出穂期
出穂期・収量予測(2020年)
今年も昨年と同様に梅雨の長雨で梅雨明けが、平年より11日(昨年より8日)遅い8月1日となりました。梅雨明けが遅かったので、試験サイトでも2日遅い(5年間の平均)8月5日に出穂期を迎えました。
イネの開花(2020年8月5日撮影)
2014年からの水稲モニタリングの記録から、2020年は2016、2019年の積算日照時間・積算温度に近い傾向となっています。特に2020年の積算日照時間は過去のデータと比べると短く、最も長かった2018年の58%となっています。2020年の積算温度は1775.8℃と平均に近い値を示しました。これらの結果から、この地域におけるコシヒカリの出穂期までの積算温度の目安は1700℃ぐらいだと考えられます。
年 | 移植日 | 出穂期 | 日数 | 積算日照時間(h) | 積算温度(℃) |
2020 | |||||
2019 | |||||
2017 | 5月21日 | 7月30日 | 71 | 399.8 | 1697.6 |
2016 | 5月21日 | 8月4日 | 76 | 381.3 | 1774.5 |
2015 | 5月23日 | 8月3日 | 73 | 427.8 | 1742.1 |
2014 | 5月24日 | 8月3日 | 72 | 400.4 | 1714.0 |
Average | 5月21日 | 8月1日 | 72.0 | 387.2 | 1736.1 |
気象データは最寄りのアメダス地点:鳩山を用いて算出
出穂期のモニタリングも終えたので、2020年収量予測マップを作成してみました。今年は2019年に近似しているので、2019年の収量パラメータを使ってみたところ、以下のような結果となりました。
試験サイト全体の玄米収量予測 (ドローン): 1464 kg
10aあたり
収量予測(2019年)
2019年は梅雨の影響で、分げつ期〜幼穂形成期〜穂ばらみ期の日
(アメダス:鳩山地点を用いて作成)
移植日からの積算日照時間(2014~2019)
2016年の収量パラメータを使って、2019年の
試験サイト全体の玄米収量予測 (ドローン): 1502 kg
10aあたり
結果はもうすぐです。
出穂期(2019年)
8月4日前後に出穂期を迎えると予想しましたが、梅雨明け後の猛
イネの出穂(2019年8月2日撮影)
水稲モニタリングを始めてから記録を残すようにしていますが、2
年 | 移植日 | 出穂期 | 日数 | 積算日照時間(h) | 積算温度(℃) |
2019 | |||||
2017 | 5月21日 | 7月30日 | 71 | 399.8 | 1697.6 |
2016 | 5月21日 | 8月4日 | 76 | 381.3 | 1774.5 |
2015 | 5月23日 | 8月3日 | 73 | 427.8 | 1742.1 |
2014 | 5月24日 | 8月3日 | 72 | 400.4 | 1714.0 |
Average | 5月20日 | 8月1日 | 73.0 | 404.7 | 1729.5 |
積算日照時間のデータからでも、今年の梅雨の長雨で出穂期までの日照時間が低くなっています。また、積算日照時間・積算温度の傾向としては2016年に類似していることがわかります
出穂期(2018年)
今年の出穂期は昨年より3日早い7月27日(移植日から70日:例年は73日)になりました。幼穂長の測定結果から出穂期は7月31日前後になると予想していましたが、実際に圃場内の4~5割の穂が出穂したのは、この日になりました。
次々に出穂
昨年までの気象データでは、この地域で栽培するコシヒカリは移植してから出穂するまでに、日照時間:約400(h)・積算温度:約1700(℃・day)必要であると考えていました。2017年も出穂期までは猛暑が続きましたが、今年はそれ以上です。2014年からの記録を見てみると、今年の積算日照時間は約80(h)多くなっています。一方で、積算温度は約1700(℃・day)と過去のデータとほぼ同じ値を示しました。イネの出穂期の目安になるのは、日照時間より積算温度(ここでは、最寄りのアメダス地点の日平均気温)が有効なのかもしれません。
