モニタリング手法

結果:均平精度(2020年)

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今年の代かきはトラクターナビを搭載することで、より的確に高い土を低い方へ土寄せを実施することができました。2019年に失敗してしまった圃場の乾きすぎ状態にならないように、天気予報と相談しながら水の状態を管理しました。その結果、ほぼ問題ない状態で田植えを迎えることができました。

 

田植えの直前(30分前)にドローンによる空撮を実施し、そのデータを用いて今年の均平精度の検証を行いました。2014年から比べると試験サイトの均平度の精度は良くなっていますが、そろそろ頭打ちになってきた感じです。実際にトラクターを動かし、圃場の均平化を実施してきましたが、満足いく状態になるまでは5年はかかるなぁと実感しました。また、均平化のアドバイスをくれたベテラン農家さんの言う通りでした

ⅰ) 代かき後の凹凸マップ(2020年)

 

ⅱ) 代かき後のオルソ画像(2020年5月22日撮影)

 

2014~2020年における均平精度の変遷

 

2020年は均平精度:1.1cm・最大高低差:4.0cmとなりました。今年も均平精度は問題ない結果となり、水管理もムラなくできるはずです。あとは、昨年みたいな梅雨の長雨にならないことを祈るだけです。

 

トラクターナビ(均平作業編)

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先日紹介したトラクターナビを装着して、代かきを行いました。トラクターナビはRTK-GNSSを用いたナビゲーションで、背景地図をユーザ側で自由に選択できる特徴があります。今回は代かきを行うので、背景地図には圃場内の高さを示したDSM(地表面高さ)データを使用します。このDSMデータは事前にドローンを用いて計測したもので、圃場内の高低差を可視化しています。RTK-GNSSで取得できる位置情報はとても高精度(数cm程度)なので、ピンポイントで地表面の高いところの土寄せを効率的にできます。

前回のトラクターナビ(β版)では、アンテナをトラクターの屋根付近に装着しましたが、今回はトラクターの先端に位置を変更しました。アンテナは裏側に磁石が貼られているANN-MB-00(2周波対応)を使用しています。屋根付近からトラクター先端にアンテナの位置を変えても、人工衛星からの受信信号に大きな変化はありませんでした。

アンテナをボンネットの先端に位置変更

 

「善意の基準局」として自宅屋上に設置した基準局の受信データをネット配信し、スマフォのテザリング機能を用いてRTK-GNSSを行います。

均平作業に利用するトラクターナビ

画面の〇十字は現在位置をリアルタイムに表示している

 

トラクターナビの背景地図は事前にドローンで計測したDSMになります。1cmの高さごとに色が変化するように可視化してます。このナビゲーションの画面を見ながら、地表面の高いところから低い方へ土寄せを行います。

代かき直後の試験サイト

 

今までは、紙に印刷した地図を見ながら代かきを行っていましたが、トラクターナビを使った均平作業はこれからのスマート農業にも使えるのではないかと思います。

それにしても、空撮画像から判断して・・・もう少し土寄せができたのかなぁと来年に向けての反省です。

 

【備忘録】

トラクターのアタッチメント位置

ロータリー(左) / ハロー(右)

 

ビニールハウスでドローン

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令和元年東日本台風(台風19号)による被災で多くの農機具が使用不能になってしまいましたが、国・県・市による補助金のおかげで今年の水稲栽培もできるようになりました。感謝です。ありがとうございます。

4月に入り、この地域の多くの農家さんが動き始めました。

私のところでは、まずは育苗用のビニールハウスの準備からです。昨年の台風による洪水によって,ハウス内の地面には、いたる所で凹凸が生じてしまいました。

昨年の反省から今年は、事前にビニールハウス内の凹凸マップを作成してみました。ポールカメラとドローンの両方で凹凸マップを作成しましたが、今回はドローンの方法を紹介します。大型ドローンではハウス内の飛行は危険ですが、今回は昨年発売された200g未満機ドローン「Mavic Mini(DJI)」を使いました。東京で積雪があった日でもMavic Miniによるハウス内の撮影は問題ありません。プロペラガードも付いているので、安心して飛ばせます。

