過去

塩水選 (2019年)

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2019年の水稲栽培、動き始めます!!
今年も昨年同様に育苗用のビニールハウスの整地を行った後で塩水選・籾消毒を行いました。

トンボを使ってビニールハウス内を整地

育苗用のビニールハウスは朝から近所の農家さんと一緒に整地し、下地となるビニールを二重に敷いていきます。所々に穴が空いてしまっているので、そこはガムテープで補修していきます。作業は2時間程度で終了しました。終了後はお茶タイムですが、その時にベテランの農家さんから、農業始めてからいろいろ工夫して頑張っているね〜とお言葉いただき嬉しかったです。ちょっとだけ認められたかもしれませんね。

来年はポールカメラでビニールハウス内を撮影し、事前に凹凸マップを作成してから作業できるようにしたいと思いました。


午後からは種籾の塩水選です。用意するのは、種籾(16kg)、バケツ(40L)、塩(5kg)、ザルです。下図は塩水選後に行う種子消毒のセットも写っています。

塩水選&種子消毒セット

20Lの水をバケツに用意し、塩5kgを入れます。あとは塩が完全に溶けきるまで混ぜていきます。そうすると、うるち米の選別にちょうどいい濃度になります。

塩水選用の溶液に卵を入れた状態

濃度がちょうどよいと上図のように卵は横向きになって浮きます。卵が縦向きや水中で浮いてしまった場合は塩分濃度が低いので、塩を追加する必要があります。

選別した種籾には塩分が付着しているので、よく水で洗います。洗った後は、種子伝染性病害(いもち病、ばか苗病など)の発生を防ぐために、消毒液に24時間漬け込みます。24時間後に消毒液からたっぷり入った水に入れ替えて、発芽するまで水を交換(2日に1回のペース)しながら待ちます。
消毒剤は従来から使っている「テクリードCフロアブル(クミアイ化学)」と「スミチオン乳剤(クミアイ化学)」を使用しました。

以前は種籾6袋(24kg:6反分)を注文していましたが、株間を16cm→21cmに変更したことによって育苗箱を減少でき、 2017年から5袋にコスト削減させました。 それでも、2018年は種籾が余ってしまってスズメたちの餌になっていたので、さらに1袋減らし、4袋にしました。種籾代も高いので少しでも節約です。

排水口再整備

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以前からほんのちょっと排水口から水が漏れることがありました。なので、農作業が本格的になる前に圃場の再整備を行いました。

我が家の圃場の排水口の位置は畦畔より若干前側に設置されているため、先代達がトラクターで排水口を傷つけ、いろいろと破損させていました。

排水口の位置( 試験サイト )

そこで、排水口について調べるために周辺の土を取り除いてみると、漏水の原因が判明しました。驚いたことに、φ150の塩ビ管にφ100のエルボが取り付けられていたのです。

再整備前の排水口
 

もちろん、ピッタリ合いません。いろいろと漏れないように先代達の工夫した跡はありましたが…わずかな隙間から漏れ出していました。このあたりでは、φ150の 塩ビ管 は大きなホームセンターに行かないと手に入りにくいことが多いので、 φ100で試行錯誤したと思われます。

今回の再整備は2箇所の圃場で、それぞれの環境に合うような排水口を選びました。一つは畦畔の側面に合うような排水口で、水位が調整できるものです。今まではビニール袋に土を入れた簡易土のうで管理していたので、今回の整備で少し進歩をしました。

排水閘(150型)
 

もう一つは、これも水位調整できる排水口ですが、鉛直方向の塩ビ管自身を上下に動かして高さを調整します。

ER型 自在排水筒 

若干、圃場の高さと一致しなかったため、畦畔に埋めらている塩ビ管全部を掘り起こし、高さを調整し直しました。

一応、これで漏水問題は解決です。

スマート農業では、水位調整の自動化の動きもありますが、圃場は生産者の工夫に満ちているものなので、一概に給水口・排水口の標準化は大変なのではと今回の一件から考えさせられました。


どろーん米(2018)販売開始

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10月17日から平成30年産「どろーん米」の販売を開始します。価格は昨年と同じです。味は去年より美味しくなっております。

 

食味値:84点獲得

平成30年コシヒカリ新米100% 「どろーん米」 5kg 精米

平成30年コシヒカリ新米100% 「どろーん米」 10kg(5kg×2袋) 精米

 

価格は、5kg 2,400円(税込)、10kg 4,500円(税込)となっております。※送料別

詳細は「どろーん米購入」をご覧ください。

 

どろーん米

 

【参考記事】

NIKKEI STYLE(2014年10月22日):コシヒカリはなぜおいしい 科学で味わう「うまい米」

 

平成最後の収穫

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2018年の栽培期における天候は、一言で言うと「猛暑が続いた年」でした。8月末から9月上旬になると、台風20号(Cimaron)の接近・ゲリラ豪雨によって、この地域は瞬間的に強風・大雨が襲いました。その影響で、圃場内の一部のイネが倒伏程度3(出穂期2週間前の倒伏リスク診断でリスクがあった箇所)になりましたが、この程度であればコンバインによる作業には全く問題はありません。

