モニタリング手法

収量予測・・・減収の見込み

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8月に入ってから、オホーツク海高気圧からの「やませ」が関東地方まで流れ込んでいるため、埼玉県も日照不足となっています。東北の太平洋側(岩手県、宮城県、福島県)では、平年を大きく下回っていることから、いもち病の心配があるそうです。

試験サイト周辺の日照不足を定量的に見るために、最寄りのアメダス地点:鳩山の日照時間を8月1日~20日までまとめてみました。今年の8月1日~20日間の日照時間は36.1時間と平年の34.5%と大きく下回っています。出穂期からの日照時間は収量・食味に大きく影響します。気象庁によると8月下旬からは平年並みに戻る見込みだそうなので、晴れることを祈ります。

     8月1日~20日までの積算日照時間(2014~2017)

 

今年も収量予測をしてみました。使用するのは7月30日の出穂期のデータになります。ただし、生育が順調に進んだ出穂期のデータなので、それ以降の日照不足を反映していません。そのため、ここで推定する値は日照不足がなかった場合の値になります。ちなみに、平年並みの日照時間があった2016年の収量結果はこちらから閲覧できます。

【使用するデータ】

・ドローン計測によるNDVI(2017年7月30日撮影)

・単位面積あたりの収量とNDVIの相関式(2016年データの解析結果)

収量(kg) = 2016年度のパラメータ × メッシュごとのNDVI

試験サイト全体の玄米収量予測 (ドローン): 1474 kg

 

8月の日照不足を考慮にいれると、この求めた推定値(玄米収量1474kg)の約20%の減収(玄米収量1180kg)になると考えています。

今年の収量から解析して得られる「単位面積あたりの収量とNDVIの相関式」は冷夏用のパラメータとして、今後の栽培に活かせるはずです。農業技術が進んでも、天候次第で収量・品質が大きく左右されるのは昔から変わりません。

 


倒伏リスク診断(2017年)

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今年は7月30日に出穂期を迎えましたので、出穂14日前の7月16日のモニタリングデータを利用して、倒伏しやすいコシヒカリの倒伏リスク診断を行ってみました。

倒伏リスク診断の計算方法はこちらに掲載しています。

 

倒伏リスク診断マップ(2017年)

「7月16日(出穂14日前)のDSM-5月18日(代掻き直後)のDSM」から計算した倒伏リスク診断マップです。橙~赤色は倒伏リスクの高い株で、青色はリスクが低い株になります。今年は圃場の西側(特に南西側)で倒伏リスクが高い結果となっています。昨年は圃場の北側で倒伏リスクが高い結果となり、実際に倒伏してしまいました。草丈のむらが出ないように、圃場の均平化など努力しているのですが、均一に栽培する難しさを実感します。

 

2017年7月16日空撮のオルソ画像


NDVI & 温度観測

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昨年(8月6~7日)は試験サイトの圃場内の温度環境を把握するために、熱赤外カメラによる温度観測を行いました。今年も昨年同様の観測を千葉大学近藤研究室の濱さんと共同で、8月5日~6日(生育ステージは乳熟期)にかけてNDVI & 温度観測を実施しました。天気予報では曇一時雨となっており、観測は難しいかなぁと思っていましたが、2日間とも雨は降らず、無事に観測することができました。

昨年の観測結果からNDVIが高い箇所では群落表面温度の低温域となり、反対にNDVIが低い箇所では高温域となることがわかりました。また、群落表面温度のばらつきは玄米重量にも影響を及ぼすことが昨年の結果から示されています。

今年は出穂期から曇天が続き、日平均気温が27℃を超えた日はわずか3日(最大で28.2℃)です(8月6日時点)。そのため、2017年度産「どろーん米」は高温登熟障害の影響が小さいかもしれません。

【観測項目】
1)同一圃場内の生育状況が異なる2箇所で温湿度・CO2観測
・出穂期のNDVI分布を基に、NDVIが高い(草丈が高い)・NDVIが低い(草丈が低い)場所の2箇所に、観測機器を設置。


観測機器(温湿度・CO2

昨年の観測機器より耐久性等を増した装置を濱さんが作成しました。装置は塩ビ管(100mm)をアルミ箔で覆い、太陽光パネル+モバイルバッテリを電源にした通風機能を備えています。

 