Mavic Miniでハウス内をインターバル2秒で空撮

 

撮影した画像はSfM-MVS技術を用いて3Dモデルにします。さらに、このデータからビニールハウス内の高低差をcm単位で可視化できるので、この凹凸マップをベースに均平化を行います。ハウス内に重機を入れることは難しいので、トンボ・シャベルによる手作業で整地にします。マップがあるだけで均平作業も効率的に実施できます。

ドローンによるビニールハウス内の均平化

 

凹凸マップ(DSMの色は1cmごとに設定)

 

育苗用のビニールハウスの整地後は、種籾の塩水選・消毒(24時間薬液漬)です。濃度20%(約比重1.13)の塩水を種籾を投入し、実がつまった種子だけを選別します。選別した種籾を浸種し、約1週間後に種蒔きです。さらに1カ月後には田植えになりますが、それまでにコロナ禍が収束することを祈ります。

塩水で浮いている種子(この種子は移植には使いません)

 

【塩水選】

・種籾(16kg)、バケツ(40L)、塩(5kg)、ザル

 

【使用農薬】

・テクリードCフロアブル(1成分):殺菌剤 (種籾20kgに対して、水40l・薬剤200ml)

・スミチオン乳剤(1成分):殺虫剤 (種籾20kgに対して、水40l・薬剤40ml)

 

 

トラクターナビ(β版)

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スマート農業の普及が進むにつれ、IT企業や農機具メーカから農業版カーナビが整備されつつあります。

以下のような農業版カーナビが登場しています。

 

AgriBus-NAVI(農業情報設計社)、ガイダンスシステム(トプコン)、

GPSガイダンスモニター(クボタ)、ロボットトラクタ(ヤンマー)、ロボットトラクタ(井関農機)

 

これらはトラクターなどの自動運転のためのアシストとしても使われています。私はトラクターの運転が好きなので、自動運転にはまだ興味が湧きませんが・・・ナビには関心があります。

しかし、これら販売されているナビに表示される地図がどれもパッとしません。(ビジネスとしていろんな地域・環境に対応するためには仕方がないかもしれませんが・・・)

 

そこで、今回もDIYで自分仕様のトラクターナビを構築してみました。今回の開発のカギはナビに表示する「地図」です。

自動車のカーナビでは表示される地図の選択肢はありません。しかし、農業ではその時々で表示したい地図は違ってきます。つまり、自分で用意した(見たい)地図を背景としてナビに表示することが重要です。具体的には、トラクターを運転する前にドローンで空撮したオルソ画像やDSMから解析した圃場の凹凸マップを背景地図にすることです。

 

【トラクターナビの構成】

表示部分は8インチのWindowsタブレットを採用しました。トラクター内の空間などを考慮すると、8インチぐらいがちょうどいい大きさになります。使用するソフトはQGISです。QGISはモニタリング解析にも使用していましたが、ナビとしても使えます。QGISはWindows以外のOSにも対応しているので、Windowsタブレットでなくても構いません。

ディスプレイ:Windowsタブレット、ナビソフト:QGIS

赤線:トラクターが移動した軌跡、〇十字:現在位置、背景にはドローンの空撮画像および地理院地図を表示

 

次に、アンテナの設置です。GNSSの単独測位では水平方向に数mの誤差が含まれるため、目印の少ない圃場内では使い勝手がよくありません。そのため、誤差数cmのRTK-GNSSで運用できるようにします。RTK-GNSS機器については、こちらを参照してください。

屋上に設置した基準局を「善意の基準局」として、衛星からの受信データをネット配信します(詳細は後日紹介予定)。

基準局(屋上に設置したアンテナ)

