まっていきます。

2017年に設置したライブカメラで今年の水入れを確認してみます。ちなみに、現在の様子はこちらから見ることができます。

【タイムラプス】水入れの様子(2019年5月10日〜11日)

 

このあたりの圃場は、川からポンプで取水した水が供給されています。夜間はポンプが停止するため水は出ません。上図の動画は2日間に渡って水を入れているので、夜間に水が一旦引いた状態から再度水が入っている状態が映っています。

代かき前の凹凸マップ(色は1cmごとに設定)

 

画面の右側(2)が最後まで水が入っておらず、また画面の左側(1)が水がたまっていることから、(2)が高く(1)が低いことがわかります。

ライブカメラの画像

 

今回は圃場の半分ぐらいまではほぼ均等に水が入りましたが、後半にかけて水の偏りが生じてしまいました。

凹凸マップをトラクターに貼って、凹凸を少しでもなくすために、代かき開始です。

 

結果:均平精度(2018年)

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試験サイトでは、代かきを行った後に泥が沈着するまで待ってから、水を落とし土壌が見える状態になるようにしています。これは、代かき後の圃場を測量するためです。
3年間実施していることもあって、近所の農家さんから不思議がられることもなくなりました。

代かき後のオルソ画像(2018年5月18日撮影)

 

圃場の北側では、ほんの少し水が残っています。一方、南側(明るく写っている部分)は水が抜けています。圃場にいくつかの線条の跡が残っていますが、これは鳥などの足跡になります。畦畔を超えて、隣の圃場(北側)までつながっています。

水がある程度なくなった状態で、ドローン計測による圃場の均平精度(凹凸の定量化)を求めました。その結果、2018年は均平精度:1.2cm・最大高低差:5.1cmとなりました。過去最高の結果です(といっても5回しかデータはありませんが・・・)。
過去の記事にも書きましたが、移植栽培で目標とする均平精度は標準偏差:1.8cm・最大高低差:9.0cmが目標値となっています(農林水産省)。

下に2016~2018年の代かき後の圃場凹凸マップを示します。

ⅰ) 代かき後の凹凸マップ(2018年)

 

ⅱ) 代かき後の凹凸マップ(2017年)

 

ⅲ) 代かき後の凹凸マップ(2016年)

 

2014~2018年における均平精度の変遷

 

試験サイトの均平精度は、2014年が標準偏差:2.6cm・最大高低差:10.2cmに対して、2015年は標準偏差:1.8cm・最大高低差:7.5cm、2016年は標準偏差:1.4cm・最大高低差:6.1cmとなり,年々圃場内の高低差は小さくなっています。トラクターの操縦経験を積むことで、技術が身についてきているのかもしれません(^_^;)。なお、2014年・2015年は代かき前のDSMを用いて計測を行っています。2016年以降は代かき後の高低差を精確に求めるために、代かき直後に圃場内の水を抜いた状態で空撮を実施しています。

 

【参考】

2014~2017年までの均平精度と玄米タンパク含有率との関係を、濱ほか(2018):UAVリモートセンシングおよび登熟期の気象データに基づく玄米タンパク含有率推定 にまとめています。

 

代かき(2018年)

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4月に圃場の凹凸を計測した結果、概ね均平化されていることがわかったので、今回は代かきによる大幅な土壌の移動は実施しませんでした。そのため、代かきの作業時間は去年の半分ぐらいでした。

代掻きの様子(2018年5月14日撮影)

 

トラクターを運転していると、どこからか小さい鳥(ムクドリやハクセキレイなど)たちが飛来してきます。この小鳥らは、トラクターが土を耕すことで逃げ出すカエルやミミズなどを捕食しています。それにしても、大きなエンジン音にも驚かずにトラクターの後ろを一緒に歩きながら効率的にエサを取るので、人間の生活環境に慣れていますね。

捕食中のムクドリ

 

ここ数年、5月ぐらいになるとヘリコプターが低空飛行で自宅周辺を通過していきます。写真では遠近感を上手く表現できませんが、突然のヘリコプターの接近は少し驚きます。調べてみると、ヘリコプターによる送電線の点検のため、低空飛行しているそうです。近い将来には、有人ヘリからドローンへ移行していくのでしょうね。

ヘリコプターによる送電線点検

 

 

