ドローン計測

代かき後のドローン計測(2017年)

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今年も代かき直後の圃場の高さをドローンを用いて計測しました。(参考:昨年の計測結果

代かき直後は泥水となっているので、泥が沈着するまでの2日間ほど時間を置いてから、落水および蒸発によって土壌が見える状態までにしてから計測します。

代かき後に湛水を行わず、ある程度水がなくなった状態(2017年5月18日撮影)

 

ドローン計測は圃場内の凹凸をどのぐらい均平化できたかを定量的に明らかにするのが目的です。また、代かき後に水を張った状態でもドローンによるDSM計測ができるか実験を行いました。

まず、代かき後に水がなくなって土壌が見えている場合のオルソ画像とDSM(陰影図)

2017年5月18日撮影

圃場の均平精度は、圃場内の高さを測定し、それらの結果から算出した標準偏差が均平精度を示します。この標準偏差の値が大きいと圃場内の凹凸のムラが大きくなります。

目標とする均平精度は、湛水直播や乾田直播などといった栽培方法によって異なります。農林水産省の資料によると、移植栽培の場合は標準偏差:1.8cm・最大高低差:9.0cmが目標値となっています。

今回の代かきによる均平精度は、標準偏差:1.3cm・最大高低差:6.9cm となり、今年の均平化も悪くない出来だと思います。(参考:2016年の均平精度 標準偏差:1.4cm・最大高低差:6.1cm)

代かき後は湛水状態にしなければいけませんが、今年も水を張らなかったので、近所のベテラン農家さんは心配していたそうです。ご迷惑をお掛けしました。m(_ _)m

水を張った状態でもドローンによる計測ができるか実験するために、水がない状態での空撮が終了直後に水を入れました。翌日には、2~3cm程度の深さで水が張った状態となります。

湛水状態(2017年5月19日撮影)

湛水状態でドローン計測して作成したオルソ画像とDSM(陰影図)

2017年5月19日撮影

 

この日の気象状態は、ほぼ無風で、時折微風によって水面が波を打つ程度でした。空撮時は全くの無風状態で絶好のデータ取得日でした。

水の透明度の高い箇所では底の土壌まではっきりと見ることができます。一方、泥水が撹拌してしまった箇所(圃場の西側)では土壌を見ることはできません。

これらのデータをSfM-MVS処理でオルソ画像・DSMを作成すると、泥水が撹拌している箇所ではマッチングが上手くいかず、ノイズとしてDSMの精度が落ちています。

下図は「湛水状態のDSM - 水のない状態のDSM」 の差分マップです。

 

湛水状態のDSM - 水のない状態のDSM マップ

泥水で底が見えなかった箇所でDSMが高い値(ノイズを含む)となったため、水の有無の差分で約10cmの差が生じました(圃場の西南側)。一方、透明度が高かった箇所では湛水状態のDSMが約2~3cmが高い結果となりました。

赤線部分の断面図

赤線部分の断面図の結果から、湛水状態のDSMが一定の高さを示していないので、水面の高さより圃場の高さが影響していると考えられます。水深や水の屈折率を用いて計算すれば、湛水状態でも圃場の高さを取得できる可能性があることが今回の実験でわかりました。

 

ただし、代かき後(湛水状態)に計測する場合、無風かつ泥が撹拌していない状態でないと精度の良いデータを取得することができないため、撮影条件は結構厳しいと思われます。

来年以降も代かき後は水がない状態で計測するのがベストなのかもしれません。

 

代かき(2017年)

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私の経験(短い期間ですが・・・)から収穫量・品質の向上には「均平化」は大切な作業だと思います。

今年も代かき前には、いろいろと圃場の均平化を試しましたが、容易に圃場内の土を移動できるのは代かきになります。

まずは、代かき前にドローンでDSMを計測し、凹凸マップを作成します。

代かき前の凹凸マップ(2017年)

高い(淡いピンク) ← 地表面の高さ → 低い(紺)

圃場の西(左)の中側が高くなっています。また、圃場の3辺の低い部分はくろつけを行った際のトラクターの車輪跡になります。

屋上から撮影した圃場(画像の上が北)

凹凸マップが示すように地表面がちょっとでも高いところ(数cmの差)は、水が溜まっていないことがわかります。

水が全体的に入ったら、代かきを行います。

圃場の凹凸を意識しながら、トラクターによる均平化

均平化後には、ドローンによる計測を実施します。

圃場均平化(2017年)

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以前、このブログでも紹介した「セミナー(ドローンの農業活用とセンシング・モニタリング技術)」も先日終了しました。