一方、移動局となるトラクターには遮蔽のない屋根上にアンテナを取り付け、ケーブルと基板セットをトラクター内に収納します。ケーブルをUSBでWindowsタブレットに接続し、「RTKLIB」でリアルタイムに位置情報を解析していきます。移動局はシリアル接続、基準局はスマフォのテザリングでネットからトラクター内で受信します。それらを解析した結果はシリアルポートで出力します。この時に役に立つのが仮想シリアル(COM) ポートドライバ「com0com」です。いろいろ制限がありますが、RTKLIBの結果をQGISでリアルタイムで受け取ることができます。

トラクターにGNSSアンテナを設置(取り外し可能)

 

アンテナのケーブルおよび基板を袋に収納。タブレット画面はRTKLIBで位置情報を解析している様子。

 

受け取った位置情報はそのままQGISの地図上にプロットされます。あとは自分が見たい背景地図を選択すればトラクターナビの完成です。事前に圃場内のコース取りをデータ化すれば、トラクターをコース通り運転できているのかリアルタイムで確認できるようになります。また、この装置のメリットは、アンテナの取り外しができるので、トラクター以外のプラットフォームにも搭載可能です。

 

今回は試運転ということで、トラクターで集落を1周した時のタブレット上の画面を動画にしてみました。背景地図には夏にドローンで空撮したオルソ画像を使用しています。また、トラクターのフロントガラスにGoProを設置して、その時の走行の様子を合成しました。


トラクターナビβ版(試運転)

 

簡易NDVIカメラ

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コロナ禍の影響で社会経済が暗くなってきてモニタリングどころではないかもしれませんが・・・少しでも役立てられるような情報を紹介していきます。

今回は自作できる簡易NDVI(近赤外)カメラです。
3年前に作ったカメラですが、シーズンを通したモニタリングではいろいろ課題事項が多いため、現在はお蔵入りしています。しかし、生育状況の相対的な分布傾向を見るのには問題はありません。

生育状況を把握する指標としてNDVIがよく用いられています。現在では、P4 Multispectral(P4M)やRedEdge、Sequoiaなどのカメラが市販されています。これらカメラの特徴は複眼カメラということです。1回のシャッターで可視光(RGBバンド別)、レッドエッジ、近赤外を同時に取得できます。

 

私がドローン水稲モニタリングを始めた年はGopro3を2台用意して、可視光と近赤外を同時に撮影してNDVIを取得していました。ある意味複眼レンズですが・・・。ただ、別々のカメラで撮影した被写体の位置合わせは、photoshopを使って手作業で調整していたのでモチベーションが高い時は苦にならないのですが・・・ルーチンになってしまうと作業自体が苦痛でした。この経験から手作業部分を減らし、モニタリングを効率的にしなければならないということを学びました。

話が脱線してしまいましたが、市販されている近赤外カメラは現在でも高価なカメラ(数十〜百万円)です。そういった背景もあり、簡易NDVI(近赤外)カメラを自作してみました。

 

用意する機材は、10年ぐらい前に流行した3Dレンズ対応カメラと3Dレンズです。これを改造していきます。

機材

3Dレンズ対応カメラLUMIX(Panasonic:DMC-GM1)中古2万円で購入
3DレンズLUMIX G 12.5mm / F12(Panasonic)新品1万円で購入
レンズガードハクバ :SMC-PRO(1500円) 焦点距離の調整用
ガラスカッタレンズをカットするため(1200円)
IRフィルタ富士フイルム(1500円)

 

3Dレンズで撮影すると視差のある左眼用と右眼用画像が出力されます。これを赤青メガネで見ると立体的に感じることができます。

アナグリフの原理(引用先

 

