近赤外

水稲株位置抽出(移植版)

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水稲株位置の抽出は以前にも紹介しました。以前紹介した方法は、苗がある程度生長した(草丈35cm程度)状態の空撮画像から水稲株の位置を抽出するので、「移植」だけではなく「直播」にも対応できました。今回は、移植に特化した水稲株位置の抽出方法を紹介していきます。

まず、重要なのは田植機の株間の設定が何cmなのか知る必要があります。株間は田植機で設定できます。私のところでは、2016年から株間設定を21cmとしています。ちなみに、条間(苗を植えつけた列の幅)は固定されて30cmとなっていますが、北海道では33cmとなっているそうです。

 

今回試した解析方法

1)苗と水面がはっきり区別できる近赤外オルソ画像を用意します。
今回は、2020年6月21日(移植から30日)にP4Mで空撮した画像を使用してみました。

近赤外オルソ画像(上空50mからP4Mで撮影)

 

2)撮影した近赤外オルソ画像をQGISで表示し、基本となる条(列)をラインでトレースしていきます。
トレースするラインは、5条植えの場合は真ん中、4条植えなら端の条でもいいかもしれません。なお、スタート地点とゴール地点は位置抽出に重要な地点になるので、慎重にトレースしてください。

5条植え田植機のため、真ん中の条をトレース(紫線)

 

3)基本となるラインを全てトレースしたら、今度は30cmごとのバッファでラインを複製します。試験サイト(37m×88m(32a))では、全部で132条(枕地10条含む)となりました。

基本トレースラインから30cmのバッファラインを生成

 

4)圃場全体にトーレスされた条から、次は田植機の設定した株間でポイントを生成していきます。QGISの「QChainage」というプラグインが便利です。このプラグインは、ラインから等間隔にポイント生成してくれます。試験サイトの全132条のラインから21cmごとにポイントを生成します。

「QChainage」で21cmの等間隔にポイントを生成

 

5)所々に欠株があるので、そのようなポイントは取り除いていきます。出来たポイントと近赤外オルソ画像を重ね合わせ、その場所のDN値を取得していきます。この時、水面に近いDN値のポイントは一斉に削除します。その結果、苗がある株だけを抽出することができます。

水稲株のみを抽出した結果

 

2020年における試験サイトに植えた苗は全体で50,206株になりますが、実際は欠株もあり48,621株となりました。試験サイト全体の欠株率は3.2%となります。今回は育苗箱に蒔く種籾の量が少なかったのが要因かもしれません。次年度への反省点です。

これらの水稲株にはユニークIDを割り当てていますので、株単位で管理することもできます(実際に運用するとなると作業時間が増えてしまいますが・・・)。

P4Mで空撮を実施しましたが、ドローンとカメラの一体型は操縦なども含めて、全ての面において楽でした。空撮画像もピンぼけがなく、水稲株の位置抽出にも問題ありませんでした。

 

簡易NDVIカメラ

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コロナ禍の影響で社会経済が暗くなってきてモニタリングどころではないかもしれませんが・・・少しでも役立てられるような情報を紹介していきます。

今回は自作できる簡易NDVI(近赤外)カメラです。
3年前に作ったカメラですが、シーズンを通したモニタリングではいろいろ課題事項が多いため、現在はお蔵入りしています。しかし、生育状況の相対的な分布傾向を見るのには問題はありません。

生育状況を把握する指標としてNDVIがよく用いられています。現在では、P4 Multispectral(P4M)やRedEdge、Sequoiaなどのカメラが市販されています。これらカメラの特徴は複眼カメラということです。1回のシャッターで可視光(RGBバンド別)、レッドエッジ、近赤外を同時に取得できます。

 

私がドローン水稲モニタリングを始めた年はGopro3を2台用意して、可視光と近赤外を同時に撮影してNDVIを取得していました。ある意味複眼レンズですが・・・。ただ、別々のカメラで撮影した被写体の位置合わせは、photoshopを使って手作業で調整していたのでモチベーションが高い時は苦にならないのですが・・・ルーチンになってしまうと作業自体が苦痛でした。この経験から手作業部分を減らし、モニタリングを効率的にしなければならないということを学びました。

