2019年栽培

NDVIフィールドセンサー

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2014年から行なっているモニタリングはドローンを用いて上空から行ってきました。今年はさらに圃場の中心に観測機器(NDVIフィールドセンサー)を設置して地上からの観測項目を追加しました。
上空から取得するNDVIと地上からのNDVIを比較・検討し、品質の高いNDVIを取得できる時間帯を探究する予定です。

機材一式
センサー:SRS分光反射率センサー、ロガー:Em50(販売終了)

 

田植えから2日後にフィールドセンサーを設置

 

NDVIは可視域と近赤外域の波長帯を用いて計算します。この波長帯は太陽光とセンサの位置関係の影響を受けるため、観測時間によってNDVIの数値が大きく変動することが報告されています(例えば、井上  2000、Ishihara et al. 2015 など)。特に、晴天時の正午前後はNDVIの数値が低い結果となります。※ここでは、BRDF(双方向性反射率)については取り上げません。

 

下図は今回設置した試験サイトでの結果になります。まだ、データの解析を行なっていない速報値扱いですが、分げつ期における気象条件の違いによるNDVIの時間変化になります。

1) 晴天時におけるNDVI・日射量の時間変化(2019年5月27日:分げつ期)

2) 曇天時におけるNDVI・日射量の時間変化(2019年6月2日:分げつ期)

異なる気象条件時のNDVI・日射量の時間変化 ※NDVI・日射量は10分おきに計測

 

1)は晴天時、2)は曇天時におけるNDVI・日射量の時間変化の図(折れ線がNDVI、棒グラフが日射量)になります。日射量についてはこちらの記事へ。

晴天時では太陽光が直接イネに届きます。その太陽光は天頂角によって、可視域・近赤外域の反射率が変わってきます。そのため、NDVIは観測時間によって値はバラつきます。図より天頂角が最大となる正午前後はNDVIは過小評価となってしまうので、観測する時間帯から避けた方がいいことがわかります。

一方、太陽光が直達しない曇天時は太陽からの散乱光が地上に届いている状態です。そのため、晴天時と比べると太陽の天頂角の影響はかなり小さくなります。図を見ると、曇天時では正午前後でもNDVIが一定していることから、いつ測っても評価には影響がないと考えられます。

また、両者ともに日出・日没前後のNDVIの数値は極端に上昇することから、この時間帯におけるモニタリングも避けなければいけません。

 

現在、10時にモニタリングを行っていますが、天気による観測適時が分かれば、時間に縛られることもなく、農作業の合間でモニタリングを行うこともできます。少しは柔軟にモニタリングの運用ができるようになるかもしれません。ただ、10時のモニタリングは農作業の小休憩(お菓子タイム)と重なるので、ある意味モニタリングしやすい時間でもあります。

今回の観測結果は地上に設置したフィールドセンサーの結果なので、近いうちに上空からの観測を実施して両者の解析・検証を行ってみます。

 

参考文献

井上吉雄:植生の可視・近赤外放射伝達と植物生理生態情報のリモートセンシング―方向性反射モデルの比較解析および反射データと放射量変換型生長モデルの統合化―, 日本リモートセンシング学会誌, 20(5), pp.56-72, 2000.

Mitsunori Ishihara, Yoshio Inoue, Keisuke Ono, Mariko Shimizu and Shoji Matsuura: The Impact of Sunlight Conditions on the Consistency of Vegetation Indices in Croplands—Effective Usage of Vegetation Indices from Continuous Ground-Based Spectral Measurements, remote sensing, 7(10), pp.14079-14098, 2015.

 

2019年の出穂期は?