簡易NDVI(近赤外)カメラに改造するためには、片方を可視光で撮影し、もう一方を近赤外で撮影できればOKです。今回使用したLUMIXのカメラ本体には近赤外を遮断するローパスフィルタが取り付けられています。まずは感電しないように慎重にネジを外し、本体を分解していきます。ローパスフィルタを取り外せたら、もとの姿に戻します。以前紹介したS110の改造ではIR 78フィルタをカメラ本体のイメージセンサの前に取り付けましたが、今回は違うので注意してください。

DMC-GM1+LUMIX G 12.5mm / F12(Panasonic)

 

次に、3Dレンズ側の改造です。ローパスフィルタを取り外した状態では可視光から近赤外までの幅広い波長を撮影することになってしまいます(赤みの強い画像)。そこで取り外したローパスフィルタをレンズの片方に取り付けます。そうすることで通常の可視光の画像が撮影できます。もう一方にはIRフィルタを付ければ近赤外の画像を取得できます。

(左:近赤外画像・右:ローパスフィルタを取り外した状態の可視光画像)

ガラス板で焦点距離を調整していない画像

 

フィルタだけではピントが合わないので、焦点距離を調整するためのガラス板(ガラスカッターで適度の大きさにカット)を挟んでグルーガンで固定します。

ローパスフィルタを取り除いたカメラ本体とそのローパスフィルタとIRフィルタを取り付けた3Dレンズ

 

3Dモードで撮影するとmpoという拡張子で記録されます。あまり聞き慣れない拡張子ですが、フリーソフトの「ステレオフォトメーカー」を使うことで可視光と近赤外の別々のjpgファイルに変換できます。

(左:近赤外画像・右:可視光画像)

上空から撮影した出穂期における水稲画像(2017年7月30日撮影)

 

複眼カメラであるため、右と左の画像は若干位置はズレてしまいますが、SfM-MVS処理で位置ズレ問題は解決できます。位置が合った可視光および近赤外のオルソ画像からバンド間演算でNDVIを求めます。

(左:近赤外画像・右:可視光画像)

出穂期におけるオルソ画像(2017年7月30日撮影)

  

出穂期におけるNDVI

 

一見難しそうな複眼カメラでも市販されている機材を使って改造すれば、1度に可視光と近赤外が撮影できる簡易NDVI(近赤外)カメラを自作できます。ただし、カメラを分解するとメーカー保証が受けられなくなるので注意してください。改造は自己責任です。

 

格安RTK‐GNSS機器の製作 ‐その3‐

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前回までの紹介でM8T基板の改造も終わり、今回はアンテナまわりの準備と外に出て位置計測を行います。格安RTK‐GNSS機器の製作の紹介は今回で最後になります。

 

今回使う機材

ステンレス鍋蓋百均で購入。
一脚・三脚アンテナを固定するために使用。
モバイルバッテリー
基板の電源。ケースに収まる大きさでOK。

 

4)グランドプレーンの作成
宇宙から到達する人工衛星の電波は強くありません。また、この電波は反射する特性があります。そのため、地面からの電波反射は位置計測の際にノイズとなってしまいます。ノイズを取り除くには、地面からの電波を遮断しなければなりません。そのため、アンテナの下に金属板を用意してノイズを取り除きます。ここでは、百均のステンレス鍋蓋で代用します。ステンレスは硬いので、穴を広げるにも一苦労です。

百均で売っているステンレス鍋蓋

 

5)一脚・三脚
改造した基板・アンテナは、一脚・三脚で固定します。固定局は計測中は動かしてはいけないので、足場が安定している地面かつ上空が開けている場所に設置します。一方、移動局は持ち運んで計測するため、一脚にします。なお、アンテナは防塵・防水加工されているのため雨でも大丈夫ですが、基板は一応ケースで覆っていますが・・・防水されていません。そのため、基板のケースをさらにキッチン用品のケースで覆って、多少の雨でも計測できるようにしました。
基板・アンテナより一脚・三脚の方が価格が高くなったのはちょっと複雑な感じです・・・。

連続計測中の移動局

 