話が脱線してしまいましたが、市販されている近赤外カメラは現在でも高価なカメラ(数十〜百万円)です。そういった背景もあり、簡易NDVI(近赤外)カメラを自作してみました。

 

用意する機材は、10年ぐらい前に流行した3Dレンズ対応カメラと3Dレンズです。これを改造していきます。

機材

3Dレンズ対応カメラLUMIX(Panasonic:DMC-GM1)中古2万円で購入
3DレンズLUMIX G 12.5mm / F12(Panasonic)新品1万円で購入
レンズガードハクバ :SMC-PRO(1500円) 焦点距離の調整用
ガラスカッタレンズをカットするため(1200円)
IRフィルタ富士フイルム(1500円)

 

3Dレンズで撮影すると視差のある左眼用と右眼用画像が出力されます。これを赤青メガネで見ると立体的に感じることができます。

アナグリフの原理(引用先

 

簡易NDVI(近赤外)カメラに改造するためには、片方を可視光で撮影し、もう一方を近赤外で撮影できればOKです。今回使用したLUMIXのカメラ本体には近赤外を遮断するローパスフィルタが取り付けられています。まずは感電しないように慎重にネジを外し、本体を分解していきます。ローパスフィルタを取り外せたら、もとの姿に戻します。以前紹介したS110の改造ではIR 78フィルタをカメラ本体のイメージセンサの前に取り付けましたが、今回は違うので注意してください。

DMC-GM1+LUMIX G 12.5mm / F12(Panasonic)

 

次に、3Dレンズ側の改造です。ローパスフィルタを取り外した状態では可視光から近赤外までの幅広い波長を撮影することになってしまいます(赤みの強い画像)。そこで取り外したローパスフィルタをレンズの片方に取り付けます。そうすることで通常の可視光の画像が撮影できます。もう一方にはIRフィルタを付ければ近赤外の画像を取得できます。

(左:近赤外画像・右:ローパスフィルタを取り外した状態の可視光画像)

ガラス板で焦点距離を調整していない画像

 

フィルタだけではピントが合わないので、焦点距離を調整するためのガラス板(ガラスカッターで適度の大きさにカット)を挟んでグルーガンで固定します。

ローパスフィルタを取り除いたカメラ本体とそのローパスフィルタとIRフィルタを取り付けた3Dレンズ

 

3Dモードで撮影するとmpoという拡張子で記録されます。あまり聞き慣れない拡張子ですが、フリーソフトの「ステレオフォトメーカー」を使うことで可視光と近赤外の別々のjpgファイルに変換できます。

(左:近赤外画像・右:可視光画像)

上空から撮影した出穂期における水稲画像(2017年7月30日撮影)

 

複眼カメラであるため、右と左の画像は若干位置はズレてしまいますが、SfM-MVS処理で位置ズレ問題は解決できます。位置が合った可視光および近赤外のオルソ画像からバンド間演算でNDVIを求めます。

(左:近赤外画像・右:可視光画像)

出穂期におけるオルソ画像(2017年7月30日撮影)

  

出穂期におけるNDVI

 

一見難しそうな複眼カメラでも市販されている機材を使って改造すれば、1度に可視光と近赤外が撮影できる簡易NDVI(近赤外)カメラを自作できます。ただし、カメラを分解するとメーカー保証が受けられなくなるので注意してください。改造は自己責任です。

 

水稲株位置抽出(QGIS)

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水稲株の位置抽出は、移植後1ヶ月の状態(草丈35cm程度)がデータ取得のベストとなります(株間によってベストな草丈は変わります)。草丈が低いと上空から撮影しても、苗が明確に撮影できないため、株位置の抽出は難しくなります。一方、草丈が高くなると、葉同士が重なってしまい、株位置がわからなくなってしまいます。この作業は、モニタリングのタイミングが一番重要になります。

株位置の抽出方法は、以前の記事(水稲株の位置抽出欠株率)でも紹介しましたが、問い合わせも多かったので、QGISの操作について説明を加えます。※QGISのバージョンによって、説明が若干異なる場合もあります。

 