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記録的な東日本の長雨で、農作物の生育の遅れが心配されています。試験サイトが立地している埼玉県でも低温・日照不足が続いており、地上で行っている生育調査でもその影響が現れています。週1の頻度で草丈を観測していますが、その結果をみると例年の同時期より約7cm低い値を示しています。しかし、茎数でみると例年より数は少なくなっておりません。長雨の影響で十分な中干しができなかったことから、分げつ過剰による過繁茂が要因ではないかと考えられます。

   草丈・茎数の時系列変化

 

7月21日に圃場内でNDVIが高いメッシュのイネの茎を根元から切り取り、茎の中にある幼穂の長さを計測しました。移植から64日目ですが、現時点で幼穂長は約4cmとなりました。幼穂長と出穂前日数の関係(星川 1975)から判断すると、出穂は約2週間後先となります。参考までに、2018年7月22日に撮影したイネの幼穂の長さは12.5cmでした。

イネの幼穂の長さは4cm(2019年7月21日撮影)

 

2019年の出穂期は8月4日前後(移植から78日後)で、例年より約1週間遅くなりそうです。

 

今年の梅雨は長雨

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今年の梅雨入りは6月7日で、平年より1日早く極端に早い・遅いはありませんでした。ただ、今年の梅雨は、本来の梅雨らしく、関東地方では長雨が続いています。そのため、平年と比べると日照不足や低温の傾向となっています。ちなみに、昨年は6月29日に梅雨明け(平年より22日早い)をしており、7月は晴天・高温の日々が続きました。

ぐずついた天気が続いているので、ドローンによるモニタリングも大変です。雨が降っていない時間を狙って飛行させるのですが、そのときに役に立つのは気象庁が行っている「高解像度降水ナウキャスト」です。スマフォで現在地の雨雲の動きを確認することができます。ただし、レーダの特性上、実際には降水がない場所でもレーダでは降水として観測されることもあるので、最終的には現場での判断になります。

6月22日のモニタリングは霧雨のような細かい雨が降ったりやんだりする天気で行いましたが、モニタリング終了直後には強い雨が・・・精神的に疲れる時期です。

モニタリングを始める前に撮影している画像(近赤外)をアニメーション加工

(2019年5月22日~7月6日)

 

6月25日から中干しを始めていますが、梅雨の中休みもなく、圃場内の土もなかなか乾きません。モニタリングと同時に40株の草丈・茎数をカウントしているのですが、昨年に比べると幼穂形成期の時期も遅くなっています。生育調査を行う際には、事前に対象とする株に下図のようにマーキングテープで印を付けます。いろいろ試したのですが、マーキングテープが水が濁ったときでも目立つのでおすすめです。

圃場内に設置した生育調査用のマーカー

 

雨の中の生育調査(2019年6月22日撮影)

 

毎年行っている調査で手慣れているはずですが・・・40株をカウントするとなると1.5時間程度かかっています。雨の日となると、さらに時間がかかります。

 

除草剤散布(2019年)

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初期除草剤「コメットジャンボ」を散布しました。散布といっても、30gに小分けにされた水溶性の袋を圃場に向けて投げ入れるだけです。

田植えから2週間、何もしないと条間・株間に雑草が目立ってきます。去年は例年より早く田植えから1週間ほどで雑草が発芽したので、除草剤も早めに投下しました。

コメットジャンボを投げ入れるにあたって、事前にすることは水位を5~6cmぐらい高くします。以前、水位が若干低い状態で投下したため、除草剤の効果を最大限高めることができませんでした。また、風が強い日の投下することも効果を低くすることの要因であることを身を持って経験しました。2017年はこれらの要因が重なったためか、雑草(イヌビエ、クサネムなど)取りで本当に苦労しました。

このような経験を踏まえて、1時間ごとの天気予報を判断材料に投下日時を検討しました。この時期は夕方から朝までは比較的無風な状態が続くことが多いので、3枚あるうちの2枚の圃場では夕方から散布しました。

コメットジャンボの拡散

 

コメットジャンボは水に入れてから約10秒後に溶け始め、中身の除草剤が放射状に拡散していきます。大体7~8mぐらいの範囲まで広がります。

 

田植え(2019年)

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さぁ、メインイベントでもある田植えがやってきました。ビニールハウスの苗も順当に生育し、草丈15~20㎝まで伸びました。

順調に成長したコシヒカリの苗

 