農閑期の圃場計測

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2018年度の栽培に向けて始動です。

昨年の秋に「すき込み」をしてから、久しぶりのトラクター運転になります。

田起こし作業の前に、ドローンによる圃場計測を行いました。ドローンは農閑期にメンテナンスを施し、いつでも飛行できるように準備をしていたのですが、GCP用のマーカーが色あせているのに気づいてしまいました・・・。

再塗装前後のGCP用マーカー

 

上図の右側はドローン水稲モニタリングを始めてから使用しているマーカーです。長年使用していると色があせたり、剥がれたりしてしまいます。この程度であれば、上空から撮影しても特に問題ないのですが、気分一新ということで再塗装し直しました(下図参考)。

上空50mから撮影したGCP用マーカー(左:2018年3月31日撮影 右:2017年9月9日撮影)

 

昨年のブログを見直してみると2月中旬に田起こしをしていたので、今年は少し遅い始動となります。まずは、田起こしの前に圃場の状態をドローンを用いて計測しました。

圃場凹凸マップ(田起こし前:2018年3月31日撮影)

 

最近は、圃場の均平化に力を注いでいるので、そこまで気になる凹凸はありませんでした(圃場の四隅やトラクターの出入り口を除いて)。この作成したマップは、運転席に貼って凹凸の位置を意識しながら田起こし&均平化を行いました。

圃場凹凸マップ(田起こし後:2018年4月1日撮影)

 

上図は作業後の凹凸マップです。マップを見る限り、そこそこ良い感じであると思います。これなら今年の代かきはそんなに作業時間がかからないかもしれません。ベテラン農家さんの「この圃場の均平化は3~4年かかるよ」のアドバイスの通りで、この状態になるまで時間がかかりました。

 

ドローン水稲モニタリングも今年で5年目の節目を迎えます。これからも「どろーん米」の作業記録を兼ねた情報を発信していきたいと思います。

 

相棒(ドローン、トラクター)

 

熱赤外カメラによる空撮

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少し前の話題になりますが、今年の農閑期(4月中旬)に熱赤外カメラによる空撮を実施しました。

熱赤外カメラはイネ群落の表面温度の連続観測(穂揃期)で使用しましたが、今回は圃場の地表面温度から土壌水分量および均平を把握できるのか観測してみました。

 

【圃場環境】

・田起しを行ってから、約1カ月経過 (試験サイトの隣(北側)の圃場も同時期に田起しを実施)

・熱赤外カメラによる空撮実施の前日に、数時間の降雨

 

オルソ画像(4月中旬)

 

熱赤外カメラ画像(4月中旬)

 

上記画像の拡大図

 

地表面温度は西側で相対的に高く、東側が低い結果となりました。特に中央部では温度が低くなっています。この部分を拡大してみると、田起し後に石拾いのために歩いた足跡周辺で地表面温度が低下していました。圃場を歩くと5cm程度は凹むので、熱赤外カメラはその影響までも観測できているのではないかと考えられます。また、西~東側に筋状に地表面温度が高くなっている場所は、昨年の収穫後に籾殻を撒いたところになります。ちなみに、隣(北側)の圃場は足跡もなく、地表面温度が一様な分布をしていることがわかりました。

わずかな環境の違いを捉えられる熱赤外カメラは有益なセンサであると実感しました。

 

上記の実験後に、トラクタによる均平化を行い、1週間後に再度空撮(可視光・熱赤外カメラ)を実施しました。

 

オルソ画像(5月上旬)

 

熱赤外カメラ画像(5月上旬)

 

トラクタによる均平化を行った後の均平精度は標準偏差1.5cmとなり、地表面温度のばらつきは前回の分布と異なる結果となりました。

西側にある給水口ではわずかな量の水が漏れ出していたため、地表面温度が低くなっています。オルソ画像では地表面の見た目の変化はありませんが、熱赤外ではちゃんと変化を捉えることができています。また、圃場の3辺(西側除く)にかけて温度が低い場所は、くろつけを行った際のトラクターの車輪跡になります。

今回の実験から熱赤外カメラを用いた観測は様々な現象を取得できるセンサとして有望なので、今後も継続して観測していく予定です。

 

代かき後のドローン計測(2017年)

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今年も代かき直後の圃場の高さをドローンを用いて計測しました。(参考:昨年の計測結果

