2016年栽培
リモセン学会発表資料
11月に行われた日本リモートセンシング学会の発表資料になります。
要旨はこちらから見ることができます。
- 水稲の群落表面温度は一様ではなく、ばらつきをもって分布している。
- 群落表面温度のばらつきはNDVIと対応しており、相対的に群落表面温度の低温域でNDVIが高くなり、反対に高温域ではNDVIが低い値を示す。
- 群落表面温度とNDVIの時間変化は、日中の時間帯で明瞭な相関を示す。
- 群落表面温度のばらつきは、玄米重量にも影響を及ぼす。
- 今回の観測で、掛け流しによって群落表面温度が約3℃低下することが確認できた。
収量計算確定(2016年)
先日掲載した地上サンプリングからメッシュごとに単位面積あたりの玄米重量(g/㎡)を求めました。
単位面積当たりの玄米重量は、メッシュ内の株数・1株当たり平均茎数・1穂あたりの玄米重量から計算できます。
求めた玄米重量とNDVI(出穂期)の回帰分析から線形回帰式を求めます。
以下の式は、収量予測に用いた推定式になります。
【2014年】
Y = 968.42 × NDVI – 33.50
【2016年】
Y = 1822.2 × NDVI – 341.43
Y:単位面積あたりの玄米重量(g/㎡)
2016年推定式で計算した収量分布が下図になります。
収量マップ(2016年)
8月中旬に予測したマップと比較すると,分布傾向は似ていますが,多くのメッシュで数量が異なりました。
収穫1カ月前に予測した収量マップ(2016年)
※収穫1カ月前に予測した収量マップ(2016年)は、2015年の推定式を用いて作成しています。
収量検証(2016年)
計算で求めた収量:1461 kg
実際の収量:1437.5 kg
この結果から、2016年の推定式は1.6%の誤差で推定玄米収量を求めることができました。
2014年は5.3%の誤差がありましたが、年々精度は向上しています。
どろーん米品質診断結果(2016年)
今年から出荷用「どろーん米」の食味値の分析を行います。
この品質診断は、今まで実施してきたメッシュごとのサンプリングではなく、圃場全体の結果になります。
メッシュごとにサンプルした水稲の品質診断は、手作業で脱穀→籾摺り等の準備をするため大変時間がかかります。
※分析用の準備が出来次第、毎年お願いしている女子栄養大学に分析してもらう予定です。
そこで、今回は迅速に診断を行うため、30kgの米袋に保管している玄米から300gを抽出し、食味値の分析を依頼しました。
その結果、どろーん米の食味値は81点(100点満点)を獲得しました。
食味値とは、お米のおいしさを数値化した指標です。お米の中に含まれる4つの成分(アミロース、タンパク質、水分、脂肪酸度)を分析し、100点満点で評価します。
一般的に、国内産の標準の食味値は65~75点となります。なお、80点以上のお米は美味しい米として評価されています。ブランド米で有名な「魚沼産コシヒカリ」は90点以上になるそうです。
表 食味計測定結果(2016年産どろーん米 玄米:コシヒカリ)
測定機種:サタケRCTA11A
※玄米タンパク質含有率が予想より高い数値を示しました。今までは理化学分析による測定でしたが、今回は近赤外による測定なので、その違いが出たかもしれません。
収量結果(2016年)
2016年の収量は10a当たり465 kgとなりました。圃場全体では、1440 kg(屑米を除く)です。
ドローン水稲モニタリングを始めて3年目になりますが、1年目と比べると収量は約20%の増加になりました。また、お米の美味しさの指標となる玄米タンパク質含有率も2015年では約6.1%と日本人が好むやわらかいご飯になっています。2016年はこれから分析です。
ちなみに、一般的な玄米のタンパク質含有率は6.8%とされており、タンパク質含有率が低いほどやわらかいご飯となり、数値が高いとしっかりとした硬いご飯となります。
ドローン水稲モニタリングの成果(2014-2016)