最近、田植えは空間認識力がいる作業でもあるなぁと思っています。どれだけ効率的に、そして人の手を煩わせず、圃場の四隅まできれいに植えることができるか考えると・・・なかなか難しい問題です。

毎年やっている作業ですが、これぞっという自分にあった方法が今だに見つかっていません。今年は事前にネットで調べてみるとyoutubeで公開している四隅まで植える田植えの手順があり、その方法を参考にしてみました。

移植する前に、出入口の反対側から田植え機のマーカを両方に伸ばして状態で圃場を一周し、ガイドラインを印していきます。これで4条植えの機械が2周できるスペースができます。

次に、土につけたガイドラインを目印に田植えを始めていきます。圃場の中は特に問題なく運転できますが、終盤の周回では気を使います。

苗が一列植わっていない失敗例

 

今年は例年よりは上手くできた感触を得たのですが、失敗もありました。機械のトラブルです。途中で苗をジャムってしまい、一列何も植えていない状態になってしましました。機械に乗っているとなかなか後方のことに気づくことが遅れてしまいます...今後は注意しないといけませんね。対策として、田植え機にバックミラーを取り付けてみようかと思います。また、代かき後に圃場を干しすぎてしまったので、一部の場所でしっかりと苗が刺さらないところもありました。

今年の田植えはいろいろと学びました。

 

結果:均平精度(2019年)

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いろいろとが業務に縛られ、更新が怠ってしまいました。先月の内容になりますが・・・

今年も代かきが終わりました。事前にトラクターのエンジンオイルも取り替え、快調な作業でした。浅水代かきを実施した結果、代かき後の水位は低く、泥も予想以上に早く沈着しました。圃場内の水は1日おいたら透明です。

そこからは、例年行なっている均平度のチェックです。2014年から比べると均平度の精度は毎年良くなっています。2019年の結果は以下のようになりました。

代かき後のオルソ画像(2019年5月17日撮影)

 

代かき後の凹凸マップ(2019年)

 

2014~2019年における均平精度の変遷

 

ただし、今年は問題が発生しました。代かき後の天気が良すぎた結果、いつも以上に圃場を乾きすぎてしまい、一部の土が固くなってしまいました。今までは固くなる前に田植えを行なっていたので、問題ありませんでした…。それにしても今回の件は不覚でした。来年以降への教訓です。

浅水代かき

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2019年5月号の現代農業では、浅水代かきで浮きワラを防ぐことができるという記事がありました。代かきについては、先代から浅水がよいということだけを教えられていたので、その理由について深く考えず行なっていました。よくよく考えてみると、今まで代かき後に浮きワラのかき出しを行ったことがありませんでした。

今回の現代農業の記事をよく読んで、 浅水代かきの理由について納得しました。

代かきを行う直前の状態

 

パッと見た感じは水が十分に入っていないかと思われるかもしれませんが、この状態で問題ありませんでした。土の上には昨年のワラが残っている状態です。

 

ワラが残っていても、浅水代かきをする事でワラを埋没させることができます。

凹凸マップを見ながら代かき中 

 

見た目水が無い状態であっても、代かきをすることで水が見えてきます。


水入れ

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圃場を均平にするための重要な作業「代かき」の時期がやってきました。圃場の凹凸を目で見てはっきりわかるのは「水を入れた時」です。周囲より土が高ければなかなか水が入りません。一方、低いところでは水がどんどん溜まっていきます。

2017年に設置したライブカメラで今年の水入れを確認してみます。ちなみに、現在の様子はこちらから見ることができます。

【タイムラプス】水入れの様子(2019年5月10日〜11日)

 

このあたりの圃場は、川からポンプで取水した水が供給されています。夜間はポンプが停止するため水は出ません。上図の動画は2日間に渡って水を入れているので、夜間に水が一旦引いた状態から再度水が入っている状態が映っています。

代かき前の凹凸マップ(色は1cmごとに設定)

 

画面の右側(2)が最後まで水が入っておらず、また画面の左側(1)が水がたまっていることから、(2)が高く(1)が低いことがわかります。

ライブカメラの画像

 