移植日~出穂日の積算日照時間・積算温度
年 | 移植日 | 出穂期 | 日数 | 積算日照時間(h) | 積算温度(℃) |
2018 | 5月19日 | 7月27日 | 70 | 480.9 | 1699.0 |
2017 | 5月21日 | 7月30日 | 71 | 399.8 | 1697.6 |
2016 | 5月21日 | 8月4日 | 76 | 381.3 | 1774.5 |
2015 | 5月23日 | 8月3日 | 73 | 427.8 | 1742.1 |
2014 | 5月24日 | 8月3日 | 72 | 400.4 | 1714.0 |
Average | 5月21日 | 8月2日 | 72.4 | 396.1 | 1711.3 |
以前にも書きましたが、出穂期のモニタリングデータは、収量、タンパク質含有率や収穫適期の推定に利用します。これらの推定結果は次回以降に紹介します。
茎から穂を出し始めたイネ
収量予測・・・減収の見込み
8月に入ってから、オホーツク海高気圧からの「やませ」が関東地方まで流れ込んでいるため、埼玉県も日照不足となっています。東北の太平洋側(岩手県、宮城県、福島県)では、平年を大きく下回っていることから、いもち病の心配があるそうです。
試験サイト周辺の日照不足を定量的に見るために、最寄りのアメダス地点:鳩山の日照時間を8月1日~20日までまとめてみました。今年の8月1日~20日間の日照時間は36.1時間と平年の34.5%と大きく下回っています。出穂期からの日照時間は収量・食味に大きく影響します。気象庁によると8月下旬からは平年並みに戻る見込みだそうなので、晴れることを祈ります。
8月1日~20日までの積算日照時間(2014~2017)
今年も収量予測をしてみました。使用するのは7月30日の出穂期のデータになります。ただし、生育が順調に進んだ出穂期のデータなので、それ以降の日照不足を反映していません。そのため、ここで推定する値は日照不足がなかった場合の値になります。ちなみに、平年並みの日照時間があった2016年の収量結果はこちらから閲覧できます。
試験サイト全体の玄米収量予測 (ドローン): 1474 kg
8月の日照不足を考慮にいれると、この求めた推定値(玄米収量1474kg)の約20%の減収(玄米収量1180kg)になると考えています。
今年の収量から解析して得られる「単位面積あたりの収量とNDVIの相関式」は冷夏用のパラメータとして、今後の栽培に活かせるはずです。農業技術が進んでも、天候次第で収量・品質が大きく左右されるのは昔から変わりません。
出穂期(2017年)
昨年は8月4日に出穂期となりましたが、今年は天候の影響もあって7月30日に出穂期を迎えました。昨年より5日ほど早くなっています。
穂の上部から次々に開花している様子(2017年7月30日撮影)
出穂期のバラツキが気になったので、移植~出穂の期間(2014~2017年)の気象データをまとめてみました。気象データは最寄りのアメダス地点:鳩山(直線距離:4.8km)の日照時間と気温を使用しています。
移植日~出穂期までの積算日照時間・積算温度
その結果、この地域でコシヒカリが移植してから出穂するまでに、日照時間:約400(h)・積算温度:約1700(℃)※必要であると考えられます。もちろん、この数値は地域差があるので、どこでも適応できる数値ではないと思いますが・・・これまでの既往研究について調べないといけません。
※積算温度は日平均気温を積算して計算しています。
移植日~出穂日の積算日照時間・積算温度
年 | 移植日 | 出穂期 | 日数 | 積算日照時間(h) | 積算温度(℃) |
2017 | 5月21日 | 7月30日 | 71 | 399.8 | 1697.6 |
2016 | 5月21日 | 8月4日 | 76 | 381.3 | 1774.5 |
2015 | 5月23日 | 8月3日 | 73 | 427.8 | 1742.1 |