2)熱赤外カメラによる群落表面温度観測
・昨年と同様に熱赤外カメラをドローンに搭載し、上空100mから2時間ごと(日の出~日の入りまで)に垂直撮影(地上分解能約30cm)。

上空100mからの温度観測画像(2017年8月5日12時撮影)

 

3)NDVI観測
・Yubaflexをドローンに搭載し、上空50mから2時間ごと(日の出~日の入りまで)に垂直撮影(地上分解能約2cm)。

SOLO(3DR社)

近未来的なデザインに仕上がっているSOLO(濱さん持参)にNDVI計測を担当してもらいました。SOLOは機底に付属のカメラが付いていないので、好きなカメラを搭載することができます。なお、ドローン業界の大きなシェアを占めているPhantomシリーズの場合は空撮用カメラが標準装備されているため、水稲モニタリングに適したカメラを後付けすることが難しくなっています。

SOLOについては濱さんのHPに情報が掲載されています。HPはこちら

今年も多くの観測データを取得することができたので、これから解析を行います。

 


中干し(2017年)

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田植えから1ヶ月後の6月26日~7月10日まで中干しを実施しました。

営農情報によれば、中干しは7~10日間が目安となっていますが、梅雨前線・台風3号(NANMADOL)による雨の影響で、予定通りの中干しはできませんでした。

台風3号が通過してからは、最高気温が35℃以上の晴天が続き、一気に圃場の水が蒸発していきました。

昨年は中干しの確認を行うために、超低空(対地高度約5m)のマニュアル飛行で撮影しました。

今年は可視光、近赤外、熱赤外の3つのカメラで超低空(対地高度約5m)撮影を行い、中干し確認にはどれがベストか試みました。

 

超低空撮影(2017年7月9日撮影)

 

ダウンウォッシュの影響でイネが倒れた状態になってしまい、条間の土壌の様子が確認できませんでした。欠株したところで、中干しして生じたひび割れを確認できました。

上図の拡大部分(撮影原サイズ)

 

上空からの中干し確認の他に、地上からも確認したのが、下図になります。

地上からの中干し確認(2017年7月9日撮影)

 

 

近赤外カメラによる超低空撮影

 

近赤外画像では植生の分光反射が強く、土壌や水の分光反射が弱い特性があるため、中干しによる土壌のひび割れを探すのは難しいとわかりました。

熱赤外カメラによる超低空撮影

 

 

熱赤外カメラでは土壌とイネの葉の表面温度の計測できました。上図は条間部分の土壌で約40℃の高温になり、イネの葉の表面温度は約30℃の結果を示しています。今回使用している熱赤外カメラは画素数が少ないため、土壌のひび割れまでの細かい情報の抽出は難しいのかなと思いました。ただし、圃場内に水が残っているかどうかの確認には使えそうだと思います。

 

可視光の画像が中干し確認には一番わかりやすかったのですが・・・圃場内に入って確認するのも確実だと思います。

 


欠株率

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田植えから1ヶ月が経過すると、苗も順調に生長し上空からのモニタリングでもはっきりと確認できます(この頃の草丈は約35cm)。

昨年からはじめた「水稲株位置の抽出」を今年も行いました。抽出方法については、昨年の記事をご参照下さい。

水稲株位置の抽出に使用した画像は、移植してから28日後の近赤外オルソ画像になります。

 

水稲株位置抽出(2017年6月18日撮影)

オルソ画像と抽出した水稲株位置(オレンジ点)を重畳した画像になります。両者の画像を比較してもわかるように、おおよその水稲株の位置抽出ができているのではないかと思います。

 

圃場全体の水稲株位置(2017年) 背景:近赤外画像(Canon S110近赤外改造)

今年は株間21cmに設定して移植を行った結果、圃場内の株数は約4.7万株となりました。ちなみに、昨年は株間18cm設定で約5.1万株となっております。

 

次に、水稲株をメッシュごとにまとめて可視化した結果です。

 

単位面積あたりの株数(株/㎡) 背景:可視画像(Richo GR)

圃場の西側は田植機の移植方向が異なる部分にあたるため、若干株数が少なくなっています。圃場内全体では単位面積あたり14.2(株/㎡)【坪あたり46.9株】となりました(昨年の結果はこちらから)。

また、株間21cmの標準的な単位面積あたりの株数は15.9(株/㎡)となります。そこで、この値を基準としてメッシュごとの欠株率を算出してみました。

 

欠株率(2017年) 背景:近赤外画像(Canon S110近赤外改造)