今回は圃場の半分ぐらいまではほぼ均等に水が入りましたが、後半にかけて水の偏りが生じてしまいました。

凹凸マップをトラクターに貼って、凹凸を少しでもなくすために、代かき開始です。

 

田植え機準備

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10連休中のGW期間は、特にやらなければいけない農作業はありません。私のところでは、例年通りにこの時期は田植え機のメンテナンスを行いました。

最近は、この周辺でもGWに田植えを行う圃場が増えてきています。GWの長期休暇を使って移植しても、買い取り先であるJAのカントリーエレベータが稼働していないので、従来通りに農作業を進めます。


メンテ中の田植え機

 

1年間放置していると前輪の空気が抜けてしまうので、ロードバイク用に購入した空気入れで補充します。通常の空気入れだとコネクタの部分が一致しません。

ロードバイク用に購入した空気入れ

 

空気を入れたら、田植機を動かして異常音の有無などの確認を行いました。機体をよく調べてみると、肥料の投下口の奥側で肥料が固結してしまったところがありました。長年の利用で固結した肥料は使用済み歯ブラシで清掃してもなかなか取れず、 苦労しました・・・。

ビニールハウスに移動してから2週間

 

種蒔きから約2週間後の苗の状況です。発芽不良などは見られず、コシヒカリの苗は順調に生育しています。

一方、埼玉のお米の栽培シェア率がトップとなったブランド米「彩のきずな」を栽培する農家さんもいます。しかし、今年は近所数軒ほぼ同時に「彩のきずな」の発芽不良が発生してしまいました。ベテラン農家さんでもこのような状況になるので、コシより育苗が難しいのではと感じました。まだ、コシから彩のきずなの品種変更は様子見です。


種蒔き(2019)

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今年は水に浸した種籾は、ちょうど1週間でハト胸程度に催芽しました。水から出した種籾は、種蒔きの機械に詰まらないように表面の水分を飛ばし、乾燥させます(外に2~3時間乾燥)。

乾燥中の種籾を見守る子供たち

 

例年催芽するまでバラつきがあるので、過去のブログの記事をまとめてみました。埼玉県の水稲に関する技術情報では、浸種日数の目安は水の平均温度(℃)×日数(day)=100℃・day(例:水温15℃で7日間)とされています。

水温データがないので、ここでは温度を最寄りのアメダス地点(鳩山)の日平均気温を採用しました。塩水選を行った種籾は24時間薬液漬による種子消毒を行います。消毒終了後は井戸水を大型バケツに入れて浸種します。この方法は2015年から変わっていません。

表 催芽までの日数と積算温度の関係

栽培年2016201720182019
積算温度(℃・day)129.3126.1119.5101.4
催芽までの日数
水の交換毎日毎日中2日中3日

 

これらの結果から水の交換タイミングによって、催芽するまでの積算温度に違いが生じていることがわかりました。催芽するまでの水は常に新鮮なものでなければならないと教えられたので、2017年までその教えを実践していました。しかし、毎日交換しなくてもいいという情報を知ってしまったので、今年は中3日のタイミングに変更しました。日中に暖められた水を使い続けたことが催芽を早めた要因の一つではないかと考えられます。

種籾が乾燥したら、育苗箱の準備をしていきます。2018年は111箱(計算上では101箱ですが、不測の事態に備えて1割追加)を設定しましたが、実際に使ったのは101箱だったので、今年は箱数を減らして106箱を準備しました。

育苗箱と収量の関係

 

2018年に作成した育苗箱と収量の関係のグラフですが、2018年収量と2019年育苗箱の結果をそれぞれ更新しました。育苗箱を減らしていっても収量には影響を与えていないことがわかります。現在の田植機では株間を最大で21cmまでしか設定できないので、106箱より育苗箱を減らすことは難しそうな感じです。そのため、現在の栽培方法では10aあたり約18箱が下限かも知れません。

ばらまき機で播種した育苗箱はビニールハウスに搬入します。

ビニールハウスに搬入した育苗箱

1週間後には均一に発芽

 

今年の田植えは5月18・19日を予定しております。