1) 近赤外カメラ撮影画像の表示

近赤外の波長域は植物からの反射は強く、水面の反射はほとんどないため、苗と水面を明確に判別することができます。

反射特性(引用:JAXA)

 

近赤外オルソ画像

 

近赤外オルソ画像を表示したら、ローパスフィルタ処理を行います。ローパスフィルタは、苗と水面以外に写っているノイズを除去する工程になります。ノイズが少なければ、ローパスフィルタ処理を行わなくても構いません。

 

2) ローパスフィルタ処理

【QGIS】 ビュー > パネル > ツールボックス > GRASS GIS > Raster > r.mapcalc

ローパスフィルタの計算式

 

上図のように、3×3の窓で平滑化していきます。数値を変更することでノイズ除去の程度を変えることができます。

 

3) フォーカル統計(指定した近傍内の統計情報を計算)

【QGIS】 ビュー > パネル > ツールボックス > GRASS GIS > Raster > r.neighbors

フォーカル統計のパラメータ入力画面

 

3) ラスタ-ベクタ変換

【QGIS】 ラスタ > 変換 > ポリゴン化(ラスタのベクタ化)

ラスタ-ベクタ変換

 

※処理時間がかかる場合は、圃場外部分の画像を削除するなど、画像サイズをなるべく小さくしてみてください。

 

4)不要ポリゴンデータの削除

ラスタ-ベクタ変換によって、値ごとにポリゴンデータが作成されます。このポリゴンデータには、水稲株以外も含まれています。そこで、ポリゴンデータのDN値(フォーカル統計の数値)を使って、不要ポリゴンを削除します。このときのDNの閾値は、カメラ種類や撮影条件などによって異なるので、画面を見ながら値を自分で見つけ出してみてください。

黄色が水稲株として選択(DN110以上)したポリゴン、黄緑色はそれ以外のポリゴン

 

5)ポイント化

【QGIS】 ベクタ > ジオメトリツール > ポリゴン重心

ポリゴン(重心) → ポイント

 

ノイズを取り除いた水稲株のポリゴンからそれぞれの重心を求め、その位置を水稲株として扱うことができます。

水稲株位置(赤)

 

この一連の処理は、データサイズが大きいオルソ画像を用いるため、非力なPCだと時間がかかったり、処理途中に落ちることもあります。その場合は、データを分割するなどの工夫が必要となります。

 

現代農業(5月号)

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2018年5月号の現代農業では、「ドローン&近赤外カメラで空から管理(下)」というタイトルで近赤外カメラを自作するという内容を書きました。

現代農業(2018年5月号)

 

ブログでも紹介している内容に改造時の写真とウンカ被害の空撮画像(鹿児島県伊佐市の若手農家さん撮影)を追加しています。

今月号の現代農業で興味深い記事がありました。農機メーカー突撃取材ヤンマーアグリ(株)編の中で、リモートセンシングなど先進的な技術の導入を対象としている農家規模は、20町歩以上の面積を耕作する農家だそうです。しかし、20町歩以上の面積となると、家族経営の農家では導入は難しいですね。ビジネスとして費用対効果を考えると仕方がないかもしれません。

 

現代農業

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久しぶりの更新です。

今月発売の現代農業(2018年4月号)に、「ドローン&近赤外カメラで空から管理(上)」というタイトルで記事を書きました。今回は、ドローンの自作に挑戦するという内容です。

現代農業(2018年4月号)

 

記事でも紹介していますが、自作ドローンの部品調達は中国のネットショッピングサイト「AliExpress(アリエクスプレス)※」をよく利用しています。国内のサイトより部品の取り揃えが豊富で価格も安いのが特徴です。ただ、日本語が自動翻訳のためか意味がわからないところもあります。

AliExpressのサイト

 

※AliExpressは中国のアリババ(ソフトバンクの孫正義社長が出資して急速に成長した世界的な企業)が運営するネットショッピングサイト

紙面の都合上、自作ドローンの調達リストを掲載することができなかったので、ここで紹介します。自作のヘキサコプターは約6万円で部品調達することができます。モニタリング用ドローンであれば、この内容で十分です。日本では,高い価格がいい商品という風潮がありますが、本当に必要な機能だけに絞れば、安価でもいいモノは作れます。

 