 

下図は、2014~2018年の移植日から収穫日までの積算日照時間になります。図からわかるように今年の天候は例年と比べて日照時間が大きく外れています。本当に暑かったです。

(アメダス:鳩山地点を用いて作成)

2014~2018年の移植日から収穫日まで積算日照時間

 

収穫時における2018年の積算日照時間は例年の約1.3倍となりました。ちなみに、2017年も出穂期までは2018年と同様な空梅雨・猛暑でしたが、8月に入ると途端に冷夏となり日照不足となっています。

 

さて、4年間の水稲モニタリングで得たNDVIによる収量予測の結果では、今年の収量予測は2017年(471kg/10a)と比べると減収になりました。収量予測は出穂期のNDVIと前年までに得た地上サンプルとの相関式で求めます。4年間分のパラメータがあるのですが、今年はどのパラメータを用いても減収予測でした。その理由は、2018年の出穂期のNDVIが前年比85%と低かったためです。

 

NDVIのみ
収量予測:462kg/10a

 

共同研究者でもある濱ほか(2018)の論文では、NDVIと日射量(コシヒカリの場合は出穂期から20日間)を用いて収量を予測するモデルを示しています。そのモデルによる収量予測は増収となります。

 

濱モデル
収量予測:488kg/10a

 

今年の収穫結果は・・・ 498kg/10a で増収となりました。農家としては嬉しい結果ですが、研究者の立場からだと外れてしまった・・・という感じです。また、今年の収量は世代交代してから初の反収あたり8俵を超えることができました。この地域のコシヒカリの目標は8俵(JAいるま野広報誌2018年3月号 pp.5)なので、満足な結果です。

ドローン導入からのコシヒカリ収量(10a当たりの精玄米重量)およびタンパク質含有率の結果

 

ドローン導入から5年目で30%の増収になりました。籾摺り → 袋詰め → 冷蔵管理までの一連の作業は終わりましたので、まもなく2018年度産「どろーん米」をネットショッピングで販売開始いたします。

 

夏の連続観測

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恒例となった夏の連続観測を8月4〜5日にかけて実施しました。2016年から実施している連続観測は今年も快晴になりました。主な観測項目は2016年から変わらず、日出から日没までの間を、ドローン(熱赤外・NDVI)と地上(気温など)で観測します。【参考】2016年の連続観測 ・ 2017年の連続観測

3年目にもなると観測の改善点がわかってきます。まず、今年の圃場内の気温を観測する装置(通風口)の改良です。昨年は塩ビのパイプにアルミ箔を巻きました。パイプの中にはファンを設置しましたが、ファンが大きいため、動かすための電力も多く必要となってしまいました。そこで、今年は細めの塩ビパイプを白く塗装し、さらに小型ファンを取り付けました。昨年よりレベルアップです。電源は小型の太陽光パネルからの給電で十分動作しました。これらは濱氏(千葉大)の自作です。さすがです!!

圃場内に設置した気温観測装置

 

ドローンによる観測は初年度から変更はありません。NDVIはYubaflex、熱赤外はF30です。

今年は、新たにイネの蒸散を調べるために、ポロメーター(Delta-T社:AP4)による観測を追加しました。吉田先生(横国大)にご協力いただきました。ありがとうございます。

ポロメーターによるイネの蒸散測定

 

ドローン、ポロメーターは2時間ごとにデータを取得しました。また、気温・CO2・日射量は観測前にセンサを設置して昼夜の連続観測になります。

今年は観測データが充実しました。その分、解析するのも時間がかかりそうです。

 

2018年:本田防除(殺虫)

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出穂期を迎えた次の農作業は、カメムシなどの病害虫防除です。カメムシは出穂したコメのデンブンを吸汁します。その結果、そのコメは斑紋のような黒い点がついた玄米となってしまいます。カメムシは緑色で体長も5~6mmなので、緑色の多い圃場内で直接見つけることは困難です。捕まえるためには網が必要です。私も圃場内で一度も見つけたことがありません。

この日も最高気温38℃を超える猛暑日になりました。このような状態が続くと・・・高温登熟障害が発生しないか心配になります。

 

【使用農薬】

・スミチオン(1成分):殺虫剤

 対策:カメムシ類、ウンカ類などの水田害虫の殺虫

 10aあたりに水100l + スミチオン100ml(1000倍希釈)

スミチオン乳剤

 

出穂期(2018年)

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今年の出穂期は昨年より3日早い7月27日(移植日から70日:例年は73日)になりました。幼穂長の測定結果から出穂期は7月31日前後になると予想していましたが、実際に圃場内の4~5割の穂が出穂したのは、この日になりました。

次々に出穂

 

