P4M
DJI主催:P4 Multispectral セミナーシリーズ(第1回)
昨年はDJIのP4Mの共同研究で水稲モニタリングを実施しました。そのDJIからP4Mのセミナーを3月19日にオンライン開催することが決まりました。
今回は第1回目で、基礎編(失敗しない撮影方法・データ処理方法)を取り上げるそうです。下記から登録できますので、P4Mに興味がある方はご参加いただければと思います。
DJI主催:P4 Multispectral
セミナーシリーズ第1回目 基礎編 〜失敗しない撮影方法・データ処理方法〜
2021年3月19日(金) 午後2時~3時
https://register.gotowebinar.
P4Mによるモニタリング指標の動画撮影
2020年8月6日にP4M(P4 Multispectral)ファームウェアのバージョンアップがありました。今回のバージョンアップによる主な追加機能は、ライブビュー画像を動画として記録できるところです。
それまでは、P4Mが撮影している画像をiPad上でリアルタイムに表示(RGBやNDVIなど様々なモニタリング指標の選択が可能)するだけでした。そこに、今回は動画として記録できるようになりました。
さっそく、RGB・NDVI・GNDVI・NDREを動画で撮影してみました。※今回のバージョンアップで、表示できるカラーの種類の追加やカラースケールの範囲設定ができるようにもなっています。
P4Mによるモニタリング指標の動画撮影
動画機能を試した結果、動画でも生育状況の違いを詳細に判断できることを確認できました。また、モニタリングによる解析を行うときには静止画が最適なのですが、現場でのデモやプレゼンの資料作成には静止画にはない動画の魅力を感じました。
P4Mの画像解析
DJIから貸与してもらったP4Mを使って、実際に圃場のモニタリングを始めてみました。
P4Mは、RGBカメラと、ブルー・グリーン・レッド・レッドエッジ・近赤外線の波長帯を撮影できるマルチスペクトルカメラが一体となっています。また、P4Mの機体上部には日照センサーが取り付けられています。
P4M上部に取り付けられている日照センサー(DJI HPより)
農作物のモニタリングにとって、飛行時の気象条件を把握することは重要です。晴天の場合、撮影する時間によってNDVIが大きく変動します。そのため、モニタリング精度を向上させるためには日照センサーが大切になってきます。
実際にP4Mで撮影をすると、JPGファイルと5つのTIFFファイルが生成されます。
DJI_0010.JPG(RGB、1600×1300ピクセル)
DJI_0011.TIF(ブルー(B):450nm±16nm、1600×1300ピクセル)
DJI_0012.TIF(グリーン(G):560nm±16nm、1600×1300ピクセル)
DJI_0013.TIF(レッド(R):650nm±16nm、1600×1300ピクセル)
DJI_0014.TIF(レッドエッジ(RE):730nm±16nm、1600×1300ピクセル)
DJI_0015.TIF(近赤外(NIR):840nm±26nm、1600×1300ピクセル)
※4桁の数字の下1桁(赤太字)で、どの波長帯の画像かわかります。
現在(2020/8/7時点)、P4Mの画像に直接対応しているソフトは、DJI Terra とPix4Dfields になります。私が使用しているMetashape(旧PhotoScan)はP4Mには現時点では対応していません。
よく間違えやすいのが、日照センサーが機体に取り付けられているので、撮影された画像は日照センサーの情報が既に反映されていると思いがちです。しかし、日照センサーの情報はXMPメタデータに記録されているだけなので、P4Mに対応していないMetashapeを利用する場合は事前にこれらのメタデータを用いて補正する必要があります。DJI Terra とPix4Dfields はP4Mに対応しているので、ソフト上で自動的に補正してくれます。
P4MのXMPメタデータは、DJIからP4 Multispectral Image Progressing Guide v1.0 が公開されています。
下図は、P4Mで撮影されたTIFFデータをそのままMetashapeに読み込んで作成したオルソ画像(トゥルーカラー)とNDVI画像です。
補正前のオルソ画像(トゥルーカラー)と補正前のNDVI(2020年6月6日撮影)
シャッタースピード、ISOなどが変化している画像をそのまま読み込んでいるため、明度の違いが発生しています。さらに、NDVIを計算すると、その影響によって明らかにおかしなマップになってしまいます。
次は、XMPメタデータに記録されている日照センサーなどの情報をもとに画像を補正し、Metashape(旧PhotoScan)でオルソ化した画像から計算したNDVIマップを示します。
補正した画像から計算したNDVI
補正した画像を用いることで、上図のNDVIマップのおかしな箇所が修正されていることが確認できます。これらの結果から、MetashapeでP4Mの画像を利用する場合は、事前に画像の補正が必要なことがわかります。
参考文献
濱 侃・田中 圭・田 寛之・近藤昭彦(2018):ドローンに搭載可能な近赤外カメラの比較と検討:RedEdge とYubaflex,日本リモートセンシング学会誌,38(5),pp.451-457.