購入したドローンの部品と価格(2016年11月1日時点)

部品価格(円)送料(円)
フーレム(F550):ヘキサコプター3,500無料
DJI E310セット(モータ・ESC 6個)35,000無料
フライトコントローラ(Pixhawk)5,250250
GPS+コンパス(UBLOX NEO-M8N)5,000無料
スキッド2,100無料
リポバッテリ(3セル11.1V 10000mAh)5,800無料
プロペラ 6枚1,600無料
58,500 円(送料込み)

 

先日、次回(2018年5月号)の記事「近赤外カメラの改造方法」が校了しました。農業雑誌からかけ離れた内容となっていますが、お楽しみに。

 

中干し(2017年)

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田植えから1ヶ月後の6月26日~7月10日まで中干しを実施しました。

営農情報によれば、中干しは7~10日間が目安となっていますが、梅雨前線・台風3号(NANMADOL)による雨の影響で、予定通りの中干しはできませんでした。

台風3号が通過してからは、最高気温が35℃以上の晴天が続き、一気に圃場の水が蒸発していきました。

昨年は中干しの確認を行うために、超低空(対地高度約5m)のマニュアル飛行で撮影しました。

今年は可視光、近赤外、熱赤外の3つのカメラで超低空(対地高度約5m)撮影を行い、中干し確認にはどれがベストか試みました。

 

超低空撮影(2017年7月9日撮影)

 

ダウンウォッシュの影響でイネが倒れた状態になってしまい、条間の土壌の様子が確認できませんでした。欠株したところで、中干しして生じたひび割れを確認できました。

上図の拡大部分(撮影原サイズ)

 

上空からの中干し確認の他に、地上からも確認したのが、下図になります。

地上からの中干し確認(2017年7月9日撮影)

 

 

近赤外カメラによる超低空撮影

 

近赤外画像では植生の分光反射が強く、土壌や水の分光反射が弱い特性があるため、中干しによる土壌のひび割れを探すのは難しいとわかりました。

熱赤外カメラによる超低空撮影

 

 

熱赤外カメラでは土壌とイネの葉の表面温度の計測できました。上図は条間部分の土壌で約40℃の高温になり、イネの葉の表面温度は約30℃の結果を示しています。今回使用している熱赤外カメラは画素数が少ないため、土壌のひび割れまでの細かい情報の抽出は難しいのかなと思いました。ただし、圃場内に水が残っているかどうかの確認には使えそうだと思います。

 

可視光の画像が中干し確認には一番わかりやすかったのですが・・・圃場内に入って確認するのも確実だと思います。

 

【カメラ】インターバル撮影改造

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【カメラ】改造近赤外カメラでは、市販カメラを近赤外カメラに改造する方法を説明しました。

今回は空撮に必要なシャッターを自動的に切るインターバル機能を説明します。

この機能なくしてモニタリング撮影は始まりません・・・(最近は高解像の4K動画からでもモニタリングはできそうです)。

インターバル機能がないカメラで空撮を行う場合には、物理的なシャッター機構を取り付ける必要があります。

 

 自作シャッター機構(遠隔操作対応)

 

比較的安価で市販されているコンデジに、標準機能でインターバル撮影ができるカメラは一部に限られます。

ここでは、インターバル撮影可能にするロシアン・ファーム(ロシアで開発されたソフトを使った裏技)を紹介します。

ロシアン・ファームで改造できるカメラは、Canon製のカメラです。

改造といってもカメラ本体を物理的に改造するのではなく、SDカードに「CHDK(Canon Hack Development Kit)」というソフトを書き込みます。

 

CHDK(Canon Hack Development Kit)

このソフトは、Canon製のコンデジ本体のファームウェアを一時的に書き換えるもので、いわばカメラの機能を乗っ取るという裏ワザです。

なお、通常(ソフトを書き込んでいない)のSDカードを入れ直したらカメラは元の状態に戻ります。

 

CHDKの起動の仕組み

 

CHDKソフトはここからでダウンロードできます(無料)。

 

このソフトによって、標準機能には付いていない

・インターバル撮影
・RAW画像の撮影
・シャッタースピード設定
・オセロ など

 