6)位置計測
ようやく準備は終了です。モバイルバッテリーを取り付けて、屋外で計測してみましょう。

私は自宅裏に固定局・移動局をそれぞれ数時間設置してみました。計測が終われば、データ解析になります。microSDに保存されたテキストファイルを用いて解析します。解析に使うソフトは「RTKLIB」(この分野では非常に有名なオープンソフト)です。私もその恩恵にあずかります。

RTKLIBの操作方法は多くの人が詳しく情報を提供しているので、このサイトでは省略します。農研機構では、小型GNSS受信機を用いた高精度測位マニュアル(ドローン用対空標識編) を公開しています。今回紹介している格安RTK-GNSS測量についてまとめられているので、大変参考になるマニュアルです。

日本では、国土地理院が全国に約1300ヶ所の電子基準点(24時間連続にGNSSによる観測を行っている地点)を設置し、観測データを公開しています(データのダウンロードにはユーザ登録が必要:登録無料)。この電子基準点を用いてRTK-GNSS測量することも可能です。

自宅裏に設置した固定局と電子基準点を用いて、解析してみたら誤差1cm以内に収まる精度で位置計測することができました。

 

この技術を使えば、いろんな場所でcm単位の高精度な位置計測をすることが可能です。数年前では個人でRTK-GNSS測量というのは考えられませんでしたが・・・農業分野においても画期的な技術になりそうです。すばらしいっ!!

 

格安RTK‐GNSS機器の製作 ‐その2‐

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前回は、M8T基板とアンテナを接続して人工衛星の信号を受信するところまでの話でした。今回は、信号データを電子媒体(SDカード)に記録する方法を紹介します。

2016年から試験的に導入したRTK-GNSSですが、当初は受信情報の記録方法がわからず、WindowsのノートPCやWindowsタブレットをロガーとして記録する方法を採用してきました。この方法でも問題ないのですが、運用上の欠点としてノートPC・タブレットを屋外に放置する心配や電源が3時間程度で切れてしまう、またケーブルの接触不良で記録がストップしてしまうなどといったものでした。

格安RTK-GNSS導入当初のシステム

 

そこで、前述の問題を解決するために受信情報をSDカードに書き込む方法に改造を行います。電源供給はスマフォなどで使うモバイルバッテリに変更することで1回の充電で1日以上の計測が可能となります。

 

今回使う機材

OpenLogスイッチサイエンス(1900円)。オープンソースの小型ロガーでmicroSDに記録。電源ONにすると同時に書込みを開始。
0Ω抵抗秋月電子通商(100円:200個入)。
ケーブル
M8T基板とOpenlogの接続。
ケース
基板が入れば何でもいい。

 

基板改造
1)M8T基板のダイオードを0Ω抵抗に取り替え

交換する理由はよくわかっていませんが・・・詳しくはこちら(濱くんOSQZSS)を参照してください。

1mmぐらいの大きさのトランジスタを取り外して、0Ω抵抗を半田付けするのはかなり大変です・・・。目が本当に疲れます・・・。

取り外しには、先の尖ったピンセットがあると作業しやすい

 

2)M8TとOpenlogの結線
下の写真のように結線します。電源を入れるとOpenlogのLEDが青色に点滅します。これで衛星からの受信情報はmicroSDカードに書き込まれていきます。

BaseとRoverの2台を作成

 

3)ケース

基板剥き出しのままだと静電気や断線などの心配や見た目も格好悪いのでケースを作成しました。3Dプリンタで作るのに憧れますが、プリンタを持っていないので手元にあるもので作成します。

100均でケースを作るか・・・いろいろと考えていたところ、子供が使っているレゴが目に飛び込んできました。これはと思い、さっそく組み立てると・・・想像通りに素晴らしいケースが出来上がりました。