代かき直後は泥水となっているので、泥が沈着するまでの2日間ほど時間を置いてから、落水および蒸発によって土壌が見える状態までにしてから計測します。

代かき後に湛水を行わず、ある程度水がなくなった状態(2017年5月18日撮影)

 

ドローン計測は圃場内の凹凸をどのぐらい均平化できたかを定量的に明らかにするのが目的です。また、代かき後に水を張った状態でもドローンによるDSM計測ができるか実験を行いました。

まず、代かき後に水がなくなって土壌が見えている場合のオルソ画像とDSM(陰影図)

2017年5月18日撮影

圃場の均平精度は、圃場内の高さを測定し、それらの結果から算出した標準偏差が均平精度を示します。この標準偏差の値が大きいと圃場内の凹凸のムラが大きくなります。

目標とする均平精度は、湛水直播や乾田直播などといった栽培方法によって異なります。農林水産省の資料によると、移植栽培の場合は標準偏差:1.8cm・最大高低差:9.0cmが目標値となっています。

今回の代かきによる均平精度は、標準偏差:1.3cm・最大高低差:6.9cm となり、今年の均平化も悪くない出来だと思います。(参考:2016年の均平精度 標準偏差:1.4cm・最大高低差:6.1cm)

代かき後は湛水状態にしなければいけませんが、今年も水を張らなかったので、近所のベテラン農家さんは心配していたそうです。ご迷惑をお掛けしました。m(_ _)m

水を張った状態でもドローンによる計測ができるか実験するために、水がない状態での空撮が終了直後に水を入れました。翌日には、2~3cm程度の深さで水が張った状態となります。

湛水状態(2017年5月19日撮影)

湛水状態でドローン計測して作成したオルソ画像とDSM(陰影図)

2017年5月19日撮影

 

この日の気象状態は、ほぼ無風で、時折微風によって水面が波を打つ程度でした。空撮時は全くの無風状態で絶好のデータ取得日でした。

水の透明度の高い箇所では底の土壌まではっきりと見ることができます。一方、泥水が撹拌してしまった箇所(圃場の西側)では土壌を見ることはできません。

これらのデータをSfM-MVS処理でオルソ画像・DSMを作成すると、泥水が撹拌している箇所ではマッチングが上手くいかず、ノイズとしてDSMの精度が落ちています。

下図は「湛水状態のDSM - 水のない状態のDSM」 の差分マップです。

 

湛水状態のDSM - 水のない状態のDSM マップ

泥水で底が見えなかった箇所でDSMが高い値(ノイズを含む)となったため、水の有無の差分で約10cmの差が生じました(圃場の西南側)。一方、透明度が高かった箇所では湛水状態のDSMが約2~3cmが高い結果となりました。

赤線部分の断面図

赤線部分の断面図の結果から、湛水状態のDSMが一定の高さを示していないので、水面の高さより圃場の高さが影響していると考えられます。水深や水の屈折率を用いて計算すれば、湛水状態でも圃場の高さを取得できる可能性があることが今回の実験でわかりました。

 

ただし、代かき後(湛水状態)に計測する場合、無風かつ泥が撹拌していない状態でないと精度の良いデータを取得することができないため、撮影条件は結構厳しいと思われます。

来年以降も代かき後は水がない状態で計測するのがベストなのかもしれません。

 

代かき(2017年)

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私の経験(短い期間ですが・・・)から収穫量・品質の向上には「均平化」は大切な作業だと思います。

今年も代かき前には、いろいろと圃場の均平化を試しましたが、容易に圃場内の土を移動できるのは代かきになります。

まずは、代かき前にドローンでDSMを計測し、凹凸マップを作成します。

代かき前の凹凸マップ(2017年)

高い(淡いピンク) ← 地表面の高さ → 低い(紺)

圃場の西(左)の中側が高くなっています。また、圃場の3辺の低い部分はくろつけを行った際のトラクターの車輪跡になります。

屋上から撮影した圃場(画像の上が北)

凹凸マップが示すように地表面がちょっとでも高いところ(数cmの差)は、水が溜まっていないことがわかります。

水が全体的に入ったら、代かきを行います。

圃場の凹凸を意識しながら、トラクターによる均平化

均平化後には、ドローンによる計測を実施します。