2015年栽培
空撮時の注意(登熟期)
2014年からモニタリングを実施して、様々な失敗や試行錯誤を経て、現在の運用体制にいたっています。今回はその中でもついやってしまいがちな失敗例を紹介します。
【失敗例】
・近接撮影によるイネの倒伏(2015年8月31日撮影)
出穂日前はイネの葉を空撮することがメインになりますが、出穂期以降(特に登熟期後半)はイネの穂には実がつき、空撮の被写体としても絵になります。そうなると、ついつい低空撮からイネの穂を撮影してみたくなってしまいます(その誘惑が失敗の原因です)。冷静に考えれば理解できるはずですが、その場で操縦しているときは撮影のことばかりが・・・。
登熟期後半のコシヒカリは、ちょっとした外部からの力(雨や風など)で倒伏しやすい状態です。その中で、対地高度約5m以下の低空撮を行えば、ドローンからのダウンウォッシュ(下降気流)でイネが倒伏してしまいます。
下図は、私が誘惑に負けて、イネを倒伏させてしまった部分になります。一度、倒伏させてしまうと、元の状態には戻りません。この経験から登熟期の低空撮には慎重な操縦を心掛けないといけないと学びました。空撮を行っている方も注意してください。
ダウンウォッシュによる倒伏(2015年8月31日撮影)
倒伏させてしまった時の近接画像(対地高度約3m)
収量結果(2016年)
2016年の収量は10a当たり465 kgとなりました。圃場全体では、1440 kg(屑米を除く)です。
ドローン水稲モニタリングを始めて3年目になりますが、1年目と比べると収量は約20%の増加になりました。また、お米の美味しさの指標となる玄米タンパク質含有率も2015年では約6.1%と日本人が好むやわらかいご飯になっています。2016年はこれから分析です。
ちなみに、一般的な玄米のタンパク質含有率は6.8%とされており、タンパク質含有率が低いほどやわらかいご飯となり、数値が高いとしっかりとした硬いご飯となります。
ドローン水稲モニタリングの成果(2014-2016)
ドローン水稲モニタリングの導入1年目は、これまで行っていた「勘と経験」の水稲栽培の問題点を洗い出しました。2年目以降は浮かび上がった問題点を改善するような栽培を行うことによって、収量・食味の向上に結び付けることができました。収量・食味UPにつなげるためには、単年だけではなく、複数年のモニタリングが必要です。
収穫前に予測した収量(8月19日)は、地上観測による予測1520kg、ドローンによる予測1570kgでした。地上観測の予測値が実測と近い結果となりましたが、両者とも約10%の誤差の範囲内に収まっています。
ドローンによる予測は、2015年のパラメータをそのまま利用したのが誤差を大きくした要因ではないかと考えられます。
今年は株間(16cm→18cm)を変更した影響も考えられるので、様々な状況下のパラメータを取得することによって、今後の予測精度の向上を図りたいと思います。
農作業も一段落した農閑期は、2016年のモニタリングで得たデータを詳細に解析する期間です。
台風7号による被害なし
先日、関東地方に接近した台風7号(CHANTHU)による被害はありませんでした。
昨年は、稲刈り直前に関東・東北地方を襲った豪雨災害(平成27年9月関東・東北豪雨)によって、圃場全体が冠水してしまいました。
当時、雨は小康状態になって安心したのですが・・・自宅近くにある水門ゲートの開閉によって、わずかな時間(数十分)で氾濫状態に陥ってしまいました。
新米兼業農家ながら、精魂こめて作った農作物が被害を受けてしまうと...さすがに落ち込みました...
昨年の氾濫状況(2015年9月9日撮影)
翌日には水は引きましたが、ペットボトルなどといったゴミが圃場内に残ってしまいました。また、水の流れが速かったところは倒伏してしまいました。
水もすぐに引いたので、米の品質には大きな影響はありませんでした(ただ、稲穂に付いた大量の泥が稲刈りの時には土埃となってしまい、大変でした。)
他の所で刈った後の藁が大量に流れ込んだ結果、倒伏してしまった(2015年9月10日撮影)
出穂期
今年は8月4日に出穂期を迎えました。ほぼ例年通り(8月3日前後)です。
出穂期は全体の4~5割程度の穂が出穂した時期になります。
稲が出穂すると、次々に穂の上部から開花していきます。
開花している時間はおよそ2時間程度です。その間に、おしべの先から花粉が飛び散り受粉(自家受粉)し、受粉が終わると30分程度で花は閉じます。
開花の様子(2016年8月4日撮影)
2014年から実施している水稲モニタリングで得た知見では、出穂期以降のモニタリング情報によって以下のようなことがわかってきました。
・収量推定:出穂期に取得したNDVI
・タンパク質含有率推定(食味):出穂期から約2週間までに取得したNDVI
さっそく、今年もデータ整理ができ次第、推定してみたいと思います。
今年は、株間を18cmで移植しました(昨年まで株間16cm)。
週一のドローンによるモニタリングと同時に、地上では草丈・茎数の調査も実施しています。
1株あたりの茎数は、2014年15.5本、2015年17.5本でしたが、今年は茎数は20.3本となっています。株間の間隔を広くしたことが影響していると思います。
試験サイトにおける1株当たりの茎数の時系列変化
1株当たりの茎(2016年8月4日撮影)
今年は昨年より茎の見た目が違い、茎がしっかりとした太さとなっています。
観測方法にメッシュ解析の情報追加
観測方法の項目に、NDVI(植生指標)のメッシュ解析を追加しました。
NDVI画像に5m×5mのメッシュを覆い、5mメッシュ単位で生育状況をモニタリングしていきます。
メッシュ解析
観測方法に情報追加
観測方法の項目に、可視画像・近赤外画像・NDVI(植生指標)・DSM(地表面の高さ)の取得例をそれぞれ掲載しました。
解析には,これらの画像に5m×5mのメッシュを覆い、メッシュ単位で生育状況をモニタリングしていきます。
近赤外画像取得例 | NDVI取得例 | DSM取得例 |
モニタリングする際に便利なのは、GIS(地理情報システム)ソフトになります。一昔前は数百万円する業務ソフトもオープンソースの波によって、無償で使用できるソフト「QGIS」が登場しました。
登場当時はいろいろと不便なところもありましたが、最新版では問題なく使えます。
QGISは http://qgis.org/ja/site/ から日本語版をダウンロードできます。Windows以外にも対応しています。
水稲モニタリングの解析には十分な機能が含まれています。