魅力的な機能を追加することができます。

 

コンデジ画面でオセロ対戦

 

ただし、最近販売された機種の多くには対応していません。
CHDKのサイトで公開されている型番は欧米仕様の名称となっているので、日本仕様の名称と異なります。

 

改造近赤外カメラなどは「月刊地理2016年11月号 地理で使える低空撮ガイド⑥」でも紹介しています。

 

詳しい設定方法の説明は Read the rest of this entry »

【カメラ】改造近赤外カメラ

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近赤外カメラは植生や雪氷などの分野では、重要な情報の取得ツールとなります。稲などの植物の葉は近赤外の波長を強く反射し、反射の強弱で植物が元気であるかを判断することができます。しかし、市販されている多くの近赤外カメラは高価(数十万円)です。私のモニタリングの基本コンセプトは「低コスト」です。あまり馴染みがない近赤外カメラは市販のコンデジを改造することで、コストを抑えて作ることができます。ここでは、近赤外カメラに改造する手順を紹介していきます。

市販コンデジは最新機種を用意する必要はありません。自宅に眠っているカメラでも十分です。

私が近赤外カメラとして使用しているのは、中古品(約2万円)で購入したCanon S110です。旧型機種は発売してから時間が経過しているので、中古市場で安く入手できます。また、ドローンが墜落してカメラが破壊・故障しても精神的負担が大きくないというメリットもあります。

1) 機種確認

改造したいコンデジのイメージセンサが近赤外までの感度を持っているかを確認します。機種によって近赤外の撮影に適さないものもあります。

テレビ等のリモコンをカメラレンズに向けて、リモコンボタンを押しながら、シャッターを押します。

感度チェック

イメージセンサが近赤外まで感度を持っていると、リモコンの送信部が明るく写ります。この部分が暗いと、そのカメラはあまり感度がないことになります。

2) カメラ分解

カメラ本体のネジを外し、分解していきます。ネジは大変小さいので、紛失しないように作業を行います。

コンデジ分解

3) ガラス板除去

イメージセンサを覆うフタを慎重に外すと、センサ前方に薄いガラス板があります。このガラス板は赤外カットフィルタやローパスフィルタの機能を有しています。非常に薄いので、割らないように取り除きます。

その後は、可視光を遮断するIR(Infrared)フィルタ(富士フィルムのIR-78:(約2千円))を準備し、これをガラス板とほぼ同じ大きさで切ります。

※対象物によっては、フィルタの波長を変更した方がいい場合もあります。

4) ピント調整

ガラス板を取り除いたことで、このまま撮影すると光の屈折率などの関係でピントがボケた状態になってしまいます。そこで、ピント補正をするために0.3mmの透明プラ板(約5百円)を用意します。

これをガラス板より約1mmほど大きく切って、IRフィルタと透明プラ板をガラス板があった場所に収めます。

フィルタやイメージセンサ部分に、ほこりや指紋が付かないように慎重に作業を進めます。

後は分解した逆の手順でネジを締めていきます。初めての作業となると約2~3時間程度はかかると思います。慣れてくると数十分ぐらいの終了します。

【注意】カメラを分解すると、一般にメーカー保証が受けられなくなるので注意してください。

改造近赤外カメラの撮影画像

上図は改造したCanon S110をドローンに搭載して、撮影した近赤外画像です。植生からの反射が強い所が白くなって、写っています。

現在は、このカメラをドローンに搭載して、水稲モニタリングを実施しています。

今回紹介した改造などについては、「地理に使える低空撮ガイド6 低空撮で使える工夫、様々なドローン(古今書院 月刊地理)」で紹介しています。

また、カメラの改造をしなくても、NDVI(植生指標)を求めることができるカメラ「Yubaflex」も販売されています。このカメラも軽量なのでドローンに搭載することが可能です。おすすめのカメラの一つです。

Yubaflex 植生指標カメラ BIZWORKS株式会社

【手法】GIS(地理情報システム)

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【手法】3Dモデル作成(SfM-MVS処理)で紹介したオルソ画像・DSMをGISを使って解析します。
モニタリング結果の可視化や効率的なデータ管理には、GISが最適なツールです。
一昔前は数百万円する業務ソフトもオープンソースの波によって、無償で使用できるソフト「QGIS」が登場しました。

