水稲株位置抽出(QGIS)
水稲株の位置抽出は、移植後1ヶ月の状態(草丈35cm程度)がデータ取得のベストとなります(株間によってベストな草丈は変わります)。草丈が低いと上空から撮影しても、苗が明確に撮影できないため、株位置の抽出は難しくなります。一方、草丈が高くなると、葉同士が重なってしまい、株位置がわからなくなってしまいます。この作業は、モニタリングのタイミングが一番重要になります。
株位置の抽出方法は、以前の記事(水稲株の位置抽出、欠株率)でも紹介しましたが、問い合わせも多かったので、QGISの操作について説明を加えます。※QGISのバージョンによって、説明が若干異なる場合もあります。
1) 近赤外カメラ撮影画像の表示
近赤外の波長域は植物からの反射は強く、水面の反射はほとんどないため、苗と水面を明確に判別することができます。
反射特性(引用:JAXA)
近赤外オルソ画像
近赤外オルソ画像を表示したら、ローパスフィルタ処理を行います。ローパスフィルタは、苗と水面以外に写っているノイズを除去する工程になります。ノイズが少なければ、ローパスフィルタ処理を行わなくても構いません。
2) ローパスフィルタ処理
【QGIS】 ビュー > パネル > ツールボックス > GRASS GIS > Raster > r.mapcalc
ローパスフィルタの計算式
上図のように、3×3の窓で平滑化していきます。数値を変更することでノイズ除去の程度を変えることができます。
3) フォーカル統計(指定した近傍内の統計情報を計算)
【QGIS】 ビュー > パネル > ツールボックス > GRASS GIS > Raster > r.neighbors
フォーカル統計のパラメータ入力画面
3) ラスタ-ベクタ変換
【QGIS】 ラスタ > 変換 > ポリゴン化(ラスタのベクタ化)
ラスタ-ベクタ変換
※処理時間がかかる場合は、圃場外部分の画像を削除するなど、画像サイズをなるべく小さくしてみてください。
4)不要ポリゴンデータの削除
ラスタ-ベクタ変換によって、値ごとにポリゴンデータが作成されます。このポリゴンデータには、水稲株以外も含まれています。そこで、ポリゴンデータのDN値(フォーカル統計の数値)を使って、不要ポリゴンを削除します。このときのDNの閾値は、カメラ種類や撮影条件などによって異なるので、画面を見ながら値を自分で見つけ出してみてください。
黄色が水稲株として選択(DN110以上)したポリゴン、黄緑色はそれ以外のポリゴン
5)ポイント化
【QGIS】 ベクタ > ジオメトリツール > ポリゴン重心
ポリゴン(重心) → ポイント
ノイズを取り除いた水稲株のポリゴンからそれぞれの重心を求め、その位置を水稲株として扱うことができます。
水稲株位置(赤)
この一連の処理は、データサイズが大きいオルソ画像を用いるため、非力なPCだと時間がかかったり、処理途中に落ちることもあります。その場合は、データを分割するなどの工夫が必要となります。