その結果、メッシュ全体の欠株率は7.9%となりました。欠株率が最も高い値を示したメッシュは、トラクタの出入り部分にあたります。それ以外のメッシュでは、だいたい数%の欠株率で収まっています。

 


熱赤外カメラによる空撮

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少し前の話題になりますが、今年の農閑期(4月中旬)に熱赤外カメラによる空撮を実施しました。

熱赤外カメラはイネ群落の表面温度の連続観測(穂揃期)で使用しましたが、今回は圃場の地表面温度から土壌水分量および均平を把握できるのか観測してみました。

 

【圃場環境】

・田起しを行ってから、約1カ月経過 (試験サイトの隣(北側)の圃場も同時期に田起しを実施)

・熱赤外カメラによる空撮実施の前日に、数時間の降雨

 

オルソ画像(4月中旬)

 

熱赤外カメラ画像(4月中旬)

 

上記画像の拡大図

 

地表面温度は西側で相対的に高く、東側が低い結果となりました。特に中央部では温度が低くなっています。この部分を拡大してみると、田起し後に石拾いのために歩いた足跡周辺で地表面温度が低下していました。圃場を歩くと5cm程度は凹むので、熱赤外カメラはその影響までも観測できているのではないかと考えられます。また、西~東側に筋状に地表面温度が高くなっている場所は、昨年の収穫後に籾殻を撒いたところになります。ちなみに、隣(北側)の圃場は足跡もなく、地表面温度が一様な分布をしていることがわかりました。

わずかな環境の違いを捉えられる熱赤外カメラは有益なセンサであると実感しました。

 

上記の実験後に、トラクタによる均平化を行い、1週間後に再度空撮(可視光・熱赤外カメラ)を実施しました。

 

オルソ画像(5月上旬)

 

熱赤外カメラ画像(5月上旬)

 

トラクタによる均平化を行った後の均平精度は標準偏差1.5cmとなり、地表面温度のばらつきは前回の分布と異なる結果となりました。

西側にある給水口ではわずかな量の水が漏れ出していたため、地表面温度が低くなっています。オルソ画像では地表面の見た目の変化はありませんが、熱赤外ではちゃんと変化を捉えることができています。また、圃場の3辺(西側除く)にかけて温度が低い場所は、くろつけを行った際のトラクターの車輪跡になります。

今回の実験から熱赤外カメラを用いた観測は様々な現象を取得できるセンサとして有望なので、今後も継続して観測していく予定です。

 


LIVE配信はじめました

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お知らせ

LIVE配信はじめました。

水稲ドローンモニタリングを実施している試験サイトの様子を確認することができます。現在のところ、稲刈りの期間までLIVE配信を予定しています。

メニューバーの「LIVE配信」から確認することができます。

 

モニタリングカメラから眺める試験サイト


代かき後のドローン計測(2017年)

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今年も代かき直後の圃場の高さをドローンを用いて計測しました。(参考:昨年の計測結果

代かき直後は泥水となっているので、泥が沈着するまでの2日間ほど時間を置いてから、落水および蒸発によって土壌が見える状態までにしてから計測します。

代かき後に湛水を行わず、ある程度水がなくなった状態(2017年5月18日撮影)

 

ドローン計測は圃場内の凹凸をどのぐらい均平化できたかを定量的に明らかにするのが目的です。また、代かき後に水を張った状態でもドローンによるDSM計測ができるか実験を行いました。

まず、代かき後に水がなくなって土壌が見えている場合のオルソ画像とDSM(陰影図)

2017年5月18日撮影

圃場の均平精度は、圃場内の高さを測定し、それらの結果から算出した標準偏差が均平精度を示します。この標準偏差の値が大きいと圃場内の凹凸のムラが大きくなります。

目標とする均平精度は、湛水直播や乾田直播などといった栽培方法によって異なります。農林水産省の資料によると、移植栽培の場合は標準偏差:1.8cm・最大高低差:9.0cmが目標値となっています。

今回の代かきによる均平精度は、標準偏差:1.3cm・最大高低差:6.9cm となり、今年の均平化も悪くない出来だと思います。(参考:2016年の均平精度 標準偏差:1.4cm・最大高低差:6.1cm)

代かき後は湛水状態にしなければいけませんが、今年も水を張らなかったので、近所のベテラン農家さんは心配していたそうです。ご迷惑をお掛けしました。m(_ _)m

水を張った状態でもドローンによる計測ができるか実験するために、水がない状態での空撮が終了直後に水を入れました。翌日には、2~3cm程度の深さで水が張った状態となります。