昨年までの気象データでは、この地域で栽培するコシヒカリは移植してから出穂するまでに、日照時間:約400(h)・積算温度:約1700(℃・day)必要であると考えていました。2017年も出穂期までは猛暑が続きましたが、今年はそれ以上です。2014年からの記録を見てみると、今年の積算日照時間は約80(h)多くなっています。一方で、積算温度は約1700(℃・day)と過去のデータとほぼ同じ値を示しました。イネの出穂期の目安になるのは、日照時間より積算温度(ここでは、最寄りのアメダス地点の日平均気温)が有効なのかもしれません。

 

移植日~出穂日の積算日照時間・積算温度

移植日出穂期日数積算日照時間(h)積算温度(℃)
20185月19日7月27日70480.91699.0
20175月21日7月30日71399.81697.6
2016 5月21日8月4日76381.31774.5
2015 5月23日8月3日73427.81742.1
20145月24日8月3日72400.41714.0
Average5月21日8月2日72.4396.11711.3

 

以前にも書きましたが、出穂期のモニタリングデータは、収量、タンパク質含有率や収穫適期の推定に利用します。これらの推定結果は次回以降に紹介します。

 

茎から穂を出し始めたイネ

 

2018年:本田防除(殺菌)

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出穂前に、いもち病対策などの殺菌の防除を行います。出穂3日前ぐらいに散布するのがいいのですが、出穂の予測や散布を行うための時間調整、当日の気象条件など考えるといろいろ大変です。

現場で普及しているイネの出穂を推定する方法として、幼穂長を測る方法があります。まず、圃場内の平均的な草丈の株を選択し、最も長い茎を根元から取ります。次に、取った茎はカッターで半分に切っていきます。そして、茎の中にある幼穂の長さを測ります。

イネの幼穂の長さは12.5cm(2018年7月22日撮影)

 

既往研究から幼穂長と出穂前日数の関係はまとめられています(星川 1975)。

穂の発達過程と日数および外部形態との関係

出穂前日数幼穂長:cm発達過程・外形
260.1幼穂形成期
200.2
180.8~1.5止葉抽出
12減数分裂期
19.5穂ばらみ始め
20.5
2~122
22出穂

文献:星川清親(1975)イネの生長.農文協.

幼穂の長さと出穂前日数の関係(表の数値をグラフ化)

 

幼穂長の測定結果から出穂期は7月31日前後になると予想できます。

 

出穂が予想できれば、次は防除です。初めて操作するときは2人で行っていましたが、慣れてくると1人でもできるようになりました。ただ、ラジコン付動力噴霧器でないとかなり大変です。ラジコン付きといってもホースの送り出しと巻き取りが遠隔操作できるものです。遠隔操作ができることによって、重いホースを1人でも出したり、巻いたりすることができます。

また、防除は風が弱くて雨が降らない日に行うので熱中症対策が必須になります。身体にかからないように雨具などで防備しながら行うため、尋常ではない暑さとの戦いです。当日の最高気温は38℃まで上昇したため、いつもより重労働でした。

熱中症対策(ガンガンに冷やした水とクーラーを効かせた車内で休憩)

 

【使用農薬】

・ノンブラスフロアブル(2成分):殺菌剤

 対策:いもち病、内頴褐変病、変色米、穂枯れ

 10aあたりに水100l + ノンブラスフロアブル100ml(1000倍希釈)

 

虫の乱入

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5年のモニタリングやその他いろいろな場所での地図作成など、これまでで約500時間のフライト経験がありますが、初めて撮影中に虫が乱入してきました。
毎回、撮影前にカメラの点検をしていますが、その際には虫の写っていませんでした。上空50m付近から突如登場します。しばらく一緒にドローンの飛行を楽しんだ後にどこかに行ってしまいました。

モニタリング中に虫がレンズ前面に・・・

 

撮影画像を再生した時は、レンズに問題が生じたのかと冷や汗が出ましたが・・・黒い点が動き出したので、虫だとわかりました。

途中フェードアウトしますが、再度写り込みます。縦横無尽に歩いています。

こんなこともあるんですね。

 

中干し(2018年)

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今年は移植日から38日後に中干しを始めました。必要な茎数を確保するまで例年より4日間ほど長くかかりました。

移植日からの茎数の変化(2014~2018)

 

毎年、茎数を実測している結果でも現れています。なぜ、遅くなったかは正直よくわかりません。最寄りのアメダス気象データを見る限り、過去と大きな違いはありません。一般的に、分げつ期は活着・分げつの促進のために浅水で管理します(図説:活着期から分げつ期の浅水管理のポイント)。今回の栽培方法で考えられることは、除草剤散布のために深水にしたことです。深水によって、分げつ形成に影響があったのかもしれません。

今年は中干しを始めてから、全く雨が降りませんでした。例年なら梅雨の時期に重なるので、10日程度の中干し期間がいるのですが、今年は7日間でバッチリ干すことができました。関東地方は6月29日ごろに梅雨明け(平年に比べると22日も早い)をしました。

中干し後のイネトンネル

 

これから出穂期までは間断潅水による水管理です。