もう一つは、今ではなかなか手に入らないフィルムケースで作りました。M8Tの大きさにピッタリです。ケーブル用の穴とOpenlog用の切れ込みを入れたら完成です。

M8T専用レゴケース

 

ここまで出来たら、動作テストをしてみます。

ケーブルをアンテナと基板に、そして基板をモバイルバッテリーにそれぞれ接続し起動させます。基板のLEDが緑色に点滅、Openlogは青色に点滅すればOKです。

しばらく計測してみたら、SDカードに保存されたテキストファイルをu-centerで読み込んでみましょう。

 

今回はここまでの内容で終了です。次回は、屋外で計測する内容を紹介する予定です。

 

格安RTK‐GNSS機器の製作 ‐その1‐

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2020年の最初の記事は「格安RTK-GNSS」を複数回にわたって紹介していきます。

私自身は2016年から格安RTK-GNSSに手を出しましたが、今まで触れることなかった専門知識・技術が多岐にわたっていたので、しばらく様子を見ていました。最近になって私の周りの人が導入したことによって、いろいろ教えてもらえる環境になりました。先日紹介した1月25日の研究会でも格安RTK-GNSSの簡単な紹介があります

 

さて、今回紹介するRTK-GNSSというのは、複数の人工衛星からの信号を受信して、cm単位で地球上の位置を計測することができる技術です。世の中では「GPS」という言葉が定着していますが、RTK-GNSSはアメリカのGPS以外にもロシアのGLONASS、EUのGalileo、中国のBeiDouや日本のみちびきといった複数の人工衛星を使うシステムになります。cm単位の高精度な位置を求める技術になりますが、農業分野では無人トラクタや無人田植機に使われるなど、これからのスマート農業には必要な技術になってきます。

測量分野では、数十年前から現場で使われています。ただし、測量用の検定に合格した機器は何百万円と非常に高価であったため、個人で手を出すことはできませんでした。

しかし、センサの小型化や低価格化によって、個人でもcm単位で計測できる時代がついに到来しました。素晴らしいっ!!

RTK-GNSS測量の機材が格安で購入できるようになったことから、電子機械の雑誌(トランジスタ技術など)でも特集されています。

また、reach社のrs+といったこれまでには考えられない価格で製品化され、既に市販されています。ただし、日本国内で使用するための技適を取得していないため、機器を使用すると電波法に抵触する可能性があります(技適を取得して販売するのをずっと期待しているのですが・・・ダメそうな感じです)。

 

日本国内では電波法などいろいろ課題もありますが、部品をそろえることで格安にRTK-GNSS(後処理)を自作することはできます。

ドローンを用いたモニタリングでは、GCP(地上基準点)の計測にRTK-GNSSを使います。位置精度が高ければ、より精度の高い3Dモデルを作成することができます。RTK-GNSS測量以外にもTS測量といった方法でも高精度の位置を求めることが出来ます。精度だけでみるとRTK-GNSSよりTS測量の方が精度は高い(RTK-GNSSは数cmの誤差、TS測量は数mmの誤差)のですが、広域にわたる測量の場合はRTK-GNSSの方が効率的です。

また、そのような測量機器がない場合は、地理院地図(WEB地図)で経緯度および標高を求めることができます。私も2014年の運用時では地理院地図を使用していましたが、モニタリングの高精度化にあたってGCPをRTK-GNSS測量およびTS測量による位置座標に変更しました。100mぐらいの狭い範囲であれば、メジャーとハンドレベルでも位置を計測することができます。

 

前置きが長くなりましたが、本題の格安でcm単位の精度で位置を求めることができるRTK-GNSS測量について紹介していきます。
2018年に2周波の信号を受信できる基板ZED-F9P(u-blox社)が開発されましたが、ここでは1周波タイプのM8T(u-blox社)を使います。詳しいことは、私が参考にしたサイトで紹介されています。