私の予想以上に多くの方々に受講していただき、ドローンによるモニタリングの注目の高さを実感しました。

セミナーでは、水稲以外にも畑作や果樹等に利用したいとの声がありました。いろいろと話をしていると、作物によって欲しい情報が異なり、その情報には需要があることを知ることができたので、私自身の勉強になりました。

 

3月に入ったので、そろそろ2017年度の栽培に向けて、圃場の均平化とドローン計測を実施しました。

 

ドローンによる計測

 

圃場の西中央部が高く、排水口がある東側が周囲に比べて低くなっているので、代かきを実施するまでの約2ヶ月間で地道に土を移動させ、均平化を目指します。

 

点群データを表示できるサイトがありましたので、ドローン計測に用いたデータをアップしました。

 

画像をクリックすると別サイトが開きます。

任意の地点から点群データを表示できるほかに、地点計測(高さも含む)や距離計測も行えます。ただし、計測機能はサイトに会員登録する必要があります。

 

【手法】3Dモデル作成(SfM-MVS処理)

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空撮画像から3Dモデル・オルソ画像・DSMの作成手順の一例を紹介します。

【手法】ドローン飛行設定で紹介したように、地図を作成する場合の撮影にはルールがあります。隣接する写真の約60%以上が重複するように撮影します。重複部分があることで、撮影した地表面を立体的に見ることができるようになります。

数年前から個人でも3Dモデルを作成できるソフトがいくつか登場しました。例えば、PhotoScan(Agisoft)Pix4Dmapper(Pix4D)などの有料ソフトの他に、無料のVisualSFMがあります。私は操作方法や価格などを検討した結果、PhotoScanを使用しています。

※PhotoScanを購入する際にはProfessional Edition を選択してください。Standard Edition ではオルソ画像・DSMを出力できませんので注意してください。

sfm-mvs手順フローチャート(3Dモデル作成)

1) 撮影画像

撮影カメラにはRicho GRおよびCanon S110(近赤外改造カメラ)を使います(2015年以降)。30a程度の圃場であれば、上空50mを約6分の飛行時間で300枚程度撮影できます(Richo GRでインターバル1秒設定)。この撮影した画像のうち、ブレの小さい画像のみを使用します。PhotoScanでは、画像の品質を 「0~1」で 数値することができます。高品質の画像は1に近い数値を示します。反対に、ブレの大きい低品質の画像は0に近くなります。

左:高画質(0.92)     右:低画質(0.65)

(2016年7月21日撮影 Richo GR)

基準点(GCP:Ground Control Point)の位置座標設定

3Dモデルに位置情報を付与するために、撮影した画像の基準点に位置座標を設定します。下図は上空50mから撮影した基準点+対空標識です。

gcp設定

PhotoScanでの基準点設定

2015年以降はTS測量の計測値を使用しているので、高精度な3Dモデルが作成できます(誤差は数cm)。

 

2)SfM-MVS 処理

撮影した画像をPhotoScanで処理していくのですが、作業工程のほとんどが自動化されているので、簡単に3Dモデルを作成することができます。数時間程度で処理が完了するので、観測した当日にはモニタリング結果を手にすることができます。

 

3dmodel

SfM-MVS 処理の結果

 

3)3Dモデル(オルソ画像・DSM)

位置座標を付与した3Dモデルからオルソ画像・DSMを出力することができます。モニタリングデータの解析では、生育状況の判断にオルソ画像、倒伏リスク診断にDSMを使用します。

 

3Dモデル(2016年7月21日撮影 Richo GR)

可視光域、近赤外域で撮影後、作成したオルソ画像・DSMはGIS(Geographic Information System:地理情報システムで解析し、管理していきます。GISは地図を表示するだけではなく、解析結果などを地図として可視化することができ、生育状況の判断に使用します。

フリーソフトの「QGIS」で水稲モニタリングの解析を十分に行うことができます。

qgis

QGISによるモニタリング結果の可視化

【手法】ドローン飛行設定

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ドローンによる空撮手順の一例を紹介します。

モニタリングや地図作成など定期的かつ効率的に撮影するには、ドローンの自律飛行機能は重要になります。

私がドローンに触れたときは、上記の目的を満たす機体は僅かでした。
※2012年発売のPhantom1(DJI社)は電波法によって制限されていました。現在のPhantomシリーズはPCまたはタブレットを通して、自律飛行は可能となっています。