登場当時はいろいろと不便なところもありましたが、最新版では問題なく使えます。

QGISは http://qgis.org/ja/site/ から日本語版をダウンロードできます。

Windows以外にも対応しています。

ここでは、QGIS(バージョン2.18.1)を用いたメッシュ解析を紹介します。

 

1) メッシュ作成

空撮画像は高解像度なデータが取得できるため、モニタリング結果は数cm単位で求めることができます。しかし、現場では詳細すぎる情報は役に立たないこともあります(木を見て,森を見ずになってはいけません)。私の圃場では、5m×5mのメッシュを設定し、メッシュ内に含まれるピクセルの平均値をメッシュ代表値として生産管理に活かしています。

 

メッシュ作成

※QGIS→Vector grid

不必要なメッシュは削除していきます。また、メッシュを回転させて、圃場と一致するように調整します。

圃場の形に合わせた5mメッシュ

※圃場が広大な場合やその他のメッシュデータを組み合わせたい場合には、JIS規格で決められた標準地域メッシュを使うと便利です。

2) NDVI(植生指標)

QGIS→ラスタ計算機で演算ができます。

NDVI = (近赤外画像 - 赤(可視光)画像) / (近赤外画像 + 赤(可視光)画像)

※センサ 可視光をRicho GR、近赤外をCanon S110(近赤外の波長帯を撮影できるように改造)でそれぞれ空撮を実施。

本来なら、放射輝度に変換しないといけませんが、ここでは近似値的にDN(Digital Number)値で計算しています。

NDVI(2016年7月21日)

赤色ほど植生の活性が高く、反対に青色は植生の活性が低い状態を示します

3) メッシュ統計

QGIS→地域統計でメッシュ統計を行います。

※メッシュ内の平均値、最大値、最小値、個数、標準偏差などが計算できます。

計算はボタンを押すだけです。計算後、レイヤを選択して、色を割り当てます。地図は、色彩次第で解析結果の印象も変わるので、適切な色合いを選択するようにしましょう。

NDVIメッシュ(2016年7月21日)

QGISが苦手だった鳥瞰図(3D表示)もプラグインを用いることで、下図のように表示できるようになりました。HTML形式で出力されます。

NDVIの鳥瞰図(2016年7月21日)

 

雑草抽出

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ドローン水稲モニタリングは試験サイト(約3反)の他にも行っています。
すぐ隣の圃場で大きさは約1反程度です。この圃場は試験サイトと全く同じ手法(肥料等も同じ)で栽培しています。

最近、小さい方の圃場では雑草が目立ち始めてきました。
小さい圃場も6月上旬に除草剤を散布しましたが、散布後に強風によって風下側に流されてしまいました。そのため、若干土壌が高いところでは雑草が発生してしまいました。
ちなみに、試験サイトは翌日(風が弱い)に散布したため、目立った雑草は発生していません。

下の写真は圃場内部に入って取り除いた雑草です。現在までにバケツ4杯分を除去しましたが、全く追いついていません。

雑草抜き

取り除いた雑草バケツ1杯分(作業着は泥だらけ)

 

今回はモニタリングによって雑草がどのように撮影されているかを紹介します。
下の画像は可視画像・近赤外画像・DSM(地表面の高さ:草高)になります。可視画像・近赤外画像において、雑草が発生している部分は周辺の水稲と比べると明らかに色が異なります。また、DSMで見ても水稲の草高より雑草は高くなっていることがわかります。

 

雑草抽出

図 雑草抽出位置(左:可視画像、中央:近赤外画像、右:DSM)

クリックすると大きい画像サイズで確認できます。

 

下の写真は雑草を抽出した場所を地上から撮影したものです。

 

タイヌビエ

タイヌビエ(雑草を見やすくするために画像を加工)

クサネム

クサネム(雑草を見やすくするために画像を加工)

以前、紹介した水稲株位置を用いれば水稲と雑草の区別ができるので、雑草の位置および生育状況の把握は可能だと思います。しかし、今回のように雑草が生育してしまうと、取り除くのはかなりの労力が必要となります。