2014 | 5月24日 | 8月3日 | 72 | 400.4 | 1714.0 |
Average | 5月22日 | 8月3日 | 73 | 396.1 | 1711.3 |
冒頭にも書きましたが、今年は7月30日に出穂期を迎えましたが、移植してから出穂までの日数は71日で、4年間の観測結果からみても特段早いわけでもありませんでした。昨年は天候不順で出穂が遅くなり、ちょうど例年の出穂期に当てはまっただけでした。自分の頭の中では、例年の出穂日の印象が強いため、今年の生育が早まっていると思い込んでいました。数字で見ると、ほぼ例年通りに生育していることがわかります。
試験サイトにおける1株当たりの茎数の時系列変化
出穂期以降もこのまま順調に生育すれば、従来から言われているように疎植しても収量は減少しないと思われます。ただ、2年連続台風による冠水が発生しているので、今年も心配です。
収量計算確定(2016年)
先日掲載した地上サンプリングからメッシュごとに単位面積あたりの玄米重量(g/㎡)を求めました。
単位面積当たりの玄米重量は、メッシュ内の株数・1株当たり平均茎数・1穂あたりの玄米重量から計算できます。
求めた玄米重量とNDVI(出穂期)の回帰分析から線形回帰式を求めます。
以下の式は、収量予測に用いた推定式になります。
【2014年】
Y = 968.42 × NDVI – 33.50
【2016年】
Y = 1822.2 × NDVI – 341.43
Y:単位面積あたりの玄米重量(g/㎡)
2016年推定式で計算した収量分布が下図になります。
収量マップ(2016年)
8月中旬に予測したマップと比較すると,分布傾向は似ていますが,多くのメッシュで数量が異なりました。
収穫1カ月前に予測した収量マップ(2016年)
※収穫1カ月前に予測した収量マップ(2016年)は、2015年の推定式を用いて作成しています。
収量検証(2016年)
計算で求めた収量:1461 kg
実際の収量:1437.5 kg
この結果から、2016年の推定式は1.6%の誤差で推定玄米収量を求めることができました。
2014年は5.3%の誤差がありましたが、年々精度は向上しています。
出穂期
今年は8月4日に出穂期を迎えました。ほぼ例年通り(8月3日前後)です。
出穂期は全体の4~5割程度の穂が出穂した時期になります。
稲が出穂すると、次々に穂の上部から開花していきます。
開花している時間はおよそ2時間程度です。その間に、おしべの先から花粉が飛び散り受粉(自家受粉)し、受粉が終わると30分程度で花は閉じます。
開花の様子(2016年8月4日撮影)
2014年から実施している水稲モニタリングで得た知見では、出穂期以降のモニタリング情報によって以下のようなことがわかってきました。
・収量推定:出穂期に取得したNDVI
・タンパク質含有率推定(食味):出穂期から約2週間までに取得したNDVI
さっそく、今年もデータ整理ができ次第、推定してみたいと思います。
今年は、株間を18cmで移植しました(昨年まで株間16cm)。
週一のドローンによるモニタリングと同時に、地上では草丈・茎数の調査も実施しています。
1株あたりの茎数は、2014年15.5本、2015年17.5本でしたが、今年は茎数は20.3本となっています。株間の間隔を広くしたことが影響していると思います。
試験サイトにおける1株当たりの茎数の時系列変化
1株当たりの茎(2016年8月4日撮影)
今年は昨年より茎の見た目が違い、茎がしっかりとした太さとなっています。
出穂前の草刈り
この地域の出穂期は例年8月上旬になります。
出穂期頃にはカメムシ類が水田に侵入し、籾の美味しいところを吸い取ってしまい、斑点米が発生してしまいます。そのため、出穂2週間前ごろには、畦畔等の雑草は刈り取らなければいけません。
今シーズンになって3回目の草刈りになります。雑草の生育スピードはものすごく、1日あたり数cmぐらいの勢いで生育します。
草刈りがなくなるだけで労力はかなり軽減できるのですが...余分な除草剤も使いたくないので、しばらくは草刈りを実施します。