カメラ改造
簡易NDVIカメラ
コロナ禍の影響で社会経済が暗くなってきてモニタリングどころではないかもしれませんが・・・少しでも役立てられるような情報を紹介していきます。
今回は自作できる簡易NDVI(近赤外)カメラです。
3年前に作ったカメラですが、シーズンを通したモニタリングではいろいろ課題事項が多いため、現在はお蔵入りしています。しかし、生育状況の相対的な分布傾向を見るのには問題はありません。
生育状況を把握する指標としてNDVIがよく用いられています。現在では、P4 Multispectral(P4M)やRedEdge、Sequoiaなどのカメラが市販されています。これらカメラの特徴は複眼カメラということです。1回のシャッターで可視光(RGBバンド別)、レッドエッジ、近赤外を同時に取得できます。
私がドローン水稲モニタリングを始めた年はGopro3を2台用意して、可視光と近赤外を同時に撮影してNDVIを取得していました。ある意味複眼レンズですが・・・。ただ、別々のカメラで撮影した被写体の位置合わせは、photoshopを使って手作業で調整していたのでモチベーションが高い時は苦にならないのですが・・・ルーチンになってしまうと作業自体が苦痛でした。この経験から手作業部分を減らし、モニタリングを効率的にしなければならないということを学びました。
話が脱線してしまいましたが、市販されている近赤外カメラは現在でも高価なカメラ(数十〜百万円)です。そういった背景もあり、簡易NDVI(近赤外)カメラを自作してみました。
用意する機材は、10年ぐらい前に流行した3Dレンズ対応カメラと3Dレンズです。これを改造していきます。
3Dレンズ対応カメラ | LUMIX(Panasonic:DMC-GM1)中古2万円で購入 |
3Dレンズ | LUMIX G 12.5mm / F12(Panasonic)新品1万円で購入 |
レンズガード | ハクバ :SMC-PRO(1500円) 焦点距離の調整用 |
ガラスカッター | レンズをカットするため(1200円) |
IRフィルタ | 富士フイルム(1500円) |
3Dレンズで撮影すると視差のある左眼用と右眼用画像が出力されます。これを赤青メガネで見ると立体的に感じることができます。
アナグリフの原理(引用先)
簡易NDVI(近赤外)カメラに改造するためには、片方を可視光で撮影し、もう一方を近赤外で撮影できればOKです。今回使用したLUMIXのカメラ本体には近赤外を遮断するローパスフィルタが取り付けられています。まずは感電しないように慎重にネジを外し、本体を分解していきます。ローパスフィルタを取り外せたら、もとの姿に戻します。以前紹介したS110の改造ではIR 78フィルタをカメラ本体のイメージセンサの前に取り付けましたが、今回は違うので注意してください。
DMC-GM1+LUMIX G 12.5mm / F12(Panasonic)
次に、3Dレンズ側の改造です。ローパスフィルタを取り外した状態では可視光から近赤外までの幅広い波長を撮影することになってしまいます(赤みの強い画像)。そこで取り外したローパスフィルタをレンズの片方に取り付けます。そうすることで通常の可視光の画像が撮影できます。もう一方にはIRフィルタを付ければ近赤外の画像を取得できます。
(左:近赤外画像・右:ローパスフィルタを取り外した状態の可視光画像)
ガラス板で焦点距離を調整していない画像
フィルタだけではピントが合わないので、焦点距離を調整するためのガラス板(ガラスカッターで適度の大きさにカット)を挟んでグルーガンで固定します。
ローパスフィルタを取り除いたカメラ本体とそのローパスフィルタとIRフィルタを取り付けた3Dレンズ
3Dモードで撮影するとmpoという拡張子で記録されます。あまり聞き慣れない拡張子ですが、フリーソフトの「ステレオフォトメーカー」を使うことで可視光と近赤外の別々のjpgファイルに変換できます。
(左:近赤外画像・右:可視光画像)
上空から撮影した出穂期における水稲画像(2017年7月30日撮影)
複眼カメラであるため、右と左の画像は若干位置はズレてしまいますが、SfM-MVS処理で位置ズレ問題は解決できます。位置が合った可視光および近赤外のオルソ画像からバンド間演算でNDVIを求めます。
(左:近赤外画像・右:可視光画像)
出穂期におけるオルソ画像(2017年7月30日撮影)
出穂期におけるNDVI
一見難しそうな複眼カメラでも市販されている機材を使って改造すれば、1度に可視光と近赤外が撮影できる簡易NDVI(近赤外)カメラを自作できます。ただし、カメラを分解するとメーカー保証が受けられなくなるので注意してください。改造は自己責任です。
【カメラ】インターバル撮影改造
【カメラ】改造近赤外カメラでは、市販カメラを近赤外カメラに改造する方法を説明しました。
今回は空撮に必要なシャッターを自動的に切るインターバル機能を説明します。
この機能なくしてモニタリング撮影は始まりません・・・(最近は高解像の4K動画からでもモニタリングはできそうです)。
インターバル機能がないカメラで空撮を行う場合には、物理的なシャッター機構を取り付ける必要があります。