ドローン水稲モニタリングの導入1年目は、これまで行っていた「勘と経験」の水稲栽培の問題点を洗い出しました。2年目以降は浮かび上がった問題点を改善するような栽培を行うことによって、収量・食味の向上に結び付けることができました。収量・食味UPにつなげるためには、単年だけではなく、複数年のモニタリングが必要です。
収穫前に予測した収量(8月19日)は、地上観測による予測1520kg、ドローンによる予測1570kgでした。地上観測の予測値が実測と近い結果となりましたが、両者とも約10%の誤差の範囲内に収まっています。
ドローンによる予測は、2015年のパラメータをそのまま利用したのが誤差を大きくした要因ではないかと考えられます。
今年は株間(16cm→18cm)を変更した影響も考えられるので、様々な状況下のパラメータを取得することによって、今後の予測精度の向上を図りたいと思います。
農作業も一段落した農閑期は、2016年のモニタリングで得たデータを詳細に解析する期間です。
出荷
注文いただいた「どろーん米」を発送いたしました。
注文していた米袋も届き、今年は下の写真のようなデザインで出荷いたします。
平成28年どろーん米(5kg)
米袋はお米の水分を保ち、乾燥による重量の変化を防ぐ保湿タイプを使用しています。
籾摺り&袋詰め
コンバインで刈り取った籾は乾燥機で水分15%まで落としていきます。条件によって異なりますが、乾燥時間は大体6~8時間程度です。
*刈り取った籾は約26%の水分がありました。
乾燥させた籾は、籾摺り機に移します。籾摺り機では、籾殻と玄米に分別します。また、小粒や未成熟の玄米は出荷用には適さないので、この段階ではじかれます。
左側が乾燥機、右側が籾摺り機
出荷用の袋は1袋30kgになります。ちなみに、1俵は2袋分の60kgになります。
今年の成果(手前側はどろーん米、奥側はJA出荷用)
今年の収量は、約93袋(2817.5kg)でした。くず米も合わせた総量は2977.5kgとなります。
予想した収量の答え合わせは、後日紹介します。
どろーん米(コシヒカリ) 新米
一通りの作業が終わった日の夕食は、収穫したばかりの「どろーん米」を美味しくいただきました。
稲刈り
10日・11日は雨が降らなかったので、予定通り稲刈りを実施することができました。
収穫直前の稲
収穫の流れは、コンバインによる稲刈り → コンテナで乾燥機まで移送 → 収穫した籾の乾燥 → 籾摺り → 袋詰め になります。
乾燥機に張り込みできる量が決まっているので、乾燥機の様子を見ながらの稲刈りになります。
我が家の圃場は、ドローンによるモニタリングを行っている試験サイト(約3反)とそれ以外に1反と2反の圃場があるため、毎年2日以上の日数がかかります。
試験サイトの刈り取り
完全に倒伏してしまった稲(品質低下している)はコンバインによる刈り取りは難しいので、事前に鎌で刈り取り、コンバインとは別にしました。
倒伏箇所の稲刈り
コンバインからコンテナに移す作業
昨年は収穫直前の氾濫によって収穫時は土埃が大変でしたが、今年は冠水してから雨が多かったので、籾についていた土などは洗い流されて、土埃はそれほどひどくありませんでした。
コンテナ内の籾
コンバインの調子があまりよくなく、JAに連絡したところ、10~20分後には現場に来てもらいました。このあたりのサポートはさすがですっ!!
収穫は天気との相談なので、すぐにサポートしてもらえると安心して作業を行えます。
倒伏進行中・・・
前回の記事から「どろーん米(コシヒカリ)」の倒伏が進んでしまいました。
倒伏リスク診断でリスクありの箇所が中心です。診断が当たったのはよかったのですが...ちょっと複雑な心境です。
週末(10・11日)の稲刈りまであと僅かの時間ですが、台風13号(MALOU)の接近が心配です。
9月3日に実施したモニタリング結果を紹介します。
2016年9月3日撮影 オルソ画像(紫線は倒伏エリア(軽度~重度を含む))
倒伏リスク診断マップに倒伏エリア(160903時点)の重ね合わせ
倒伏リスクが高い赤色を中心に、重度の倒伏傾向が見られます。
上空50mからの撮影画像:ハート型倒伏
(クリックすると大きい画像が開きます)