水稲株位置抽出(移植版)
水稲株位置の抽出は以前にも紹介しました。以前紹介した方法は、苗がある程度生長した(草丈35cm程度)状態の空撮画像から水稲株の位置を抽出するので、「移植」だけではなく「直播」にも対応できました。今回は、移植に特化した水稲株位置の抽出方法を紹介していきます。
まず、重要なのは田植機の株間の設定が何cmなのか知る必要があります。株間は田植機で設定できます。私のところでは、2016年から株間設定を21cmとしています。ちなみに、条間(苗を植えつけた列の幅)は固定されて30cmとなっていますが、北海道では33cmとなっているそうです。
今回試した解析方法
1)苗と水面がはっきり区別できる近赤外オルソ画像を用意します。
今回は、2020年6月21日(移植から30日)にP4Mで空撮した画像を使用してみました。
近赤外オルソ画像(上空50mからP4Mで撮影)
2)撮影した近赤外オルソ画像をQGISで表示し、基本となる条(列)をラインでトレースしていきます。
トレースするラインは、5条植えの場合は真ん中、4条植えなら端の条でもいいかもしれません。なお、スタート地点とゴール地点は位置抽出に重要な地点になるので、慎重にトレースしてください。
5条植え田植機のため、真ん中の条をトレース(紫線)
3)基本となるラインを全てトレースしたら、今度は30cmごとのバッファでラインを複製します。試験サイト(37m×88m(32a))では、全部で132条(枕地10条含む)となりました。
基本トレースラインから30cmのバッファラインを生成
4)圃場全体にトーレスされた条から、次は田植機の設定した株間でポイントを生成していきます。QGISの「QChainage」というプラグインが便利です。このプラグインは、ラインから等間隔にポイント生成してくれます。試験サイトの全132条のラインから21cmごとにポイントを生成します。
「QChainage」で21cmの等間隔にポイントを生成
5)所々に欠株があるので、そのようなポイントは取り除いていきます。出来たポイントと近赤外オルソ画像を重ね合わせ、その場所のDN値を取得していきます。この時、水面に近いDN値のポイントは一斉に削除します。その結果、苗がある株だけを抽出することができます。
水稲株のみを抽出した結果
2020年における試験サイトに植えた苗は全体で50,206株になりますが、実際は欠株もあり48,621株となりました。試験サイト全体の欠株率は3.2%となります。今回は育苗箱に蒔く種籾の量が少なかったのが要因かもしれません。次年度への反省点です。
これらの水稲株にはユニークIDを割り当てていますので、株単位で管理することもできます(実際に運用するとなると作業時間が増えてしまいますが・・・)。
P4Mで空撮を実施しましたが、ドローンとカメラの一体型は操縦なども含めて、全ての面において楽でした。空撮画像もピンぼけがなく、水稲株の位置抽出にも問題ありませんでした。
Phantom プロポ
P4MのフライトにはiPad専用アプリのGS Pro(DJI)が必要になります。そのため、手元にあるiPad Pro(10.5インチ)にインストールしました。P4Mのプロポには、モバイルデバイスを設置できるホルダーが付いているので、そこにiPadを取り付けます。
ところが、ここで問題が発生しました
モバイルデバイスホルダーの最大幅が170 mm までとなっていました。iPad Proの幅は174.1 mm とわずかばかりオーバーしています。ちょっと力を入れて取り付けるとギリギリ入ります。しかし、毎回この作業をするのはプロポにも負担がかかってしまいます。
ネットで調べてみると、拡張マウントというアイディア商品がありました。世の中、同じように困っている人がいるみたいです。さっそく、Amazon(送料無料で899円)で購入しました。中国から配送するとのことで商品到着まで約2週間かかりました。
拡張マウント
中国から直接届く商品は、だいたい箱が潰れてきます。中身はプラスチックの塊なのですが、大きいiPadユーザには便利な商品です。
拡張マウント・iPad Proを装着したプロポ
これで、プロポの負担やデバイスを取り付けるわずらわしさもなくなりました。
P4M(P4 Multispectral)
今年のモニタリングには、新たなドローンを投入することができました。
モニタリング界隈で話題となっているDJIのP4M(P4 Multispectral)です。
P4 Multispectral(DJIから貸与)
DJIと共同研究ということで、P4Mを貸与していただくことになりました。
P4MのフライトにはiPadおよび無償アプリのGS Pro(一部機能は有償)が必要で、アプリ上で事前にコースやカメラのパラメータなど細かい設定ができます。
まずは、それぞれのセンサー(自作の近赤外カメラ、Yubaflex、P4M、地上センサ)の特徴を把握したいと思います。