トラクターナビ

トラクターナビ(均平作業編)

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先日紹介したトラクターナビを装着して、代かきを行いました。トラクターナビはRTK-GNSSを用いたナビゲーションで、背景地図をユーザ側で自由に選択できる特徴があります。今回は代かきを行うので、背景地図には圃場内の高さを示したDSM(地表面高さ)データを使用します。このDSMデータは事前にドローンを用いて計測したもので、圃場内の高低差を可視化しています。RTK-GNSSで取得できる位置情報はとても高精度(数cm程度)なので、ピンポイントで地表面の高いところの土寄せを効率的にできます。

前回のトラクターナビ(β版)では、アンテナをトラクターの屋根付近に装着しましたが、今回はトラクターの先端に位置を変更しました。アンテナは裏側に磁石が貼られているANN-MB-00(2周波対応)を使用しています。屋根付近からトラクター先端にアンテナの位置を変えても、人工衛星からの受信信号に大きな変化はありませんでした。

アンテナをボンネットの先端に位置変更

 

「善意の基準局」として自宅屋上に設置した基準局の受信データをネット配信し、スマフォのテザリング機能を用いてRTK-GNSSを行います。

均平作業に利用するトラクターナビ

画面の〇十字は現在位置をリアルタイムに表示している

 

トラクターナビの背景地図は事前にドローンで計測したDSMになります。1cmの高さごとに色が変化するように可視化してます。このナビゲーションの画面を見ながら、地表面の高いところから低い方へ土寄せを行います。

代かき直後の試験サイト

 

今までは、紙に印刷した地図を見ながら代かきを行っていましたが、トラクターナビを使った均平作業はこれからのスマート農業にも使えるのではないかと思います。

それにしても、空撮画像から判断して・・・もう少し土寄せができたのかなぁと来年に向けての反省です。

 

【備忘録】

トラクターのアタッチメント位置

ロータリー(左) / ハロー(右)

 

トラクターナビ(β版)

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スマート農業の普及が進むにつれ、IT企業や農機具メーカから農業版カーナビが整備されつつあります。

以下のような農業版カーナビが登場しています。

 

AgriBus-NAVI(農業情報設計社)、ガイダンスシステム(トプコン)、

GPSガイダンスモニター(クボタ)、ロボットトラクタ(ヤンマー)、ロボットトラクタ(井関農機)

 

これらはトラクターなどの自動運転のためのアシストとしても使われています。私はトラクターの運転が好きなので、自動運転にはまだ興味が湧きませんが・・・ナビには関心があります。

しかし、これら販売されているナビに表示される地図がどれもパッとしません。(ビジネスとしていろんな地域・環境に対応するためには仕方がないかもしれませんが・・・)

 

そこで、今回もDIYで自分仕様のトラクターナビを構築してみました。今回の開発のカギはナビに表示する「地図」です。

自動車のカーナビでは表示される地図の選択肢はありません。しかし、農業ではその時々で表示したい地図は違ってきます。つまり、自分で用意した(見たい)地図を背景としてナビに表示することが重要です。具体的には、トラクターを運転する前にドローンで空撮したオルソ画像やDSMから解析した圃場の凹凸マップを背景地図にすることです。

 

【トラクターナビの構成】

表示部分は8インチのWindowsタブレットを採用しました。トラクター内の空間などを考慮すると、8インチぐらいがちょうどいい大きさになります。使用するソフトはQGISです。QGISはモニタリング解析にも使用していましたが、ナビとしても使えます。QGISはWindows以外のOSにも対応しているので、Windowsタブレットでなくても構いません。

ディスプレイ:Windowsタブレット、ナビソフト:QGIS

赤線:トラクターが移動した軌跡、〇十字:現在位置、背景にはドローンの空撮画像および地理院地図を表示

 

次に、アンテナの設置です。GNSSの単独測位では水平方向に数mの誤差が含まれるため、目印の少ない圃場内では使い勝手がよくありません。そのため、誤差数cmのRTK-GNSSで運用できるようにします。RTK-GNSS機器については、こちらを参照してください。

屋上に設置した基準局を「善意の基準局」として、衛星からの受信データをネット配信します(詳細は後日紹介予定)。

基準局(屋上に設置したアンテナ)

一方、移動局となるトラクターには遮蔽のない屋根上にアンテナを取り付け、ケーブルと基板セットをトラクター内に収納します。ケーブルをUSBでWindowsタブレットに接続し、「RTKLIB」でリアルタイムに位置情報を解析していきます。移動局はシリアル接続、基準局はスマフォのテザリングでネットからトラクター内で受信します。それらを解析した結果はシリアルポートで出力します。この時に役に立つのが仮想シリアル(COM) ポートドライバ「com0com」です。いろいろ制限がありますが、RTKLIBの結果をQGISでリアルタイムで受け取ることができます。

トラクターにGNSSアンテナを設置(取り外し可能)

 

アンテナのケーブルおよび基板を袋に収納。タブレット画面はRTKLIBで位置情報を解析している様子。

 

受け取った位置情報はそのままQGISの地図上にプロットされます。あとは自分が見たい背景地図を選択すればトラクターナビの完成です。事前に圃場内のコース取りをデータ化すれば、トラクターをコース通り運転できているのかリアルタイムで確認できるようになります。また、この装置のメリットは、アンテナの取り外しができるので、トラクター以外のプラットフォームにも搭載可能です。

 

今回は試運転ということで、トラクターで集落を1周した時のタブレット上の画面を動画にしてみました。背景地図には夏にドローンで空撮したオルソ画像を使用しています。また、トラクターのフロントガラスにGoProを設置して、その時の走行の様子を合成しました。


トラクターナビβ版(試運転)