湛水状態(2017年5月19日撮影)

湛水状態でドローン計測して作成したオルソ画像とDSM(陰影図)

2017年5月19日撮影

 

この日の気象状態は、ほぼ無風で、時折微風によって水面が波を打つ程度でした。空撮時は全くの無風状態で絶好のデータ取得日でした。

水の透明度の高い箇所では底の土壌まではっきりと見ることができます。一方、泥水が撹拌してしまった箇所(圃場の西側)では土壌を見ることはできません。

これらのデータをSfM-MVS処理でオルソ画像・DSMを作成すると、泥水が撹拌している箇所ではマッチングが上手くいかず、ノイズとしてDSMの精度が落ちています。

下図は「湛水状態のDSM - 水のない状態のDSM」 の差分マップです。

 

湛水状態のDSM - 水のない状態のDSM マップ

泥水で底が見えなかった箇所でDSMが高い値(ノイズを含む)となったため、水の有無の差分で約10cmの差が生じました(圃場の西南側)。一方、透明度が高かった箇所では湛水状態のDSMが約2~3cmが高い結果となりました。

赤線部分の断面図

赤線部分の断面図の結果から、湛水状態のDSMが一定の高さを示していないので、水面の高さより圃場の高さが影響していると考えられます。水深や水の屈折率を用いて計算すれば、湛水状態でも圃場の高さを取得できる可能性があることが今回の実験でわかりました。

 

ただし、代かき後(湛水状態)に計測する場合、無風かつ泥が撹拌していない状態でないと精度の良いデータを取得することができないため、撮影条件は結構厳しいと思われます。

来年以降も代かき後は水がない状態で計測するのがベストなのかもしれません。

 


ポールカメラによる凹凸計測

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日本の農地上空には、送電線が多く存在しています。残念ながら、私の圃場上空にも送電線があります。

送電線の下にある圃場(紫線)

背景画像:地理院地図

そのため、送電線がある圃場では、安全面を考慮するとドローンによる水稲モニタリングを実施できません。上空からモニタリングできるツールは、ドローン以外にも高所作業車による撮影などがあります(サタケ:圃場生育診断システム「アグリビュー」)。ただ、零細農家にとってモニタリングのたびに高所作業車をレンタルすることはできません。

そこで、今回はポールカメラ方式を採用しました。

ポールカメラは中田ほか(2009)を参考にして、測量スタッフ(約7m)とRicho GR(インターバル間隔を5秒)を用意し、撮影を行います。

 

ポールカメラ撮影のイメージ(場所は圃場ではありませんが…)

 

7mのスタッフに約250gのカメラを取り付けると、スタッフはしなってしまい、上手く扱うには力が必要になります。また、風が吹くと測量スタッフがもっていかれてしまい、同じ場所にとどめるだけでも大変です…。

ポールカメラで撮影するためにはノウハウも必要ですが、改正航空法で飛行制限があるDID地区付近でもモニタリングできるので、ポールカメラは有効なツールだと思います。また、ポールカメラは墜落の心配もありません。

 

青い四角はポールカメラの撮影推定位置

ポールカメラによる3Dモデル(送電線下の圃場)

中田 高,渡辺満久,隈元 崇,後藤秀昭,西谷義数,桜井元康,川口 雄作:地形調査のための簡易高位置撮影装置 (Hi-View)の開発,活断層研究,31,pp.39-43,2009.

 


モニタリングの現状と課題

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近年、日本の農業は農業用ロボットやICT技術を駆使して生育管理を行う精密農業の導入が各地で進んでいます。ドローン分野では、2016年に農薬散布ドローンが続々と農林水産航空協会の認定を受けており、2017年から各地で運用されている姿を見ることができると思います。また、これと同時にドローンを活用して、農作物の生育管理を行う会社も増えてきました。

従来、上空からの農作物モニタリングは、衛星・航空機(有人機)によるリモートセンシングが行われてきました。衛星による農作物モニタリングは一度に広範囲(約100kmの範囲)の情報を取得することができます。広範囲を管轄する組織であれば、有効なツールになります。実際に青森県では、「青天の霹靂」や「つがるロマン」はブランド化され,販売されています。

しかし、衛星モニタリングにも課題があります。

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