Month: 11月 2016
11月の積雪
11月として観測史上初めて積雪を観測した東京※1ですが、わが家の圃場(埼玉県坂戸市)でも約7~8㎝の積雪がありました。
※1:1875(明治8)年の統計開始以降初めて。11月の初雪は54年ぶり。
2016年11月24日の積雪
【手法】ドローン飛行設定
ドローンによる空撮手順の一例を紹介します。
モニタリングや地図作成など定期的かつ効率的に撮影するには、ドローンの自律飛行機能は重要になります。
私がドローンに触れたときは、上記の目的を満たす機体は僅かでした。
※2012年発売のPhantom1(DJI社)は電波法によって制限されていました。現在のPhantomシリーズはPCまたはタブレットを通して、自律飛行は可能となっています。
そこで、当時でも自律飛行が可能なオープンソース系のフライトコントローラを搭載したZion EX700を購入しました。
ここでは、飛行コースや機体のセッティングを行うフリーソフトの「Mission Planner」を紹介します。
撮影カメラ
【2014年】
オルソ画像・DSM
・可視光域:Nikon AW1
Nikon AW1(シャッター部分には小型サーボを設置)
NDVI
・近赤外域:GoPro3×2台
GoPro3を用いた簡易型近赤外カメラ
左側:近赤外域(光吸収・赤外線透過フィルターをレンズ前に設置)、右側:可視光域
【2015年以降】
2014年に判明した問題点を改善するために、撮影カメラを以下のものに変更しました。
オルソ画像・DSM
・可視光域:Richo GR
Richo GR
RICHO GRは、これまでに試したカメラの中で空撮に適したカメラです。重量が245gと軽量でありながら、撮像素子(23.7mm×15.7mm)が大きいので、画質の高い画像を撮影できます。また、レンズの歪みも小さいので、3Dモデル作成にも適しています。私がお勧めするカメラの一つです。
NDVI
・近赤外域:Canon S110(近赤外域を撮影できるように改造)
改造Canon S110(近赤外域撮影用)
1) 撮影計画
Mission Plannerでは、撮影カメラの仕様や飛行高度などを入力することで、最適な飛行経路を設定できます。 下図は週1間隔でモニタリングを行っている飛行コースになります。地面効果の影響によって機体が不安定になりやすい離着陸時は、マニュアルで操縦を行い、ある程度上空に到達したら、自律飛行に切替えます。
飛行コース(黄線:設定コース 緑点:ウェイポイント)
※対地高度:50m サイドラップ率:70%
2) 基準点設置
撮影画像から作成する3Dモデルに位置情報を付与するために、基準点(GCP:Ground Control Point)を設置します。高精度の3Dモデルを作成したい場合は,トータルステーション(TS)や人工衛星を用いた測量(RTK-GNSS測量)が望ましいです。多少精度が落ちますが、地理院地図の緯度経度座標及び標高値を使用することもできます。
2014年は地理院地図の座標を用いていましたが、高精度な3Dモデルが欲しくなったので、トータルステーションで圃場四隅を計測しました。2015年以降はTS測量で取得した値を使用しています。
トータルステーション測量(2015年)
基準点は対地高度50mからでもが判読できるように設置します。材料はホームセンターで揃えることができます(約1,200円)。
基準点用の杭:テント用のプラスチック製ペグを使用(ホームセンターで購入:1本約100円×4本)
対空標識:直径30cmのプラスチック製の漬物落し蓋を使用(ホームセンターで購入:1枚約200円×4枚) ※判読しやすいように、油性マジックで塗装。
基準点+対空標識
3)飛行・撮影
ドローン撮影の基本は「下手な鉄砲も数撃てば当たる」です。無駄になっても構わないので、枚数を多く撮影していきます。機体の揺れなどによってピンボケが撮影されこともあるので、Richo GRでは最短インターバルの1秒で撮影します。Canon S110も同様に最短のインターバルで撮影します。ただし、Canon S110は標準機能にはインターバル撮影がないので、ロシアン・ファーム(ロシアで開発されたソフトを使った裏技)で機能を追加します。
3Dモデル作成には、ピンボケの撮影画像などは取り除きます。
上空から撮影中
次回、3Dモデル作成について説明します。
試験サイト周辺の3Dモデル
モニタリング見学
ブログを通して知り合った鹿児島の若手農家さんにドローンを用いた水稲モニタリングの紹介を行いました。
【前半】
- ドローンの自律飛行の設定や撮影カメラの仕様
- 撮影データの3D化(SfM-MVSソフト)
- GISによる生産管理
と多岐にわたる内容を解説しました。
【後半】
実際に圃場に出て、私が行っているモニタリングの流れに沿って、ドローンのデモフライトを実施しました。
- GCP(基準点)の設置
- 撮影時の注意
- ドローンの自律飛行など
年齢が近いこともあって、農業に対する思いや栽培方法の情報交換など非常に有意義な時間となりました。
また、他の地域の様子など情報を聞く機会が少なかったので、大変勉強にもなりました。
収量計算確定(2016年)
先日掲載した地上サンプリングからメッシュごとに単位面積あたりの玄米重量(g/㎡)を求めました。
単位面積当たりの玄米重量は、メッシュ内の株数・1株当たり平均茎数・1穂あたりの玄米重量から計算できます。
求めた玄米重量とNDVI(出穂期)の回帰分析から線形回帰式を求めます。
以下の式は、収量予測に用いた推定式になります。
【2014年】
Y = 968.42 × NDVI – 33.50
【2016年】
Y = 1822.2 × NDVI – 341.43
Y:単位面積あたりの玄米重量(g/㎡)
2016年推定式で計算した収量分布が下図になります。
収量マップ(2016年)
8月中旬に予測したマップと比較すると,分布傾向は似ていますが,多くのメッシュで数量が異なりました。
収穫1カ月前に予測した収量マップ(2016年)
※収穫1カ月前に予測した収量マップ(2016年)は、2015年の推定式を用いて作成しています。
収量検証(2016年)
計算で求めた収量:1461 kg
実際の収量:1437.5 kg
この結果から、2016年の推定式は1.6%の誤差で推定玄米収量を求めることができました。
2014年は5.3%の誤差がありましたが、年々精度は向上しています。