そこで、当時でも自律飛行が可能なオープンソース系のフライトコントローラを搭載したZion EX700を購入しました。

ここでは、飛行コースや機体のセッティングを行うフリーソフトの「Mission Planner」を紹介します。

 

撮影カメラ
【2014年】
オルソ画像・DSM
・可視光域:Nikon AW1

Nikon AW1

Nikon AW1(シャッター部分には小型サーボを設置)

NDVI
・近赤外域:GoPro3×2台

GoPro3近赤外カメラ

GoPro3を用いた簡易型近赤外カメラ

左側:近赤外域(光吸収・赤外線透過フィルターをレンズ前に設置)、右側:可視光域

 

【2015年以降】

2014年に判明した問題点を改善するために、撮影カメラを以下のものに変更しました。

オルソ画像・DSM
・可視光域:Richo GRGR

Richo GR

RICHO GRは、これまでに試したカメラの中で空撮に適したカメラです。重量が245gと軽量でありながら、撮像素子(23.7mm×15.7mm)が大きいので、画質の高い画像を撮影できます。また、レンズの歪みも小さいので、3Dモデル作成にも適しています。私がお勧めするカメラの一つです。

 

NDVI
・近赤外域:Canon S110(近赤外域を撮影できるように改造)

S110改造

改造Canon S110(近赤外域撮影用)

 

1) 撮影計画
Mission Plannerでは、撮影カメラの仕様や飛行高度などを入力することで、最適な飛行経路を設定できます。 下図は週1間隔でモニタリングを行っている飛行コースになります。地面効果の影響によって機体が不安定になりやすい離着陸時は、マニュアルで操縦を行い、ある程度上空に到達したら、自律飛行に切替えます。

 

Mission Planner

飛行コース(黄線:設定コース 緑点:ウェイポイント)
※対地高度:50m サイドラップ率:70%

2) 基準点設置
撮影画像から作成する3Dモデルに位置情報を付与するために、基準点(GCP:Ground Control Point)を設置します。高精度の3Dモデルを作成したい場合は,トータルステーション(TS)や人工衛星を用いた測量(RTK-GNSS測量)が望ましいです。多少精度が落ちますが、地理院地図の緯度経度座標及び標高値を使用することもできます。

2014年は地理院地図の座標を用いていましたが、高精度な3Dモデルが欲しくなったので、トータルステーションで圃場四隅を計測しました。2015年以降はTS測量で取得した値を使用しています。

 

TS

トータルステーション測量(2015年)

基準点は対地高度50mからでもが判読できるように設置します。材料はホームセンターで揃えることができます(約1,200円)。

基準点用の杭:テント用のプラスチック製ペグを使用(ホームセンターで購入:1本約100円×4本)

対空標識:直径30cmのプラスチック製の漬物落し蓋を使用(ホームセンターで購入:1枚約200円×4枚) ※判読しやすいように、油性マジックで塗装。

 

基準点

基準点+対空標識

 

3)飛行・撮影
ドローン撮影の基本は「下手な鉄砲も数撃てば当たる」です。無駄になっても構わないので、枚数を多く撮影していきます。機体の揺れなどによってピンボケが撮影されこともあるので、Richo GRでは最短インターバルの1秒で撮影します。Canon S110も同様に最短のインターバルで撮影します。ただし、Canon S110は標準機能にはインターバル撮影がないので、ロシアン・ファーム(ロシアで開発されたソフトを使った裏技)で機能を追加します。

3Dモデル作成には、ピンボケの撮影画像などは取り除きます。

 

モニタリングの様子

上空から撮影中

次回、3Dモデル作成について説明します。

 

test-site

試験サイト周辺の3Dモデル

 

 

倒伏進行中・・・

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前回の記事から「どろーん米(コシヒカリ)」の倒伏が進んでしまいました。

倒伏リスク診断でリスクありの箇所が中心です。診断が当たったのはよかったのですが...ちょっと複雑な心境です。

週末(10・11日)の稲刈りまであと僅かの時間ですが、台風13号(MALOU)の接近が心配です。

 

9月3日に実施したモニタリング結果を紹介します。

20160903

2016年9月3日撮影 オルソ画像(紫線は倒伏エリア(軽度~重度を含む))

倒伏(160903)

倒伏リスク診断マップに倒伏エリア(160903時点)の重ね合わせ

倒伏リスクが高い赤色を中心に、重度の倒伏傾向が見られます。

ハート型に倒伏

上空50mからの撮影画像:ハート型倒伏

(クリックすると大きい画像が開きます)

