GIS
【手法】GIS(地理情報システム)
【手法】3Dモデル作成(SfM-MVS処理)で紹介したオルソ画像・DSMをGISを使って解析します。
モニタリング結果の可視化や効率的なデータ管理には、GISが最適なツールです。
一昔前は数百万円する業務ソフトもオープンソースの波によって、無償で使用できるソフト「QGIS」が登場しました。
登場当時はいろいろと不便なところもありましたが、最新版では問題なく使えます。
QGISは http://qgis.org/ja/site/ から日本語版をダウンロードできます。
Windows以外にも対応しています。
ここでは、QGIS(バージョン2.18.1)を用いたメッシュ解析を紹介します。
1) メッシュ作成
空撮画像は高解像度なデータが取得できるため、モニタリング結果は数cm単位で求めることができます。しかし、現場では詳細すぎる情報は役に立たないこともあります(木を見て,森を見ずになってはいけません)。私の圃場では、5m×5mのメッシュを設定し、メッシュ内に含まれるピクセルの平均値をメッシュ代表値として生産管理に活かしています。
メッシュ作成
※QGIS→Vector grid
不必要なメッシュは削除していきます。また、メッシュを回転させて、圃場と一致するように調整します。
圃場の形に合わせた5mメッシュ
※圃場が広大な場合やその他のメッシュデータを組み合わせたい場合には、JIS規格で決められた標準地域メッシュを使うと便利です。
2) NDVI(植生指標)
QGIS→ラスタ計算機で演算ができます。
NDVI = (近赤外画像 - 赤(可視光)画像) / (近赤外画像 + 赤(可視光)画像)
※センサ 可視光をRicho GR、近赤外をCanon S110(近赤外の波長帯を撮影できるように改造)でそれぞれ空撮を実施。
本来なら、放射輝度に変換しないといけませんが、ここでは近似値的にDN(Digital Number)値で計算しています。
NDVI(2016年7月21日)
赤色ほど植生の活性が高く、反対に青色は植生の活性が低い状態を示します
3) メッシュ統計
QGIS→地域統計でメッシュ統計を行います。
※メッシュ内の平均値、最大値、最小値、個数、標準偏差などが計算できます。
計算はボタンを押すだけです。計算後、レイヤを選択して、色を割り当てます。地図は、色彩次第で解析結果の印象も変わるので、適切な色合いを選択するようにしましょう。
NDVIメッシュ(2016年7月21日)
QGISが苦手だった鳥瞰図(3D表示)もプラグインを用いることで、下図のように表示できるようになりました。HTML形式で出力されます。
NDVIの鳥瞰図(2016年7月21日)
【手法】3Dモデル作成(SfM-MVS処理)
【手法】ドローン飛行設定で紹介したように、地図を作成する場合の撮影にはルールがあります。隣接する写真の約60%以上が重複するように撮影します。重複部分があることで、撮影した地表面を立体的に見ることができるようになります。
数年前から個人でも3Dモデルを作成できるソフトがいくつか登場しました。例えば、PhotoScan(Agisoft)やPix4Dmapper(Pix4D)などの有料ソフトの他に、無料のVisualSFMがあります。私は操作方法や価格などを検討した結果、PhotoScanを使用しています。
※PhotoScanを購入する際にはProfessional Edition を選択してください。Standard Edition ではオルソ画像・DSMを出力できませんので注意してください。
フローチャート(3Dモデル作成)
1) 撮影画像
撮影カメラにはRicho GRおよびCanon S110(近赤外改造カメラ)を使います(2015年以降)。30a程度の圃場であれば、上空50mを約6分の飛行時間で300枚程度撮影できます(Richo GRでインターバル1秒設定)。この撮影した画像のうち、ブレの小さい画像のみを使用します。PhotoScanでは、画像の品質を 「0~1」で 数値することができます。高品質の画像は1に近い数値を示します。反対に、ブレの大きい低品質の画像は0に近くなります。
左:高画質(0.92) 右:低画質(0.65)
(2016年7月21日撮影 Richo GR)
基準点(GCP:Ground Control Point)の位置座標設定
3Dモデルに位置情報を付与するために、撮影した画像の基準点に位置座標を設定します。下図は上空50mから撮影した基準点+対空標識です。
PhotoScanでの基準点設定
2015年以降はTS測量の計測値を使用しているので、高精度な3Dモデルが作成できます(誤差は数cm)。
2)SfM-MVS 処理
撮影した画像をPhotoScanで処理していくのですが、作業工程のほとんどが自動化されているので、簡単に3Dモデルを作成することができます。数時間程度で処理が完了するので、観測した当日にはモニタリング結果を手にすることができます。
SfM-MVS 処理の結果
3)3Dモデル(オルソ画像・DSM)
位置座標を付与した3Dモデルからオルソ画像・DSMを出力することができます。モニタリングデータの解析では、生育状況の判断にオルソ画像、倒伏リスク診断にDSMを使用します。
可視光域、近赤外域で撮影後、作成したオルソ画像・DSMはGIS(Geographic Information System:地理情報システム)で解析し、管理していきます。GISは地図を表示するだけではなく、解析結果などを地図として可視化することができ、生育状況の判断に使用します。
フリーソフトの「QGIS」で水稲モニタリングの解析を十分に行うことができます。
QGISによるモニタリング結果の可視化
観測方法にメッシュ解析の情報追加
観測方法の項目に、NDVI(植生指標)のメッシュ解析を追加しました。
NDVI画像に5m×5mのメッシュを覆い、5mメッシュ単位で生育状況をモニタリングしていきます。
メッシュ解析
観測方法に情報追加
観測方法の項目に、可視画像・近赤外画像・NDVI(植生指標)・DSM(地表面の高さ)の取得例をそれぞれ掲載しました。
解析には,これらの画像に5m×5mのメッシュを覆い、メッシュ単位で生育状況をモニタリングしていきます。
近赤外画像取得例 | NDVI取得例 | DSM取得例 |
モニタリングする際に便利なのは、GIS(地理情報システム)ソフトになります。一昔前は数百万円する業務ソフトもオープンソースの波によって、無償で使用できるソフト「QGIS」が登場しました。
登場当時はいろいろと不便なところもありましたが、最新版では問題なく使えます。
QGISは http://qgis.org/ja/site/ から日本語版をダウンロードできます。Windows以外にも対応しています。
水稲モニタリングの解析には十分な機能が含まれています。