自作シャッター機構(遠隔操作対応)
比較的安価で市販されているコンデジに、標準機能でインターバル撮影ができるカメラは一部に限られます。
ここでは、インターバル撮影可能にするロシアン・ファーム(ロシアで開発されたソフトを使った裏技)を紹介します。
ロシアン・ファームで改造できるカメラは、Canon製のカメラです。
改造といってもカメラ本体を物理的に改造するのではなく、SDカードに「CHDK(Canon Hack Development Kit)」というソフトを書き込みます。
CHDK(Canon Hack Development Kit)
このソフトは、Canon製のコンデジ本体のファームウェアを一時的に書き換えるもので、いわばカメラの機能を乗っ取るという裏ワザです。
なお、通常(ソフトを書き込んでいない)のSDカードを入れ直したらカメラは元の状態に戻ります。
CHDKの起動の仕組み
CHDKソフトはここからでダウンロードできます(無料)。
このソフトによって、標準機能には付いていない
・インターバル撮影
・RAW画像の撮影
・シャッタースピード設定
・オセロ など
魅力的な機能を追加することができます。
コンデジ画面でオセロ対戦
ただし、最近販売された機種の多くには対応していません。
CHDKのサイトで公開されている型番は欧米仕様の名称となっているので、日本仕様の名称と異なります。
改造近赤外カメラなどは「月刊地理2016年11月号 地理で使える低空撮ガイド⑥」でも紹介しています。
詳しい設定方法の説明は Read the rest of this entry »
【カメラ】改造近赤外カメラ
近赤外カメラは植生や雪氷などの分野では、重要な情報の取得ツールとなります。稲などの植物の葉は近赤外の波長を強く反射し、反射の強弱で植物が元気であるかを判断することができます。しかし、市販されている多くの近赤外カメラは高価(数十万円)です。私のモニタリングの基本コンセプトは「低コスト」です。あまり馴染みがない近赤外カメラは市販のコンデジを改造することで、コストを抑えて作ることができます。ここでは、近赤外カメラに改造する手順を紹介していきます。
市販コンデジは最新機種を用意する必要はありません。自宅に眠っているカメラでも十分です。
私が近赤外カメラとして使用しているのは、中古品(約2万円)で購入したCanon S110です。旧型機種は発売してから時間が経過しているので、中古市場で安く入手できます。また、ドローンが墜落してカメラが破壊・故障しても精神的負担が大きくないというメリットもあります。
1) 機種確認
改造したいコンデジのイメージセンサが近赤外までの感度を持っているかを確認します。機種によって近赤外の撮影に適さないものもあります。
テレビ等のリモコンをカメラレンズに向けて、リモコンボタンを押しながら、シャッターを押します。
感度チェック
イメージセンサが近赤外まで感度を持っていると、リモコンの送信部が明るく写ります。この部分が暗いと、そのカメラはあまり感度がないことになります。
2) カメラ分解
カメラ本体のネジを外し、分解していきます。ネジは大変小さいので、紛失しないように作業を行います。
コンデジ分解
3) ガラス板除去
イメージセンサを覆うフタを慎重に外すと、センサ前方に薄いガラス板があります。このガラス板は赤外カットフィルタやローパスフィルタの機能を有しています。非常に薄いので、割らないように取り除きます。
その後は、可視光を遮断するIR(Infrared)フィルタ(富士フィルムのIR-78:(約2千円))を準備し、これをガラス板とほぼ同じ大きさで切ります。
※対象物によっては、フィルタの波長を変更した方がいい場合もあります。
4) ピント調整
ガラス板を取り除いたことで、このまま撮影すると光の屈折率などの関係でピントがボケた状態になってしまいます。そこで、ピント補正をするために0.3mmの透明プラ板(約5百円)を用意します。
これをガラス板より約1mmほど大きく切って、IRフィルタと透明プラ板をガラス板があった場所に収めます。
フィルタやイメージセンサ部分に、ほこりや指紋が付かないように慎重に作業を進めます。
後は分解した逆の手順でネジを締めていきます。初めての作業となると約2~3時間程度はかかると思います。慣れてくると数十分ぐらいの終了します。
【注意】カメラを分解すると、一般にメーカー保証が受けられなくなるので注意してください。
改造近赤外カメラの撮影画像
上図は改造したCanon S110をドローンに搭載して、撮影した近赤外画像です。植生からの反射が強い所が白くなって、写っています。
現在は、このカメラをドローンに搭載して、水稲モニタリングを実施しています。
今回紹介した改造などについては、「地理に使える低空撮ガイド6 低空撮で使える工夫、様々なドローン(古今書院 月刊地理)」で紹介しています。
また、カメラの改造をしなくても、NDVI(植生指標)を求めることができるカメラ「Yubaflex」も販売されています。このカメラも軽量なのでドローンに搭載することが可能です。おすすめのカメラの一つです。