モニタリングの現状と課題

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近年、日本の農業は農業用ロボットやICT技術を駆使して生育管理を行う精密農業の導入が各地で進んでいます。ドローン分野では、2016年に農薬散布ドローンが続々と農林水産航空協会の認定を受けており、2017年から各地で運用されている姿を見ることができると思います。また、これと同時にドローンを活用して、農作物の生育管理を行う会社も増えてきました。

従来、上空からの農作物モニタリングは、衛星・航空機(有人機)によるリモートセンシングが行われてきました。衛星による農作物モニタリングは一度に広範囲(約100kmの範囲)の情報を取得することができます。広範囲を管轄する組織であれば、有効なツールになります。実際に青森県では、「青天の霹靂」や「つがるロマン」はブランド化され,販売されています。

しかし、衛星モニタリングにも課題があります。

まず、栽培時期に制約がある東日本では、苗の移植日がほぼ同じになるため、モニタリング精度は高いのですが、温暖な西日本では移植日の異なる圃場が多くなるため、精度が低下してしまいます。

次に、高度700kmから観測する周回軌道の人工衛星は、大気の気象状況に左右されやすいため、欲しい時期の情報を取得できない場合もあります。
※気象観測衛星「ひまわり」は高度35,880kmから常時観測していますが、解像度が1kmのため、圃場の状態を判読することは難しい。

また、衛星画像を入手するには、それなりのコスト(数十万円~)が必要となります。しかし、現在運用されているLANDSAT-8(解像度15~30m)やSentinel-2(解像度10~20m)は無償で入手することができるので、前述したように広域を管轄する場合には非常に有益な情報になります。今までネックであった入手コストが軽減したことによって、今後ますます衛星を利用したビジネスは注目されていくと思います。JAXAのHPに衛星を利用した活用例(農業)が紹介されています。ただし、WorldView(解像度0.3~1.2m)といった超高解像度衛星を使用する場合は、入手コストがかかります。

一方、ドローンによるリモートセンシング(UAVリモートセンシング:UAVRS)は、上空の気象状況の影響を受けにくい低空から観測できるため,欲しい時期の情報をcm単位の高解像度で取得することができる特徴があります。そのため、様々な分野(撮影、測量・観測、点検、輸送等)でドローンが導入されており、農業分野でも新たなモニタリングツールとしての注目されています。

ドローンによる水稲モニタリングを実践してきて、イネの生育状況、追肥時期および追肥箇所の判定、倒伏リスクの診断、収量推定、食味(タンパク質含有率)推定などを精確に把握できることがわかってきました。また、2016年の収量は、ドローン水稲モニタリングを導入した2014年と比べて、約20%の増収となり、UAVリモートセンシング(UAVRS)による成果が着実に表れ始めています。

ドローン水稲モニタリングを始めてまだ3年しか経過していませんが、個人の農家さんからの問い合わせも徐々に多くなり、ドローンが注目されていると感じています。しかし、個人の農家さんが導入しているのはまだ僅かな状況です。今後、この手法が広く普及するには、様々な課題があります。それは、モニタリング結果が可視化するまでに、いくつかの工程を踏まないといけません。つまり、農家さんが気軽に導入しにくいのが現在の運用方法です。一般的な農家さんにとって欲しいのは、ボタン一つで「生育状況マップ」の結果が表示されることです。その間の工程は自動化(ブラックボックス化)して、余計な負担を取り除かないと普及しないと思います。

ドローン水稲モニタリングは、大まかに①空撮(ドローン)→②3Dデータ作成(SfM-MVS)→③生育管理(GIS)の流れで進めていきます。(・・・)は各工程に必要なツールになります。
私の実践しているモニタリングでは、①~③の工程で扱うソフトウェアも異なるため、それぞれの知識・技術が必要となり、ゼロから覚えるには負担となります。そのため、高齢化が進んでいる農業分野では、なかなか受け入れられないかもしれません。

 

 

①空撮(ドローン)

現在、ドローンはホビー用~産業用まで多くの機体が登場しています。モニタリングには、200~300g程度のカメラが搭載できればよいので、ホビー用でも問題ありません。ただし、モニタリングを行うには、効率的に空撮することが望ましいので、自律飛行が可能な機体が必要になります。3万円ぐらいから販売している機体でも十分にモニタリングを行うことができます。

ドローンの技術は日々向上しているので、ボタン一つで「離陸→空撮→着陸」は技術的には問題ないと思います。ただし、安全面を考えると、現場に同行して周囲の環境を確認した上で操縦する必要はあります。また、ドローンは空物なので、メンテナンスを心掛けないといけません。そのため、ドローンの仕組みや部品の名称、部品の交換などの知識は必要になります。

空撮で課題となるのは飛行スケジュールだと思います。操縦者の都合(兼業農家だと休日が中心)や飛行時の気象状況など様々な要因でスケジュール通りに飛行できなくなる場合もあります。しかし、モニタリングは定期的にデータを取得するのが大切なので、飛行スケジュールを上手く調整しなければなりません。ビジネスでも同様かと思います。空撮が複数地点となれば、操縦者をどのように派遣するか、また拠点から遠距離になると旅費もかかってきます。ビジネスとして成り立つためには、この課題をクリアしなければいけないと思います。

②3Dデータ作成(SfM-MVS)

圃場を重複するように空撮した画像データは、そのままでは使い勝手が悪いので、一枚に接合した画像(オルソ画像)にする必要があります。この工程が「SfM-MVS処理」になります。3Dデータを作成するソフトはいくつかありますが、少し高額になります。私が使っているPhotoScan(Agisoft)は、約40万円(アカデミック価格:約8万円)となります。この価格が少しネックとなります。オープンソースのVisualSFMがありますが、使いこなすまでには時間がかかります。3Dデータがなくてもよければ、パノラマステッチソフトで複数枚の画像を一枚の画像に接合することができます。例えば、MicrosoftのICE(Image Composite Editor)は無料で使用することができます。ただし、接合した画像は本来の位置とズレることも多々あります。

最近では、ユーザが空撮した画像データをクラウド上にアップデートしたら、自動的に処理を行い、解析結果を提供してくれる会社も登場してきました。SfM-MVSをクラウド上で自動的に処理してくれるので、ユーザにとって負担が少なく理想的です。しかし、月額数千~数十万となっているので、零細農家にはこのコストも抑えたいところです。

③生育管理(GIS)

モニタリング結果の解析・可視化や効率的なデータ管理には、「GIS(地理情報システム)」が最適になります。低コストで解析する場合には、オープンソースのQGISがベストです。しかし、解析するソフトがあっても、モニタリング結果を解釈する部分の蓄積が不足している状況です。そのため、ベテラン農家さんの「勘と経験」をモニタリング結果に結び付け、農作物の生育状態の管理に反映する必要があります。農作物の栽培には地域差もあるので、複数の地域でのモニタリング結果の情報を共有することも大切です。

 

空撮画像の処理はクラウド化が理想的です。しかし、現状のサービスは大規模農家を対象としているので、日本のような狭い農地にも見合うコストであれば、普及するかもしれません。

集落や農業法人等で核となる人がモニタリング技術を習得し、実際に運用して、その成果を各農家さんに提供するといった地道な普及活動(集落の結束力も高まる?)もあるのではないかと思います。

 

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