倒伏リスク診断

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コシヒカリは稲穂が垂れやすく、倒伏しやすい品種になります。そもそも、倒伏は稲穂が地表面に着くほど倒れる状態を指します。倒伏して、稲穂が地表面の水に着いてしまうと,収量の低下や機械による収穫困難、食味の低下などの問題が生じ,生産者にとっていいことはありません。

そのため、倒伏のリスクがある箇所については,事前に倒伏軽減剤の散布や倒伏前に刈取りを行うなどの対応が必要となってきます。

コシヒカリは、草丈が幼穂形成期で70cmを越える場合,または出穂13~14日前で84cm以上であると,倒伏のリスクが高まるとされています(水稲栽培管理情報:JA金沢市版)。ただし、この数値については、埼玉県でも用いることができるかは検討の余地はあります。

下の倒伏リスク診断マップは、「出穂14日前のDSM-代掻き直後のDSM」から計算した図です。今年は、水稲株位置を求めたので株ごとに倒伏リスク診断を行いました(全部で約5.1万株)。赤色は倒伏リスクの高い株で、青色はリスクが低い株になります。

 

2016倒伏リスク診断

倒伏リスク診断マップ

20160829

冠水後に撮影したオルソ画像

(稲の色が若干変化しているところが倒伏している箇所)

スライドバーを動すと、倒伏リスクが高い場所と実際に倒伏してしまった場所の対応が確認できます。

今年の稲刈りは9月10~11日を予定しております。まだ、1週間ちょっとの時間があります。それまでの間に、さらに倒伏が進まないことを祈るばかりです。

中干し&水稲株カウント

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田植えから34日が過ぎ、茎数が平均22本(圃場内8箇所80サンプル)になったので、今日から10日程度中干しを実施します。

中干しは、無効分げつを抑えて、土壌内部に酸素を供給して根を健全にします。特に無効分げつを抑えることで、収量アップやお米の品質を向上させることができます。

【水稲株数】前回、紹介した水稲株位置をメッシュごとにまとめてみました。

2016株数

単位面積あたりの株数(株/㎡)

 
圃場内全体では単位面積あたり16.8(株/㎡)【坪あたり55株】となりました。今年は田植機の設定を株間18cm【坪あたり60株】で行いましたが、ドローンによる計測では若干少ない結果となりました。途中でジャムってしまったことも影響しているかもしれません。また、同じように田植機を操作していてもばらつきがあることが、メッシュごとに計算することでわかってきました。

代かき直後のDSM計測

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本来ならば代かきを終えたら、すぐに水を入れて湛水状態にします。

しかし、今回は代かきを行うことによって、どのぐらい圃場内の凸凹を均平にすることができたかを計測するために、あえて水を入れませんでした。

近所の農家さんからは不思議がられましたが...。

ドローンや地上レーザーを用いて、代かき直後のDSM計測は困難でした。なぜなら、圃場内に水を張ってしまうと、水の反射によって正確な高さが求めることができません。しかし、代かきでどのぐらい土壌を移動させ、均平化できたかを数値化してみたいと思い、代かきを実施してから水がなくなった3日目にドローンによるDSM計測を行いました。

 

代かき直後DSM

 

圃場の西側にある取水口側で圃場全体の平均高より約2cm高く、東側の排水口では約2cm低くなっていることがわかりました。水管理を考えると問題ない範囲と考えられます。

 

代かき直後オルソ画像

代かきを実施してから3日後に空撮し、作成したオルソ画像

代かき直後(地上撮影)

地上から撮影した代かき3日後の様子

例年は代かき後に雑草防除初期剤である農将軍フロアブル(3成分)を散布していましたが、今年から散布をやめました。

少しずつですが、農薬を減らす方針で「どろーん米」の栽培を行っていきたいと思います。

 

 

収穫・品質を左右する代かき

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今までのモニタリング結果から、代かきはその年の収穫量・品質を決める重要な作業になります。

代かき前にいろいろと圃場の均平化を試しましたが、圃場内の土を最も多く移動できるのは代かきになります。

今回はドローンで計測したDSMをもとに、まず「土寄せ」を行いました。

圃場の平均高より高い場所を中心に低い方へ...

 

代掻き1

 

ある程度の土寄せが終われば、いよいよ代かきです.

 

代掻き2

 

約3反の圃場にかかった時間は5時間(土寄せ+代かき)です。これでも自分の思い通りの結果にはなりませんでした。

 

代かき後の圃場にうつる夕日です。

次週は田植えになります。5月はいろいろと作業が続きます。

 

代掻き後