まず、RTK-GNSS測量はBaseとRoverの2台以上が必要になります(※Roverは複数台に増設することも可能)。また、国土地理院が日本国内を整備している電子基準点を利用する場合は1台でも位置を計測することができます。リアルタイムで位置を求める場合は、BaseとRover間をデジタル無線やWi-Fiなどのネットワークを使用します。私の使い方はリアルタイムで位置を知る必要はないので、受信した情報をSDカードに書き込んで後処理解析から位置を計測します。デジタル無線やWi-Fiなどを使用しないので、電波法には抵触しません。

 

今回使う機材

M8T(u-blox社)CSG Shop(1枚あたり67€:約8100円)
アンテナアンテナはピンからキリまであります。対応する人工衛星によっても価格は大きく変わるので、予算と相談してください。私の場合はTallysmanのTW3710(約20000円)を採用しました。
ケーブル基板とアンテナのコネクタの形に注意です。市販品もありますが、任意の長さで調整したかったので部品ごとに購入しました。なお、ケーブルとコネクタは半田付けが必要ですが、難しい作業ではありません。
同軸ケーブルTNCプラグ同軸変換アダプタ(50cmケーブル2本作成:1700円/本)

M8T基板とTallysmanアンテナ

 

M8T基板にアンテナを接続して、PC画面(u-center)で見るとアメリカのGPS、中国のBeiDou、日本のみちびきを受信していることが確認できます。パラメータなどの設定はこちらを参考にしてください。

人工衛星(GPS、BeiDou、みちびき)の受信状況

 

信号を正常に受信できれば、次はその情報を電子媒体に保存していきます。次回は、受信情報をSDカードに書き込むための改造方法を紹介する予定です。

 

速報値:2019年収量

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連休を使って、稲刈り&籾摺りを行いました。天気予報では雨となっていたので、刈り取りができるか心配でしたが、なんとか無事に収穫できました。

雨が降りそうな天気での稲刈り

 

さて、1ヶ月前に投稿した収量予測の答え合わせです。収量予測では、前年並みの収量と予測したのですが、結果は…以下の通りになりました。

試験サイト全体の精玄米収量 :1438.2 kg(465kg / 10a)

収量予測との誤差 約64kg (4.3%)

2018年と比べると減収になりました。やはり、幼穗形成期の日照不足が大きく影響していると考えられます。ちなみに、2018年(猛暑パラメータ)で計算すると、精玄米収量:1610 ㎏と大きく外れてしまいます。今年は2016年の天候と傾向が似ていたことから、2016年パラメータを使用しましたが、さまざまな天候に対応するにはデータの蓄積が必要です。ドローンモニタリングを2014年から始めていますが、まだ5年分のデータしか蓄積ができていないので、予測モデルの精度が満足できる状態になるまではもう少し時間がかかりそうです。

ドローン運用開始からのコシヒカリ収量(10a当たりの精玄米収量)およびタンパク質含有率の結果

 

これまで増収を続けていましたが、2019年で記録はストップしてしまいました。来年は増収できるように栽培方法をちょっと見直してみたいと思います。

 

収量予測(2019年)

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2019年は梅雨の影響で、分げつ期〜幼穂形成期〜穂ばらみ期の日照時間が記録的に少ないのが特徴です。モニタリングを開始した2014年からの気象データを見ると、2019年の傾向は2016年に類似していることがわかります。なお、積算日照時間の数値では2017年とほぼ等しいのですが、分げつ期〜幼穂形成期〜穂ばらみ期の傾向が異なるので、今回は2016年を使いました。

(アメダス:鳩山地点を用いて作成)

移植日からの積算日照時間(2014~2019)

 

2016年の収量パラメータを使って、2019年の収量予測を行ったところ、以下のような結果となりました。

試験サイト全体の玄米収量予測 (ドローン): 1502 kg

 

10aあたりでは486kg/10aです。この結果から、2019年の収量は2018年とほぼ同じぐらいの収量が見込めそうです。

 

結果はもうすぐです。